今回は、苦手意識を持つ人も多い日本史について、その憶え方のコツや勉強方法、センター、私大、国立の入試対策について解説していきます。
日本史の憶え方のコツ(勉強方法)
ノートに書いているだけでは憶えない
とにかくノートに教科書や参考書を丸写しする勢いで書いて憶える、という方法を取る人がいます。
そして、びっしりと書かれたノートを見て、これだけ勉強した、という達成感を得ます。
しかし、この方法でしっかりとした記憶ができるという人はとても少数派です。
初見での記憶段階では、まずはしっかりと参考書を読んで内容を理解することが大事です。
まずは参考書を読んで理解することから
読み込んでだいぶ頭に定着したと思ってから、参考書を閉じてノートに憶えたこと、重要事項を書いていきます。
いきなり参考書の文を書き写すのではなく、まずは読んで記憶するという工程を入れることで、定着率が全く変わります。
書いている段階で、この箇所が思い出せない、となったら参考書を開いて確認します。
前回の復習を欠かさない
次の日本史を勉強する機会で、必ず前にやった部分の参考書、ないしノートを読んで、憶えているかどうかの確認をします。
憶えていなければ、そこをしっかりと読み込み、次の単元へ進みます。
3回目は、最初にやった部分、次にやった部分を復習したうえで、また新たな単元へと入ります。
この繰り返しによって、記憶がよりクリアになり、定着されることによって忘れにくくなります。
復習はやるほど高速になる
特に繰り返せば繰り返すほど、復習にかかる時間が短くなります。
教科書もノートも開かずに諳んじることができるようになったら、記憶は完璧と言って良いです。
一見すると、やればやるほど復習の量が多くなって面倒そうな印象を受けます。
しかし、指摘したとおり、完璧な記憶になれば高速で頭で処理できるので、復習量は大きな問題にはなりません。
それよりも、復習をおろそかにして、また一から憶え直し、というほうがはるかに負担が大きいです。
これは、わざわざ経験をする必要はないですが、しっかりとした記憶の定着を図らずに自己満足での勉強をしている方は、よく分かることになります。
オリジナルノートを作るのが良いか
参考書にマーカーなどを引いて重要部分をピックアップする方と、自分用のノートを作ってオリジナルテキストにする方がいます。
人によって変わる
これは、どちらが良いかは完全に人によります。
かなりの頻度で教育者のなかには、受験前に教科書を見るのはダメ、自分で作ったノートを見ましょう、試験日はそのノート一冊持って行けば良いのです、的なことを言う人がいます。
確かにその方法もアリですが、あくまでアリという程度で、必ずそうするのが誰にでも正解ではありません。
ノートの効率的な取り方については、以下の記事を参考にしてください。
記憶力・思考力が高い人は参考書で◎
特に記憶が得意だったり、論理的思考力が高かったりする人の場合、参考書にマーカーを引いたり、あるいはたまに注釈をつける程度で、重要部分を抜き出して特に記憶し、流れも頭の中で組み立てられます。
このとき、わざわざ自分専用の教科書ともいうべきノートを作成するのは、特に必要がないことになります。
となれば、書いて作る時間だけ無駄だといえます。
ただしこの場合、試験日には使った参考書を持って行きたくなります。
それでもノートに比べて多少重くなる程度なので、さしたるデメリットにはなりません。
アウトプットもノートは必須ではない
前述した記憶法において、まずは読んで、次に書いてアウトプットの流れを指摘しました。
この過程においても、当然、ノートに書くことは絶対ではありません。
アウトプットは教科書を閉じて、頭のなかで繰り返せるかを確認するだけでもOKです。
このとき、ノートに書いてやるほうが記憶が定着できる人もいれば、別に脳内で反芻すれば良いしそれのほうが早い、と感じる人もいます。
最初は読んで理解し、記憶するのが鉄則ですが、その後の確認、定着段階では、よりけりなので自分が好ましいと思う方法を選択すれば大丈夫です。
苦手な人が多い文化史
日本史のなかでも、特に文化史について苦手意識を持っている人がいます。
文化史というのは、各時代の文化であって、代表的な作品や人物、建築物や芸能などを問うものです。
文化史は、大学受験では必ず出題されるといっても過言ではありません。
センターだけではなく、私大、国立二次でも対象になります。
文化史は、古代から現代までとても広い範囲ですが、捨てられません。
通史と分けて勉強
文化史は、特に○○時代の○○文化という視点が大切です。
そのため、通史と一緒に勉強すると、混乱してしまう人がいます。
これが、苦手意識を持つ方が多い理由ともなっています。
芸術作品や著名人物が○○文化に属し、○○時代のもの、とはっきり憶えてなくてはなりません。
大体何年代じゃない?ぐらいの知識では正答を得られないことがあるからです。
順序としては、まず通史を勉強して流れを把握し、そのうえで、個別具体的な学習を進める意味で文化史に取り組むのが良いです。
文化史の参考書で人気があるのは、やはり実況中継シリーズです。
歴史の流れを理解し記憶する
理解・記憶の双方で大事になってくるのが、流れです。
時代、出来事の流れ、背景を意識することで理解が深まり、長期の記憶に役立ちます。
たとえば、1918年、富山、米騒動というキーワードで暗記するのではなくて、第一次世界大戦の影響で高騰した米の価格に憤り、富山の女性たちが米騒動を引き起こした、というように背景、流れ、時代を理解します。
こうすることで、単に年号やセンテンスを単語で記憶するのとは違い、バックグラウンドや戦後といった時代の流れが理解できるので、忘れにくく、実際の試験でも回答を得やすくなります。
時系列順に並べさせる問題が頻出
特に大学入試の場合、この出来事が起こったのは何年か、などといった問題が出題されることはありません。
いくつかの出来事が列挙されて、その先後を正しい順序に並べ替えさせる、といった出題がなされます。
このとき、確かに出来事の1つひとつについて年号を覚えていても回答できますが、そのためには日本史に膨大な時間を割かなくてはならなくなり、他の科目との兼ね合いで総じて効率的な受験勉強とはなりません。
流れを意識した勉強が効率的
流れを意識して憶えておけば、正確な年号を知らなくても回答できます。
たとえば、先の米騒動では1918年、という年号を知らなくても、第一次世界大戦による米の価格高騰が原因だ、ということを知っていれば、当然に第一次世界大戦→米騒動、という流れは把握できます。
大学入試では、このように流れを意識した勉強をすることが、効率的で勉強時間の短縮につながり、合格の近道になります。
具体的な出題例
具体的な例として、慶應義塾大学の法学部、2018年の日本史をみてみます(※)。
設問5で、以下の4つの出来事を時系列順に並べる出題がなされています。
(a)新橋・日本橋間に鉄道列車が開通
(b)東京・横浜間に電信回線が通る
(c)定時法採用
(d)日本発の日本語による日刊新聞が横浜で始まる
これについても、それぞれの年号を正確に記憶している学生は少ないです。
知らなくても、歴史を流れで俯瞰的に把握しいることで、回答を導けます。
○○があって、△△があって、それから□□が起こった、というように、時系列で出来事を諳んじることができれば、難関私立、国立2次に対応する能力が得られます。
※参考:慶應義塾大学法学部 日本史 2018年 設問5
センター対策
特別な対策はいりません。
いわゆる悪問のような極めて難易度の高い問題はほぼないと言って良いです。
高校教科書の範囲で基本的な出題がなされます。
ただし、教科書を読むだけではなく、やはり過去問には目を通しておくべきです。
慣れておくことで、正誤問題などの処理速度が上がります。
全問題が選択式です。
過去問をやる際には、より学習効率を上げるために、正解した問題も丁寧に吟味しましょう。
具体的には、誤っている肢のどの部分がおかしくて間違いなのか、当該部分がどういった記述なら正解足りえるのか、ここまで把握できると、より日本史の理解度が深まり、記憶の再確認、長期定着化につながります。
私大対策
MARCH
MARCHや上智、関関同立、といった上位私大の場合、基本的な事項をいかに正確に理解しているかが大事です。
志望校の過去問検討を早い段階で行います。
1年分を解いてみて、どういった知識が必要なのかをチェックします。
たとえば、受験生に最も人気のある参考書である、石川日本史B講義の実況中継シリーズでみてみます。
ここに書かれていることが理解できていれば、ほぼ全ての問題を解けることが分かります。
後は、過去問演習と参考書の読み込み、記憶を繰り返して、入試時にスムーズに喚起できるように知識を定着させていくだけです。
早慶
早慶では、発展的な知識を問う出題も散見されます。
それこそ先の実況中継の例でいうと、本文の流してしまうような非常に細かな部分、本文にはない図表で示されている部分からの出題があります。
さらには全く参考書に載っていない、あるいは載っている知識だけでは対応できない問題が出ることがあります。
これは悪問といわれますが、これについては無視しても良いです。
これの出来不出来で、合格は決まらないからです。
大事なのは、過去問演習を繰り返すことと、参考書の丁寧な理解と記憶です。
細部までおろそかにせずに、時間をかけて取り組む姿勢が望まれます。
国立
教科書の行間を読む
国立大学は、特に教科書に書かれている基本をしっかりと理解していることが大事です。
教科書は、要約された文が載っていることが多く、経緯や流れを把握しづらいです。
よく行間を読むこと、と予備校講師は指導をします。
これは、つまるところ一文どおしの間にある経緯を把握しましょう、ということです。
これについて、教科書だけで理解できなければ、参考書などを使って補完をすることが大事です。
論述問題を対策
国立2次でネックとなるのは、論述問題です。
論述対策は、これまで再三にわたって述べてきたとおり、やはり経緯や流れの理解、記憶が必須です。
単に用語を覚えたり、難解な漢字が書けるだけでは足りません。
そのまま「経緯を述べよ」という出題がなされることもありますし、「異議を述べよ」、「理由を述べよ」、といった文言の場合もあります。
いずれにせよ、教科書の行間を読むこと、つまり背景や経緯、流れを理解していることが回答のために必要です。
東大の出題例
たとえば、東大2次の日本史を例にとってみてみます。
設問1では、「日本古代の宮都・藤原京について、それまでの大王の王宮と比べてどんな変化があるのか、歴史的意義に触れながら述べなさい」といった趣旨の出題がなされています(※)。
設問3のBでは以下のような趣旨の出題がなされています。
このように、単に藤原京や異国船打払令、関連法令について用語として知っているだけでは足りず、その歴史的な経緯や背景、流れを理解しておくことが求められます。
東大の「学部」については以下の記事で詳しく解説しています。
【日本史】憶え方のコツについてまとめ
今回は、特に日本史の憶え方のコツや勉強方法、入試対策について解説してきました。
志望校が決まっているなら、まずはその過去問に取り組むことが必要です。
そこで出題傾向や必要な知識を把握します。
そのうえで、復習を欠かさない反復的な学習により記憶し、定着化させます。
記憶段階では用語や年号の丸暗記ではなく、それぞれのバックグラウンドや経緯といった流れを理解して進めることが大切です。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。