110ha(ヘクタール)は札幌ドーム20個分に相当します。
これだけの敷地を持つ高校が、北海道内にあります。
道立の帯広農業高校です。
プロの農家でも1戸あたり耕作地は全国平均で2haにすぎません。
つまり帯農(おびのう)は、平均的な農家の55倍もの農業・酪農をしているのです。
帯農を含む道内の農業高校では、魅力的な授業を受けることができます。
なぜなら北海道は、食糧自給率185%を誇る農業・酪農王国だからです。
農業高校とは
農業高校とは農業を学ぶ高校のことです。
農業とは、土地を利用して有用な動植物を育成し、生産物を得る活動のことです(コトバンクより)。
ただ農業という言葉には、稲作や畑作だけを指す場合と、酪農を含める場合があります。
それでこの記事のタイトルには「農業・酪農」としました。
農業・酪農といえば、NHKの連続テレビ小説「なつぞら 」でも、北海道の十勝が話題になっていましたね。
農業高校では、稲作、畑作、酪農の仕方を学びます。
酪農家を養成する学習機関といえます。
ただ最近の農業高校は、酪農家育成だけにとどまりません。
東京には、犬や猫などのトリマーやフラワーデザインを学ぶことができる農業高校もあります。
道内でも静内農業高校では、競馬の競走馬の生産を学ぶことができます。
農業高校で学べることはまだあります。
6次産業化という言葉をご存知でしょうか。
6は、農業の1次産業と工業の2次産業とサービス業の3次産業の数字をすべて足した数です。
すなわち6次産業とは、農産物の生産から加工、製品化、販売、食の提供までを行うビジネスのことです。
農業高校ではこの6次産業を学ぶことができます。
農業や食品を将来の仕事にするには、普通科の高校を出て大学の農学部に進学する方法もあります。
こちらの進路は、研究や農業ビジネスに携わりたい人に向いているでしょう。
「土と自然を感じていたい」「植物や動物を実際に育てたい」と思っている人は、農業高校が向いているかもしれません。
農業高校に進学する意義
農業高校を卒業して大学に進学する人もいますが、多くの農業高校生は卒業後、就職します。
農業高校に進学する意義は、最短距離で農業に携われることでしょう。
農業高校には、実家が農業をしていて後継者を目指している生徒がたくさんいます。
しかし農業に縁がなかった生徒も、農家になることを目指さない生徒も、農業高校にはいます。
そういった生徒たちも、農業高校を卒業する意義があります。
それは「食」に関わることです。
食は、自動車や家電やインターネットや金融や建設といった産業と同じくらい、日本の重要産業です。
農業高校で食を学べば、サービス業にもネット業界にも観光業にも携わることができるでしょう。
ただ、農業はバラ色の産業ではありません。
今後ますます海外から農産品が輸入されるので、経営が厳しくなるかもしれません。
農業は「儲からない」ともいわれています。
自然に深くかかわるということは、自然に翻弄(ほんろう)されやすいということでもあります。
最近、甚大な自然災害が頻発していますが、そのたびに農業は大打撃を受けます。
酪農は牛や豚などの家畜の世話をしなければならないので、一年中ほとんど休まず働いている酪農家も少なくなくありません。
自らの力で、厳しい環境を変革して夢のある仕事に変えることが、これからの農業高校の生徒たちに求められるでしょう。
道立の農業高校一覧
道内には24の道立の農業高校と、農業を学ぶことができる私立高が1校の、合わせて25校があります。
- 北海道旭川農業高等学校
- 北海道岩見沢農業高等学校
- 北海道遠別農業高等学校
- 北海道大野農業高等学校
- 北海道音更高等学校
- 北海道帯広農業高等学校
- 北海道倶知安農業高等学校
- 北海道更別農業高等学校
- 北海道静内農業高等学校
- 北海道士幌高等学校
- 北海道新十津川農業高等学校
- 壮瞥町立壮瞥高等学校
- 北海道当別高等学校
- とわの森三愛高等学校(私立)
- 北海道中標津農業高等学校
- 北海道名寄産業高等学校
- 北海道ニセコ高等学校
- 北海道東藻琴高等学校
- 北海道美幌高等学校
- 北海道深川東高等学校
- 北海道富良野緑峰高等学校
- 北海道別海高等学校
- 北海道幌加内高等学校
- 北海道真狩高等学校
- 留寿都村立留寿都高等学校
これらの農業高校で、具体的にどのようなことを学んでいるのかみていきましょう。
帯農での学び
冒頭で紹介した帯農こと帯広農業高校は、マンガ「銀の匙」のモデルになったことから全国的に知られるようになりました。
マンガなので多少誇張して描かれていますが、銀の匙は農業高校の実態を知るにはとても参考になります。
ストーリーも笑いあり涙あり感動ありと、とても優れているので、農業高校への進学を検討している中学生はぜひ読んでみてください。
勤労!
帯農の校訓は「礼儀・協同・勤労」となっています。
礼儀も協同も、高校の校訓に入っていても違和感はありませんが、なぜ勤労が入っているのでしょうか。
勤労とは労働そのもののことです。
しかしこの勤労こそ、農業高校が普通科高校とも工業高校とも異なるところなのです。
農業高校の生徒は、実際に野菜を育て、家畜を飼い、食品をつくります。
生徒たちが勤労を怠った途端に、野菜は枯れ、家畜は死に、食品は腐ってしまいます。
農業高校の生徒が従事する農作業や食品加工は、本物の農家の仕事や食品工場での作業とまったく同じでなければならないのです。
農業、酪農、食品、土木、森林の5科
帯農には「農業科学科」「酪農科学科」「食品科学科」「農業土木工学科」「森林科学科」の5科があります。
授業の内容はその他の道立農業高校とほとんど同じです。
農業科学科
農業科学科では、酪農以外の農業を学ぶことができます。
具体的には帯広・十勝の代表的な作物である小麦、豆類、甜菜、馬鈴薯の他、メロン、トマト、ホウレンソウ、大根、ゴボウなどを栽培します。
大型農業機械の操作や仕組みも学びます。
また、インターネットを使った流通システムや農業経営も学習します。
酪農科学科
酪農科学科の学習目標は「土づくり、草づくり、家畜づくり」となっています。
乳牛、肉牛、ブタ、ニワトリを飼育しながら、飼養管理方法や飼料となる作物の栽培方法などを学びます。
さらに「科学(サイエンス)」と付いているように、価値の高い家畜をつくるための受精卵移植技術や家畜伝染病の勉強もします。
そして乳製品の加工もカリキュラムに含まれていて、ソーセージやハムもつくります。
食品科学科
食品科学科では、農畜産物を使った食品加工、貯蔵、流通、品質管理、衛生管理などを学びます。
そして日本農業の今日的な課題になっている、農産品の付加価値の高め方や資源の循環も学習します。
農業土木工学科
農業土木工学科では、農業土木を学びます。
農業土木は、安全な農場や高い生産性を実現できる畑をつくる仕事ですが、することは土地改良、用水路やダムの建設、道路の敷設といった普通の土木です。
測量、コンクリートなどの材料、建設機械、工事方法、土木設計などを勉強します。
ただ帯農らしく、農業土木工学科でも農業の基礎を学ぶために実際に作物を育てます。
森林科学科
森林科学科では、森林の保護と木材資源の有効活用を学びます。
実際に森林のなかに入って樹木を測ったり、GPS測量を使ったり、木材加工をしたりします。
寮生活
マンガ「銀の匙」では、生徒たちが寮生活を送りながら友情をはぐくむシーンが描かれています。
本物の帯農でも、寮生活はスクールライフの目玉になっています。
農業科学科と酪農科学科の1年生は1年間、寮に住むことになります。
食品科学科の1年生も4カ月入寮しなければなりません。
以上は義務入寮で、希望すれば全科の生徒が3年間、寮で生活することができます。
帯農は「親元を離れ、仲間とともに寮生活を送ることで大きく成長することができます」と、共同生活をする意義に太鼓判を押しています。
特色ある学び
帯農以外の道内の農業高校も、特色あるカリキュラムを提供しています。
ほんの一部ですが紹介します。
ニセコ高校の緑地観光科
観光地として全国的な知名度を誇るニセコ町のニセコ高校には、観光と農業の両方を学ぶことができる緑地観光科があります。
目標は「ニセコの農業・農村、そして大自然が秘める教育力を活用して、新しい時代を担う農業経営者と、緑を大切にする新しい観光産業人を育成すること」です。
農作物の栽培や農業経営を学んだり、観光リゾートを研究したりします。
観光農業も農業観光も有望なビジネスだけに、緑地観光科での学びは将来の仕事に直結するはずです。
静内農業高校の馬部門
静内を含む日高地方は、国内最大の馬産地です。
競馬で活躍している有名なサラブレッドを多数生み育ててきました。
静内農業高校には生産科学科と食品科学科があり、生産科学科には馬部門と園芸部門があります。
馬部門では、競走馬の聖地、静内の馬について学ぶことができます。
馬部門では、馬をよりよい環境で飼育する「馬学」や、馬の性質を学んだり乗馬技術を獲得したりする「馬利用学」を研究します。
実際にサラブレッドを飼育していて、放牧したり出産を控えた雌馬に運動させたりします。
まとめ~好きなら挑戦してみよう
農業はダイレクトに自然を扱う、やりがいがある仕事です。
しかし「離農」や「耕作放棄地」という言葉があるように厳しい状況にある産業でもあります。
よほどの強い意志と人一倍の努力がないと、農業で成功することは難しいでしょう。
しかし、強い意志と努力する覚悟があれば、これほど将来が楽しみな産業もありません。
もし「野菜が好きだ、家畜が好きだ、森林が好きだ、農業が好きだ」と思えたら、農業高校に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。