大學受験に挑んでいる人はさすがに、文系または理系を決めているでしょう。
しかし高1生や高2生のなかには、自分が文系人間なのか理系人間なのか決めかねている人もいるでしょう。
まったくあせる必要はありません。
そして、もし高3生が、理系(または文系)に決めて受験勉強を始めたものの、「自分は本当は文系(または理系)なのではないか」と思っていたとしても、それも無理からぬことです。
文系と理系の選択は大学受験に影響するだけでなく、人生全体においても重大決断になり得るからです。
文系と理系の選択は、一生の仕事を決めることに直結します。
そのため、大学の文系学部を卒業したあとに、理系学部に入り直す人もいるくらいです。
文系または理系は、慎重に検討したうえで決断してください。
科学は大きく文系と理系にわかれる
文系と理系の違いを教科でとらえている高校生は少なくないでしょう。
国語や歴史や地理が得意だから文系、数学や物理や化学が得意だから理系、という選択は普通に行われていますし、「教科で決めてよい」と指導する高校の担任もいるのでしょう。
またそのように選んでも、自分の性質に合った選択ができる可能性は高いです。
2分の1の確率で当たるからです。
しかしこの記事の読者には、きちんと「科学の視点」を持って文理を選択していただきたいと思います。
科学とは
文系と理系で「何をわけているのか」というと、科学です。
科学には文系と理系の2種類があります。
そもそも小中高、大学で学んでいるものは科学です。
学校を統括する国の機関を文部科学省といいますが、その科学を子供たちは一生懸命学ぶわけです。
文部科学省は、高校までは子供たちに文理両方の科学を教える、と決めています。
しかし大学では、より専門的に勉強・研究してもらいたいので文理をわけて教えることにしました。
文系と理系の垣根を超えた学問も現れていますが、まだ一般的ではありません。
では科学とはなんでしょうか。
科学とは、感情と信仰と区別された、理性的あるいは知的な全学問、と定義されます(コトバンクより)。
この定義は、このまま覚えておいてください。
この定義ではまず、科学は「感情と信仰ではない」としています。
昔は、感情も信仰も科学も混ざっていました。
神様にお願いすると病気が治ると信じられていました。
太陽が地球の周りを回っていると考えられていたのも、鉄が金になると考えられていたのも、悪魔に憑りつかれた人を法律で処分したのも、感情と信仰と科学が「ごちゃまぜ」になっていたからです。
人類はその後、理性と知性を身につけます。
理性と知性を身につけた人は、物事の真理は、感情と信仰から切り離して考えなければならない、と主張しました。
それが科学です。
現代科学には、感情を扱う精神医学や、信仰を扱う宗教学や神学もあります。
ただ精神医学や宗教学や神学でも、「感情と信仰を、感情と信仰から区別して理性的知的に考えていく」ことが求められます。
文系の科学とは、理系の科学とは
文系の科学のことを、社会科学や人文科学と呼びます。
理系の科学のことを自然科学と呼びます。
社会・人文科学は、人類が編み出したルールを扱う学問です。
法学、経済学、文学、教育学、政治学、歴史学などが社会・人文科学であり、文系です。
自然科学は、人が関与できない自然のルールを解き明かす学問です。
物理学、化学、生物学、農学、工学、理学、医学、薬学などが自然科学であり、理系です。
なぜ文系or理系を決めなければならないのか
それでは次に、なぜ高校生は文系または理系を決めなければならないのか、考えていきます。
さらに、なぜ適当に文理を決めないほうがよいのかもあわせて解説します。
大学が文理にわけて教えているから
ひとつの答えは、大学で文系と理系にわけて教えているから、です。
北海道の大学では、小樽商大は文系の学問しか教えていません。
室蘭工大は理系の学問しか教えていません。
そして総合大学である北大は文系も理系も教えていますが、文系を選んだ学生は文系の学問しか教わりませんし、理系を選んだ学生は理系の学問しか教わりません。
厳密には、文系の大学でも理系の授業が少しありますし、理系の大学でも文系の授業は少しあります。
文系と理系はそれぞれさらに細分化していき、それを学部と呼びます。
北大の学部には、文系と理系でそれぞれ次のような種類があります。
文学部、教育学部、法学部、経済学部
理学部、医学部、歯学部、薬学部、工学部、農学部、獣医学部、水産学部
大学側が受験生に学部を選んで入試を受けさせているので、受験生は文系か理系かを決めたうえで、さらに学部まで決めなければなりません。
1人の人間が両方を研究できないから
高校生が文系と理系のいずれかを選択しなければならないもうひとつの理由は、1人の人間が文系と理系の両方を研究することができないからです。
文系だけでも、もしくは理系だけでも、勉強量は膨大になります。
まれに驚異的な天才が現れ、文系と理系の両方を究めることもあります。
しかし普通の天才や普通の人たちは、文系または理系の片方の研究で手一杯になるはずです。
仕事にするから
大学を出ると学士という資格が与えられます。
さらに研究したい人は、修士や博士の資格を取る道が用意されています。
しかし大半の人は、4年制の大学を出たら就職します。
就職先は、大学時代に所属していた学部に関係する企業や行政機関などを選ぶのが一般的です。
多くの人は、生涯をかけて1つの仕事をします。
複数の仕事に携わる人も、大学時代の学部と関係した仕事を選ぶことになります。
それは学部に関係した仕事を続けたほうが、知識も経験もあるので効率的に働けるからです。
学部を選ぶことは、1つの仕事を選ぶことに他なりません。
つまり文系または理系を選ぶと、将来の仕事がかなり絞られてしまうのです。
高校生が文系または理系を決めなければならないのは、将来に就く1つの仕事を選ぶためです。
高校生で文理を選ぶとき、「自分は将来どのような仕事に就きたいか」を考えると進路を間違わないかもしれません。
それでは次に、文系人間や理系人間には、どのような仕事があるのか紹介します。
文系人間はこのような仕事をする
大学受験で文系学部を選び、そこを卒業するとどのような仕事をするのでしょうか。
企業での職種としては、商品やサービスを売る営業、企業のお金を計算する経理、快適な職場環境をつくる総務などがあります。
行政機関(公務員)では、法律や条例をつくる仕事も文系人間の仕事になります。
大学の文系学部を卒業した人の就職先には、高校生もよく知っている企業があります。
北大法学部の卒業生が就職している企業は次のとおりです。
三井住友銀行、野村證券、北海道放送、北海道新聞社、三井物産、セブン‐イレブン・ジャパン、ニトリ、トヨタ自動車、三菱電機、NTTドコモなど多数
理系人間はこのような仕事をする
大学の理系学部を卒業して企業に就職すると、技術職や開発職、研究職に就くことが多いでしょう。
ただ、理系の人は営業の仕事をすることがあります。
理系の出身者が銀行や商社に入ることもあります。
北大工学部の卒業生は次のような企業に就職しています。
清水建設、IHI、DMM.comラボ、日立製作所、パナソニック、サッポロビール、本田技研工業、東京電力ホールディングス、ハウス食品、東日本旅客鉄道ドコモなど多数
消極的文系選択は危険
高校生が文理を選択するとき、数学や理科が苦手だから文系を選択することがあります。
そのような消極的文系選択は危険です。
仕事から文理を選択することが理想
繰り返しになりますが、文理の選択は将来就きたい仕事から「逆算」して考えたほうがいいでしょう。
例えば、次のような決め方が理想です。
「宇宙に関する仕事がしたい→宇宙工学部学びたい→工学部に行きたい→理系にする」
「弁護士になりたい→法学部に行きたい→文系にする」
「数学・理科が嫌いだから」では選択肢が狭まってしまう
一方、消極的文系選択は「数学・理科が嫌い」から始めることになり、こうなります。
2つも疑問符(?)が付いてしまうのです。
高校生が自分の適性を把握して、適切に文理を選択することは簡単なことではありません。
しかしだからといって2分の1の確率にかけて「数学・理科が苦手だから私は文系人間なのだろう」と適当に決めてしまうと、将来、就職するときに後悔することになりかねません。
その後悔は「自分は理系の仕事のほうが向いていることが、今わかった。高校時代に数学と理科を頑張っておけばよかった」という内容になるでしょう。
高校の数学と理科は、確かに簡単な科目ではありません。
現国や日本史や世界史のように、教師の授業を聞いていればなんとなくわかる学問ではありません。
数学の「数字いじり」や、物理の「摩擦はないものとする」という考え方、化学の「目に見えない現象」などは、「なぜそのようなことをするのか」「なぜそのように考えるのか」すらわからない生徒もいるでしょう。
しかし、高校の数学や理科は、高校入試をパスしている人が解けないことはありません。
わからないなりに我慢して教師の説明を聞き続けて、問題集を解き続ければ、それほど長い時間をかけずに理解できるようになります。
しかも、日本史や世界史や地理などは、新しい内容も古い内容と同じくらいしっかり暗記しなければなりませんが、数学や理科は公式を覚えたり解くコツを覚えたりすればいくらでも応用力が身につき、新しいことを覚えるのに苦労が要らなくなります。
理系の大学学部を目指していた受験生が、文系の仕事の魅力を知って「文転」することはそれほど難しくありません。
しかし数学と理科を回避するために文系の大学学部を目指した受験生が「理転」することは容易ではありません。
数学や理科を捨てることは、将来の選択肢を狭めることでもあるので、消極的文系選択は極力回避したほうがいいでしょう。
まとめ~どちらも難しいし楽しい
文系の仕事も理系の仕事も、どちらも楽しいですし、どちらも難しいでしょう。
いずれの道も、その道を究めることは苦労します。
しかし自分の性質に合っている道を選ぶと、苦労を苦労と感じないで済みます。
なぜなら仕事が自己実現の場になるからです。
アイドルになりたくてアイドルになった人が楽しそうに仕事をするように、自動運転車を開発したいと考えている人が自動車会社に入社すると、寝る間を惜しんで開発するでしょう。
夢のなかでも仕事をする人もいます。
そのような天職に出会うには、高校生のころから仕事と文系・理系について真剣に考える必要があります。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。