朝勉を習慣化しよう

朝(午前)のほうが脳が働く!「朝勉(あさべん)」を習慣化しよう

なぜか昔から、受験勉強を一生懸命やっているシーンというと、深夜12時まで机に向かっている姿が描かれます。
それはきっと、人が寝ている時間も勉強する人は偉い、という印象を与えることができるからでしょう。

しかし夜中に勉強したことで午前中に頭がぼやけてしまえば、学習効果は上がらないかもしれません。
それは脳科学的にも医学的にも生理学的にも遺伝子学的にも疫学的にも、勉強は朝のほうが向いていることが証明されているからです。

もし「夜勉」や「夜中勉」を続けている受験生で、成績が思うように上がっていない場合、「朝勉」を試してみてください。
「こっちのほうが調子いい」と感じるかもしれません。

朝目覚めて夜寝るのは生体リズムに合っている

そもそも人は、朝目覚めて夜眠るようにできています。
これは、地球の自転や、昼夜のサイクル、明暗のサイクルと関係していて、生体サイクルと呼びます。

数十億年来の生活習慣

生体サイクルは、数十億年かけて築き上げられた生活習慣といってもいいでしょう。

千葉大学大学院医学研究院遺伝子生化学の瀧口正樹教授は、人の生活は、生活サイクルに適応するように進化してきた、と指摘しています(肩書は20199月現在)。

知られざる生体サイクルの驚異

瀧口教授によると、人が生体サイクルを認識できるのは睡眠と覚醒だけです。
しかし生体サイクルは、人の健康に深く関わっています。
少なくとも、体温、メラトニン、血圧は朝と夜に関係していて、以下のとおりです。
メラトニンは睡眠に関与するホルモンで、メラトニンが多く出たほうがよく眠ることができます。

  • 体温:夕方高く、眠っているときに下がり、朝起きる前に上がる
  • メラトニン:熟睡中の午前2時に血中濃度が最高になる
  • 血圧:昼高く、夜下がるが、朝起きる前に上がる

これは、朝起きて夜寝る生活習慣と、数十億年かけてつくり上げられた生体サイクルが合致したときに起こる現象です。
そしてこの状態が、健康的に理想とされています。

寝ている女性つまり、昼近くまで眠り、夜中まで起きている生活習慣は不健康な状態です。
生活習慣の乱れは生体サイクルを攪乱(かくらん)し、病気のリスクを高めます。

定期的に夜中に働く看護師や飛行機のパイロットたちは、睡眠障害、肥満、糖尿病、心臓と血管の病気、がんのリスクが高まることが証明されています。

体にも健康にもよくない生活習慣が、脳によいわけがありません。
脳の働きに悪影響を与えるということは、受験勉強の成績や学力にも悪影響を与えるはずです。

朝勉は、医学的遺伝子学的疫学的見地から合理的であるといえます。

睡眠と「脳」の関係については以下の記事で詳しく解説しています。

短期記憶だけでは入試に使えない

受験生なら誰しも一度学習したところは永遠に記憶したいと思うでしょう。
例えばdetrimentalvindicateという2つの英単語をまだ覚えていないとします。

detrimentalは「有害な」、vindicateは「実証済み」という意味です。
これをそれぞれ10秒ずつかけて覚えて、この記事を読み終わったときに単語のつづりと意味を覚えていられるでしょうか。

なぜ10秒だけ「detrimentalは『有害な』だ」と覚えてもすぐに忘れてしまうのかというと、その記憶が短期記憶でとどまっているからです。

能の記憶短期記憶だけでは、15秒ほどで消えてしまいます。
入試の日まで記憶を持続させるには、長期記憶にしていかなければなりません。

新しい知識や情報を短期記憶から長期記憶に移行させるには、頭のなかで記憶訓練を繰り返さなければなりません。
英単語をノートに書いたり、口に出してみたり、「デートにメンタルやられて有害な」といった語呂合わせをつくったりすることで「やっと」長期記憶にすることができます。

この短期記憶から長期記憶への移行にも、朝勉が深く関わってきます。

朝と脳

脳科学者の茂木健一郎氏は、「朝は勉強のゴールデンタイム」と断言しています。
ゴールデンタイムとは、勉強を最も効率的に進めることができる時間帯という意味です。

まさに朝勉のススメです。

どのように短期記憶が長期記憶に変わるのか

脳のイメージ記憶は、脳のなかの出来事なので、理解することは簡単ではありません。
人の器官でも、筋肉や関節のであれば動きを目視することができるので、その働きはよく理解できます。
しかし脳は働いているときも動きません。
脳は神経と電気信号で動いているからです。

脳についてはまだわからないことも多いのですが、脳の場所によって働きが異なることがわかってきました。

知識の素になる情報をキャッチするのは、目、耳、鼻、手などです。
目や耳などが集めた情報は神経を伝わって脳に届きます。

脳内で最初に情報を受け取るのは、大脳辺縁系という部分の、さらに海馬という部分です。
ここで短期記憶になりますが、何もしないと15秒ほどでその情報は消えてしまいます。

15秒で消えることは、学習にとっては不便ですが、生きていくうえではとても重要な機能といえます。
例えば、机の上のシャープペンのなかに何本の芯が入っていて、ペットボトルのお茶がほとんどなくて、化学の参考書の上に3冊のノートがのっていることまで長期間にわたって記憶できてしまったら脳が「パンク」してしまいます。

そのため、短期記憶のまま消したくなければ、本人が短期記憶の「山」のなかから必要なものだけを「選んで」長期記憶に移行させる必要があります。

長期記憶が収納される場所は、脳のなかの大脳皮質という部分のなかの側頭連合野という部分です。

ここまでの説明を概念図で示すとこうなります。

短期記憶から長期記憶への移行

短期記憶から長期記憶への移行

長期記憶を引き出せなければ入試に使えない

ここで長期記憶の「混雑」という問題が起きます。

受験生は勉強中に、参考書に書かれてある情報のすべてを長期記憶化したいと考えます。
しかし長期記憶化しても、それを意のままに引き出せなければ入試で得点できません。

しかし1日に世界史のあとに古文をやり、そのあとに代数を勉強すれば側頭連合野は混雑し、長期記憶しても引き出しにくくなってしまいます。

その翌日にテストがあったとします。
世界史のテストのとき、古文のことを思い出しても得点できません。
世界史のテストの時間が終わったあとに世界史で覚えたことを思い出しても得点できません。

長期記憶を引き出すには「再認」という作業が必要になります。
例えば、徳川幕府の「4代将軍、徳川家綱」を覚えなければならないとします。

4代家綱、4代家綱、よんだいいえつな」と覚えていくと、その次に「5代綱吉、5代綱吉、ごだいつなよし」と覚えたら、どちらがどちらなのか混乱してしまうでしょう。

これが長期記憶の混雑です。

ではどのように再認して、「4代家綱」を引き出したらいいのでしょうか。
例えば「家康ひみつ」と覚えてみてください。
初代は家康、2代目は「ひ」なので秀忠、3代目は「み」なので家光、4代目は「つ」なので家綱となります。

「家康ひみつ」はいわば、長期記憶の山のなかから「4代家綱」を掘り起こすスコップのようなものです。

この再認の作業に朝勉が有効なのです。

記憶の整理と生体リズムを合わせよう

睡眠には記憶を定着させる機能があることがわかっています。
眠ることによって、混雑していた記憶が整理整頓され、再認しやすくなります。

そして目覚めたときには、長期記憶を収納する側頭連合野に余裕があるので、新しい勉強をしても次々理解していけるようになります。

「睡眠が記憶を定着させるのであれば、夜中に就寝して昼近くに起きてもいいのではないか」と思うでしょう。

昼と夜のイメージここで、冒頭で紹介した生体リズムを思い出してください。
人の器官は、朝働き始めて夜休んだほうが都合がいいのです。

脳も同じで、夜から朝にかけて脳のなかの長期記憶を整理して、朝目覚めてから新しい勉強をしたほうが効率よく記憶できます。
そのほうが、再認(記憶を引き出す行為)もスムーズにいきます。

脳科学者がおすすめする学習法

脳科学者の茂木氏はハンググライダー方式の勉強法をおすすめしています。

ハンググライダーは頂点から徐々に下っていきます。

ハンググライダーハンググライダーは、人が大きな羽を背負って空中を滑空するスポーツです。
ただ動力がないので「飛んでいる」わけではありません。
高いところから飛び出して、ときおり風に乗ってより高くなることもありますが、原則、徐々に下っていくだけです。

ハンググライダー勉強法は、朝起きて顔を洗って朝食を食べて歯を磨いたら、全速力で勉強を開始する方法です。

スポーツの場合は、まずはウォームアップして体を慣らしてから徐々にパワーを上げていきますが、脳に準備は必要ありません。
スポーツはウォームアップしないと筋肉や関節を傷めてしまうので準備が必要ですが、脳は筋肉も関節も使いません。

むしろ脳の場合、疲れや飽きることのほうが働きを制御してしまいます。
疲れも飽きも、時間の経過とともに増えていきます。

そのため難問を解いたり大量暗記したりするのは、朝一が適しているわけです。

もちろん、朝早くおきて意識がもうろうとしていてはそのようなハードな勉強はできません。
朝、すっきり目覚める必要があります。

そのためにも、早寝早起きの習慣を身につける必要があるのです。
夜、脳が疲れているときに新しいことや重大なことを覚えようとしても、長期記憶化に苦労するでしょう。
その場合、諦めて早く寝てしまい、翌朝いつもより1時間早く起きてみてください。

「昨晩、途中で投げ出した問題がスラスラ解ける!」といった体験ができるかもしれません。

まとめ~基本に忠実に

受験勉強では、王道が最短ルートです。
基礎を固めてから応用に取りかかると時間はかかりますが、効率よく大量の知識を入力することができます。

早起きして早く寝る生活は、健康づくりの王道といえます。
健康のなかにはもちろん脳の健康も含まれています。

朝勉は理にかなっています。

受験勉強にはノリもあるので、「今は勉強を止めたくない」と思ったときに夜中まで問題を解き続けることは有効です。
しかし夜勉は例外にして、朝勉を習慣化させてみてください。

他にも「筋トレ」が脳に良いと提唱する大学教授のお話しも解説していますので、合わせて読んでみてください♪

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