大学受験の英語学習で、「構文」を学ぶことは大きなウェイトを占めます。
そして構文は、受験生の大きな壁になっています。
このように言われると「やはり構文は避けてとおることはできないのか」と落胆する受験生もいるでしょう。
「ルールだらけ」で、なおかつそのルールに「規則性がない」ように感じられることから、構文を覚えることは英語学習のなかでも嫌われているもののひとつです。
しかし今日からその苦手意識を捨ててください。
なぜなら構文を学ぶのは、英語を簡単に勉強するためだからです。
構文を覚えてしまえば、その他の英語学習をかなり省略できます。
SVOとSVOOの仕組みと構文
構文の解説に入る前に、文法の話をします。
第3文型のSVOと第4文型SVOOを簡単におさらいしておきます。
文型は、ジャンルとしては文法に所属しますが、構文も文法の一種として考えることができます。
構文を文法として解釈すると、理屈がみえて覚えやすくなります。
S、V、Oのそれぞれの英字は次のことを意味しています。
- S:subject、主語
- V:verb、動詞
- O:object、目的語
「I gave her a hat.」はSVOOの形態を取っています。
「最初のO≠次のO」という性質があります。
そしてSVOOはSVOにすることができます。
先ほどの例文であれば「I gave a hat to her.」とすることで意味はまったく同じ「私は彼女に帽子を与えた」ですが、SVOになっています。
SVOで足りない情報をto herで追加しています。
この説明は、文法の説明であり、構文の説明でもあります。
文法的にこの説明を解釈するとこのようになります。
- SVOOは、SVOに単純化できる
- その際、toなどの前置詞を使って情報を加える必要がある
構文的にこの説明を解釈するとこのようになります。
- 構文「give人・モノ」は構文「giveモノto人」と同じ意味になる
- ただ「giveモノto人」にすると、誰にあげたかを強調するニュアンスが生まれる
このように文法的に構文を理解すると、丸暗記ではなく理屈で覚えることができます。
前置詞は厄介者?
構文の理解や構文の暗記を難しくするのは前置詞です。
前置詞の性質はある程度説明できるので、理屈で前置詞を選ぶこともできます。
しかし、構文によっては、なぜその動詞にその前置詞を使うのか、日本人では理解できないものもあります。
ネイティブ並みに前置詞のニュアンスを捕らえるのは至難のわざです。
さて、冒頭で、「構文を覚えればその他の英語学習を省略できる」と紹介しましたが、構文を学ぶことは、英文法と前置詞を学ぶことでもあります。
したがって構文をしっかり勉強すれば、いつの間にか英文法と前置詞の知識が身についているというわけです。
頻出の構文をチェックしておこう
それでは入試英語に頻繁に登場する構文をみていきましょう。
以下の構文はその一部にすぎませんが、知っているかどうか確認してみてください。
下記の表を印刷して、右側の空欄に当てはまる日本語を考えてみてください。
答えは下段にありますが、まずは答えを見ないで考えてみましょう。
be contrary to … | ? |
A is to B what C is to D. | ? |
be sick of … | ? |
blame … for ~ | ? |
carry … out | ? |
divide … into ~ | ? |
get to … | ? |
go through … | ? |
hear from … | ? |
hear of … | ? |
in contrast to … | ? |
It was not until … that S + V ~ | ? |
keep … in mind | ? |
know better than to V | ? |
答えはこのようになります。
be contrary to … | …に反している |
A is to B what C is to D. | AとBの関係はCとDの関係と同じだ |
be sick of … | …にうんざりしている |
blame … for ~ | ~の責任は…にあるとする |
carry … out | …を実行する |
divide … into ~ | …を~に分割する |
get to … | …に到着する |
go through … | …を経験する |
hear from … | …から便りを受け取る |
hear of … | …のうわさを耳にする |
in contrast to … | …とは対照的に |
It was not until … that S + V ~ | …して初めてSはVした。 |
keep … in mind | …を覚えておく |
know better than to V | Vなどしないという分別がある |
北大をはじめとする道内国公立大はもちろんのこと、私大に挑戦する人でもこれくらいは押さえておきたいところです。
そこで提案したいのが、「他の英語の勉強を省略できる暗記法」です。
「be contrary to …は、…に反している」とそのまま暗記する丸暗記法は、10個くらいを覚えるときには有効です。
しかし構文は、入試の日までに数百個は覚えておかなければなりません。
数百個を丸暗記しようとすれば、最初のほうに覚えた構文を忘れてしまうでしょう。
大量のものを丸暗記することは、非効率です。
一方、他の英語の勉強を省略できる暗記方法は、1個の構文を覚える時間は長くなりますが、その代わり忘れにくく、さらに、構文以外の他の英語の勉強にもなるので、総合的にみて効率的です。
こういう教え方が構文嫌いをつくってしまう
構文の覚え方を紹介する前に、悪い覚え方を紹介します。
以下の説明文は、ある英語講師が実際に行っていた指導です。
構文「as 原級 as S can」を覚えれば「I will do my job as ( ) as I can.」にsoonが入ることがわかる。
「原級が入る」と覚えることで、比較級soonerでも最上級soonestでもないことがわかるからだ。
これでは丸暗記をすすめているのと同じです。
この説明でも生徒が理解できてしまうのは、「as as」が有名な構文で、それに「S can」を加えただけだからです。
しかしこれほど簡単な問題が大学入試で出てくることはまれでしょう。
出題されてもほとんどの人が解けるので差がつきません。
自分で日本語の例文をつくってみよう(日本語ありきの勉強法)
おすすめしたい構文の覚え方は、日本語の例文をつくる方法です。
最終的には英語の構文を学ぶのですが、その前に日本語からスタートするのです。
早速試してみましょう。
次の日本語の問いに、日本語で答えてください。
問い:「AとBの関係は、CとDの関係と同じだ」のA、B、C、Dに適当な語句を入れて自然な日本語にしなさい |
答え: |
A、B、C、Dは何でも構いません。
例えば「猫とライオンの関係は、スズメと鷲の関係と同じだ」としたとします。
これを英訳してみましょう。
「AとBの関係は、CとDの関係と同じだ」は先ほど紹介した構文表のなかに、「A is to B what C is to D.」があります。
あとは猫、ライオン、スズメ、鷲の英単語を調べるだけです。
これらを合わせると、このような英文ができます。
この英文ができたら、「Cats is to lions what sparrows is to eagles.」と「猫とライオンの関係は、スズメと鷲の関係と同じだ」の2つを覚えてください。
これが、構文を覚えるための「他の英語の勉強を省略できる暗記法」です。
この勉強法を使えば次の効果が期待できます。
- 自分がつくった日本語文がベースになっているので記憶に定着しやすい
- 英作文のスキルアップができる(英語の構文を学びながら英文づくりを練習できる)
- 語彙力アップができる(catsやlionsやeaglesは覚えやすい単語ですが、すずめsparrowsは意外に出てこない単語ではないでしょうか)
- 和訳するコツが身につく(元の日本語は自分で考えた自然な日本語なので和訳の見本になります)
その他の構文を使った問題を出題します。
この記事を読み終わったら挑戦してみてください。
問い:「AはBにうんざりしている」のA、Bに適当な語句を入れて自然な日本語にしなさい。 |
答え: |
※ヒント:be sick of …を使う
問い: 「Aして初めてBはCした」のA、B、Cに適当な語句を入れて自然な日本語にしなさい。 |
答え: |
※ヒント:It was not until … that S + V ~を使う
問いにしたがって自然な日本語をつくったら先ほど紹介した構文表のなかから適切な構文を選び、A、B、Cに該当する英単語を構文に挿入して英文をつくってください。
あとは、できあがった構文付きの英文と日本語文を覚えるだけです。
覚えるときは動詞の元々の意味と、前置詞が持つニュアンスを考えるようにしてください。
前置詞の性質をつかんでおけば暗記が楽になる
日本語を学ぶ外国人が「が、を、に、の、と」の助詞の使い方に悩むように、日本人は英語の前置詞の選択に悩みます。
「一緒に、with」「上に、on」「なかに、in」「の、of」といった知識だけでは解決できない用法がたくさんあるからです。
イメージを押さえておこう
前置詞は、「動作の動的イメージ」を伝えることができます。
例えば「上にいる」という動作は、「台の上に乗っている」こともありますし、「上空を飛んでいる」こともあります。
英語では、上にいる状態の違いを、動詞と前置詞を組み合わせて区別しています。
前置詞が持つイメージを、簡単な概念図で表現してみました。
onは接触しています。
| on |
|
|
inは含まれています。
| ||
| in |
|
|
atは全体のなかの1地点です。
| at |
|
|
| |
|
|
toはゴールが明確なときの方向性を示します。
|
|
to→→→ | |
|
forも方向性を示しますが、ゴールのイメージはtoより不鮮明です。
|
| |
for→→→ |
| |
|
fromはスタート地点から離れます。
|
|
←←←from | |
|
ofは全体の一部です。
of |
|
|
|
|
|
|
|
|
overは接近していても接触しません。
over |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
構文の意味を支配する前置詞
入試英語の頻出構文のなかには、同じ動詞を使いながら、前置詞が変わるだけでまったく意味が異なるものもあります。
be concerned about … | …について心配している |
be concerned with … | …に関係している |
このような構文は、このまま覚えてもいいのですが、ただやはり理屈を押さえておいたほうが英語の理解が深まります。
「前置詞が変わるだけでまったく意味が異なる」と解説しましたが、それは英語を学ぶ日本人の感覚です。
英語のネイティブは「同じ動詞を使っているのだからニュアンスはそれほど変わらない」と感じています。
日本語の「心配している」と「関係している」はまったく意味が違います。
しかし英語のconcernには「重要な関心事」というニュアンスが含まれています。
したがって、重要な関心事について心配していればaboutを使ってそのニュアンスを伝えます。
そして、重大な関心事に関係するさらに重大な関心事があればwithを使ってそのニュアンスを伝えるのです。
まとめ~丸暗記するか理屈で覚えるか
受験生のなかには丸暗記を苦にしない人がいます。
そのような人は、構文も丸暗記してしまったほうがいいでしょう。
英語は言語なので「肌感覚」でそのスキルを獲得することも不可能ではないからです。
一方で、丸暗記が苦手で理屈を使って記憶を定着させたい人は、構文の持つ文法の要素と前置詞の知識を一緒に学ぶとよいでしょう。
いずれの場合でも構文を「たっぷり」覚えると、英語が簡単に感じるようになるはずです。
さまざまな要素が詰まった構文の勉強は、実は英語を効率よく勉強する方法でもあるのです。
【英単語】の暗記法については以下の記事を参考にしてみてください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。