不登校の小学生と中学生は、2017年度に144,031人となり、過去最高を更新しました。
国内の全小中学生は9,820,851人なので、不登校の子供は1.5%を占めます。
1学年の子供の数が100人であれば、そのうち1.5人が不登校になっている計算です。
この記事の読者のなかにも、友人が不登校になったり、不登校の経験がある人もいるのではないでしょうか。
今、不登校中の人もいるかもしれません。
もしくは、不登校の子供を持つ保護者もいるかもしれません。
不登校はそれくらい身近になり、珍しくないことになってしまいました。
しかし、本来楽しい場所であるはずの小学校・中学校に行けない子供がいることは、1人の子供にとって大きな問題であると同時に、社会が解決に動かなければならない深刻な問題でもあります。
ところが不登校の子供たちが抱える問題は多岐にわたるうえに複雑なため、一般の教師では対応できないことがあります。
そこで不登校の子供たちを救うプロフェッショナルが誕生しました。
次の3種類があります。
- 特別支援学校教諭
- 不登校訪問専門員
- スクールカウンセラー
この記事では不登校の実態を捕らえたうえで、この3人の専門家たちの役割について解説します。
もし不登校の子供やその保護者がまだこの3人の専門家に出会えていなければ、ぜひコンタクトを取って相談してみてください。
不登校とは、不登校の現状とは
文部科学省は不登校の小学生と中学生について次のように定義しています。
次の3つの状態すべてにあてはまると、不登校児童・生徒となります。
- 心理的、情緒的、身体的、社会的な要因により、登校しない、登校できない状態
- 学校を年間30日以上欠席している
- 病気や経済的な理由による長期欠席者は除く目
小学生0.5%、中学生はその6倍
先ほど、不登校の小中学生は144,031人で全小中学生(9,820,851人)の1.5%を占めると紹介しました。
小学生と中学生の内訳は以下のとおりです。
- 不登校の小学生35,032人、全小学生(6,463,416人)の0.5%
- 不登校の中学生108,999人、全中学生(3,357,435人)の3.1%
中学生の不登校生徒の割合(3.1%)は、小学生の不登校児童の割(0.5%)の6倍以上になっています。
不登校になるきっかけ
病気や経済的な理由による長期欠席は、不登校児童・生徒に数えません。
では何がきっかけで不登校になってしまうのでしょうか。
文部科学省の調査によると、次のようになっています。
- 学校生活に起因 36.2%
- 家庭生活に起因 19.1%
- 本人の問題に起因 35.0%
- その他 4.2%
- 不明 5.5%
学校生活の起因には、友人関係、教師との関係、学業不振、部活への不適応、学校の決まりをめぐる問題、入学・転編入学・進学のときの不適応があります。
本来、不登校問題を解決しなければならない教師や学校が不登校の原因になることもあるのです。
家庭生活の起因には、家庭環境の急激な変化、親子関係、家庭内不和があります。
そして不明が5.5%あるのは、多いと感じるのではないでしょうか。
全国の不登校の小中学生は144,031人でしたので、その5.5%は7,922人になります。
これほどの子供たちが、原因を究明してもらえないまま学校に通うことができずにいるのです。
不登校の原因と解決法については以下の記事に詳しくまとめています。
問題は深刻化している
子供の数自体は減少傾向にあるのに、不登校の子供の数は2017年に過去最高となりました。
このこと自体とても深刻ですが、個別のケースをみるとさらに深刻な事態になっていることがわかります。
不登校が継続してしまう理由に「複合的な理由」があります。
つまり、1人の子供が複数の問題を抱えてしまっている状態です。
その場合、1つの問題を解決できても、他の問題が残るので依然として学校に通うことはできません。
また中学生で不登校の割合が増えるのは、「非行や遊び」が増えるためとみられています。
そして学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)が不登校に関連しているという指摘もあります。
これらの児童生徒は人間関係を構築できなかったり、学習でつまずいたりと、不登校になりやすくなってしまいます。
さらに、保護者による子供への虐待も登校を困難にさせます。
不登校問題では教師の資質が問われることがあり、さらに教師が原因で不登校になることもあります。
しかし、一般の教師では手に負えないこともあるでしょう。
例えばLDやADHDは医療が取り扱うことがあり、子供への虐待は暴力事件なので警察の介入が必要な場合があります。
一般教師と医療・警察の間の存在
不登校問題が起きそれが深刻化したとき、いきなり医療や警察が登場するのは不穏当です。
不登校の子供は、できれば学校に通えるようになることが理想なので、教育制度のなかで解決できたほうがよいでしょう。
そこで一般教師と医療・警察の間の存在として、不登校問題に対応する専門職が誕生したわけです。
それでは、「不登校訪問専門員」と「スクールカウンセラー」と「特別支援学校教諭」の役割をみていきましょう。
不登校訪問専門員とは、その役割とは
不登校訪問専門員は、不登校になっている子供とその保護者の話に耳を傾けて、希望ある将来を描く支援をする人です。
不登校訪問専門員は民間資格で、一般社団法人ひきこもり支援相談士認定協議会が認定しています。
本部は北海道千歳市にあり、弁護士や寺の住職たちが設立しました。
不登校訪問専門員の仕事
不登校訪問専門員の仕事は主に次の4つがあります。
- 不登校の子供と保護者に接触して、学校への復帰を目指す支援を行う
- 子供の障害性を考慮した対応、支援を行う
- いきなり学校に復帰するのが難しい場合、グループホームやフリースペースなどの中間施設の利用を促す
- 関係者に不登校問題の正しい知識を持ってもらう
不登校訪問専門員の資格を取得する方法
不登校訪問専門員の資格は、誰でも取得することができます。
教師である必要もなく、教員免許を持っていなくても問題ありません。
ひきこもり支援相談士認定協議会が作成したテキストとDVDで学習し、同協会から出される課題を提出します。
その課題が一定水準に達すれば、不登校訪問専門員を名乗ることができます。
学習範囲は、不登校の現状、原因、発達障害の理解、訪問支援の意義などです。
アプローチ方法を学ぶことができる
不登校訪問専門員の資格を取得したからといって、単独で不登校問題に取り組むことができるわけではありません。
この資格を取得するのは、次のような人たちです。
- 身近で不登校問題に悩んでいる方がいる人
- 不登校の経験がある人
- 仕事で子供に接することが多い人
- 塾の講師や家庭教師
- 学校の教師
つまり不登校に直接関与した人や、仕事で不登校問題に直面している人が不登校訪問専門員の資格を取っています。
スクールカウンセラーとは、その役割とは
スクールカウンセラーは文部科学省がつくった専門職です。
都道府県などが中学校を中心にスクールカウンセラーを配置するとき、経費の一部を国(文部科学省のこと)が負担します。
つまり、文部科学省が「必ずスクールカウンセラーを中学校に置くように」と都道府県などに指示しているのではなく、都道府県が自主的にスクールカウンセラーを置くのであれば、国も経費面で協力する、という形になっています。
スクールカウンセラーの仕事とは
スクールカウンセラーの仕事は、次の3つです。
- 子供たちへのカウンセリング
- 教員への助言や援助
- 保護者への助言と援助
とてもシンプルですが、文部科学省はさらにスクールカウンセラーは次のことに注意しなければならないとしています。
- 不登校の子供への援助は、子供たちの憲法上保障された教育を受ける権利を満たすこと
- 学校に不登校になるような障害があるなら、それを取り去る努力をする必要がある
- 「学校制度が子供たちを抑圧しているのだから、不登校の子供は学校以外の別の方向を目指せばよい」という考え方は適切ではない
- 学校の相談室に自分から出向いてくる児童生徒はまれ。本人が相談に来ないから相談が始まらないという態度では不登校に対応できない
- 本人と面会できなくても、保護者との面接が可能であるなら、それを続けるべきである
- 保護者とすら面接できないときでも、教師との協議は続けなければならない
- 待機形の相談ではなく、積極的に問題に関わること
- だまって暖かく見守るだけでは足りない
- 家庭訪問してもよい
- 別室登校、相談室登校、保健室登校を検討する
文部科学省はスクールカウンセラーに、不登校の子供を学校に復帰させることを期待しています。
また、スクールカウンセラーに積極的にこの問題に関与するよう強い口調で求めています。
スクールカウンセラーになれる人とは
スクールカウンセラーになれるのは次の条件に当てはまる人です。
- 財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士
- 精神科医
- 児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有し、大学の学長、副学長、教授、准教授または講師の職にある人、またはあった人
この条件はかなりハードルが高く、なり手が少ない可能性があるため、文部科学省は「スクールカウンセラーに準ずる者」も設定しています。
その条件は以下のとおりです。
- 大学院修士課程を修了した者で、心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務について、1年以上の経験を有する者
- 大学若しくは短期大学を卒業した者で、心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務について、5年以上の経験を有する者
- 医師で、心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務について、1年以上の経験を有する者
例えば2)であれば、中堅の教師であれば資格を満たせるでしょう。
スクールカウンセラーに準ずる者も、スクールカウンセラーと同じ仕事ができます。
特別支援学校教諭とは、その役割とは
特別支援学校教諭は、視力や聴力が不自由な子供たちや、知的障害がある子供たちに通常の学校に準じた教育を行う教師のことです。
その教育のことを特別支援教育といいます。
したがって特別支援学校教諭は「本来は」不登校問題の専門家ではありませんでした。
しかし特別支援教育のなかで、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥/多動性障害)の子供たちのケアが求められるようになりました。
そしてLDやADHDの子供たちは人間関係を構築することが苦手で、そのため不登校になってしまうことがあります。
それで特別支援学校教諭も、不登校問題の専門家として数えられるようになりました。
特別支援学校教諭はLDやADHDの子供たちの対応をするとき、医師や心理相談員と連携することがあります。
したがって特別支援学校教諭であれば、医学的または心理学的なアプローチで不登校の子供たちに接触することができます。
まとめ~不登校でも出席も卒業も可能
先ほど、スクールカウンセラーの役割は不登校の子供を学校に戻すことである、と紹介しました。
しかし文部科学省が「何が何でも子供を学校に戻そうとしている」わけではありません。
スクールカウンセラーには、子供を学校に復帰させることをあきらめないでほしい、ということです。
文部科学省は、不登校の状態でも「出席扱いにする」方法を用意しています。
児童や生徒が、学校以外の教育支援センターやフリースクールなどの民間施設で指導を受ければ、それを小中学校の出席に数えてもよい、としているのです。
したがって、フリースクールになどに行っていれば、小学校も中学校も卒業することができます。
不登校の子供もその関係者も、まずは学校への復帰を目指しながらも、それが無理ならその次によい方法を取ればいいわけです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。