日本では、中学校を卒業した人の98%が高校に進学しています。
ほぼ全員が高校に入っている状態です。
では「ほぼ全員」に含まれていない人は、中学を卒業した後に何をしているのでしょうか。
働いているか、高校浪人をしているか、その他、の3つにわかれます。
今回は、高校浪人について考えてみます。
結論を先に紹介すると、次の2点になります。
- 高校浪人は極力避けるようにしよう
- 高校浪人を決めたら堂々と来春に備えよう
高校浪人をする人の心理を考えながら、この2つについてみていきましょう。
高校浪人とは
高校浪人とは、高校入試で不合格になり、中学を卒業した後に働かず、翌年の高校受験に向けて勉強に取り組むことです。
大学受験に失敗して大学浪人をしている人は珍しくありませんが、高校浪人は珍しい存在になってしまいます。
高校浪人する人は、まずは「珍しい存在になってしまう」という現実を受け入れることから始めることになります。
この現実がどのようなものであるかは、次の章の「心のダメージを考えると回避したほうがよい」で詳しく解説します。
どれくらい珍しい存在なのか
文部科学省の「数字で見る高等学校 2010年」によると、1年間に中学を卒業する人は122万8千人います。
そのうち、高校、通信制高校、中等教育学校後期課程(中高一貫校の高校の部)、特別支援学校高等部に進学(以下、高校進学)する人は120万4千人です。
したがって高校進学率は実に98%に達します。
では、高校に進学しなかった2%の人は何をしているのでしょうか。
中学を卒業した人のうち、就職するのは0.4%です。
したがって1.6%(=2%-0.4%)のなかに、高校浪人を決めた人がいることになります。
この1.6%のなかには、就職せず、来年の高校入学も目指していない人も含まれています。
したがって、高校浪人をする人は、中学を卒業した人の1~2%くらいと推測できます。
ある中学校の3年生の人数が100人だった場合、毎年1~2人が高校浪人をしている計算になります。
心のダメージを考えると回避したほうがよい
冒頭で「高校浪人は極力避けるようにしよう」とアドバイスしたのは、高校浪人をすることによる心のダメージが小さくないからです。
中学を卒業するのは15歳です。
物心がつきはじめてからまだ10年くらいしか生きていません。
しかもその10年は学校と家庭に「がっちり」守られていて、社会の厳しさにほとんど接していません。
大人になるとつらい経験をたくさんするので、新たにつらいことに遭遇しても、心のダメージをある程度回避できます。
しかし10代半ばの子供には、100人に1~2人しか味わうことがない体験は、相当大きなインパクトになるはずです。
大人になっても屈辱的な感覚が残ってしまうかもしれません。
だから、高校浪人は極力回避したほうがいいのです。
続いて、高校浪人の心のダメージについてみてみます。
心のダメージとは
女性歌手のAさんがあるラジオ番組で、自身の高校浪人体験について赤裸々に語りました。
その言葉から、高校浪人をする人の心のダメージを推測してみます。
中学生だったAさんには、行きたかった公立高校がありました。
どうしてもその高校に行きたかったので、滑り止めの私立高校は受けませんでした。
しかし残念ながら不合格となりました。
それで高校浪人の人たちが勉強する予備校に通うことになりました。
人生初の挫折
不合格を知ったときAさんは、これが挫折というものなのか、と知りました。
そして大人になって振り返って、それが人生初の挫折だったと知りました。
もちろんAさんの子供時代にも、嫌なことはあったでしょう。
しかし、高校不合格のインパクトは別格でした。
Aさんは中学生のころ「高校なんて誰でも行ける」と思い込んでいました。
そして、「泣けば買ってもらえる」「甘えれば何とかなる」とも感じていました。
しかし高校不合格によって、人生には思い通りにいかないことがたくさんあることを悟ったのです。
痛みながらの学び
なんとかなる、と思って臨んだ高校入試でしたが、「ナメてしまった」結果、なんとかなりませんでした。
このときAさんは、次の2つのことに気づきました。
- 自分は人より倍努力してようやく人並みになれる
- 努力しないと落ちこぼれる
15歳でこのことに気がついたのは、すごいことです。
大きな収穫といってもいいでしょう。
大人でもこのことに気がつかない人はたくさんいます。
これは「人生の真実」です。
自分の今ある才能と知識だけで楽に生きていける人などいません。
「人並み」とは、日本人全体の平均値ではありません。
「人並み」とは、多くの人にとって、人生の目標です。
だから人は努力を怠ってはいけないのです。
Aさんはこう続けます。
大人になって歌手になったAさんは、「蹴落とされる」ことをたくさん経験しました。
芸能界は競争が激しい世界なので、それはやむを得ないのでしょう。
しかしAさんは、蹴落とされるたびに、「私が努力しなかったからだ」「努力しよう」と思ってきたそうです。
そのように思うことができたからこそ、プロの歌手になることができました。
そして「努力しよう」と思えるようになった出発点が、高校不合格だったのです。
Aさんは「早いうちに挫折を味わってよかった」と振り返っています。
Aさんが今あるのは、高校浪人の「おかげ」だったわけですが、しかしそれは、大人になって振り返っているから、そのように考えることができるのです。
Aさんは「痛みながら学んだ」と述べています。
この言葉で注目したいのは「痛み」です。
高校浪人したことは、大人になれば「よい経験だった」と振り返ることができるかもしれませんが、15歳の子供には、厳然たる痛みになります。
同じ年齢の先輩と後輩の同級生
さて、高校浪人を経て、Aさんは念願の公立高校に入ることができました。
高校入試の合格を知ったとき、Aさんは「これで浪人した苦労が報われる」と喜びました。
しかしその喜びもつかの間、高校に入ると新たな厳しい現実が待ち構えていました。
中学時代の同級生が先輩で、同級生は1歳年下だったのです。
教室のなかでも、そしてかつての同級生と会っても、そこは「なんともいえない現実」であり「口には出せない微妙な空気」が漂っていました。
この雰囲気は、高校の3年間消えることはありませんでした。
これが、高校浪人をした人の現実です。
Aさんのインタビューは、下記のURLで全文を読むことができます。
中学浪人の挫折から学んだこと 辛島美登里
高校浪人を回避する方法【不合格編】
高校浪人を回避する方法は大きく2つにわかれます。
高校入試で不合格になった後にする方法と、中学時代にする方法です。
まずは前者をみていきましょう。
道立高校には2次募集がある
ここでは北海道の道立高校のケースを紹介します。
ただ、他都府県でも同様の仕組みがあるはずですので、ここに書かれた内容は他都府県の中学生にも参考になると思います。
道立高校の入試は1次募集と2次募集があります。
一般的な入試は1次募集で、ここで大半の人が入学を決めます。
そして1次募集で生徒の数が定員に満たなかった高校は、2次募集を行って生徒を集めます。
もし道立高校の入試に落ちてしまっても、すぐに気持ちを切り替えて2次募集を狙いましょう。
道立高校の2019年の日程は、次のようになっています。
1:出願の受付 1月18~23日
2:学力検査(1次募集の入試) 3月5日
3:合格発表 3月18日
4:2次募集の出願の受付 3月22 ~25日
5:2次募集の合格発表 3月28日
不合格がわかるのが3月18日で、その4日後の22日には2次募集の出願が始まります。
2次募集では試験は行ないません。
1次募集の入試(学力検査)の成績が、2次募集で出願した高校に渡ります。
2次募集で出願した高校は、その成績をみて合格させるかどうか決めます。
したがって、2次募集で不合格になる可能性もゼロではありません。
定時制高校や通信制高校
もし2次募集で不合格になっても、定時制高校という選択肢があります。
道立の定時制高校の場合、4月上旬まで受け付けることがあります。
また北海道には道立の通信制高校、有朋高校があります。
有朋高校は3月と9月の年2回、入試を行っています。
2019年は3月27日と9月5日が入試日となっています。
合格発表は3月29日と9月12日です。
高校浪人を回避する方法【中学編】
高校浪人を回避するには、中学時代の準備がとても重要です。
人並みの努力をする
まずは、しっかり勉強しましょう。
高校の進学率は98%です。
したがって普通の努力をして「人並み」を維持していれば、高校に入ることはそれほど難しいことではありません。
塾に通おう
もし中学の勉強でつまずいたら、塾に通いましょう。
先ほど「心のダメージを考えると回避したほうがよい」の章でみたとおり、高校浪人はとてもタフな体験です。
それを回避できるなら、中学時代に塾に通っておいたほうがいいでしょう。
そして塾に通えば、気合を入れて受験勉強に励んでいる友人がたくさんいます。
その波に乗れば、無理なく勉強をすることができるでしょう。
自分の学力を把握して「受かる高校」を選ぶ
受験する高校を選ぶとき、合格率が高いところを選びましょう。
中学の担任の先生に志望高校を伝えて、先生から「今の学力では合格は五分五分だ」と言われたら、高校のランクを1つ落とすことを考えましょう。
そのためには、中3での自分の学力を正確に把握する必要があります。
担任の先生に相談したり、塾の講師に聞いたりして、今の自分の立ち位置を確認しておいてください。
チャレンジするなら滑り止めを受験する
そして合格確率が五分五分の高校を受験するなら、滑り止め高校も受験しておきましょう。
また、以下の記事では北海道の浪人生向けに「勉強のスケジュール」について紹介していますので、合わせて読んでみてください。
高校浪人を決めたら堂々と来春に備えよう
いろいろ手を尽くした結果、高校浪人が決まったら、今度は気持ちを切り替えてください。
そのとき、先ほど紹介した歌手のAさんの話を思い出してください。
高校不合格という挫折は、人生における数多(あまた)の挫折の1個目にすぎません。
そして世の中のすべての人が、必ず1個目の挫折を味わいます。
つまり、挫折を経験することは、決して特殊なことではないのです。
そして挫折を乗り越えた経験は、必ず将来に役立ちます。
だから、高校浪人することになったら、堂々と来春に備えて勉強に取り組んでください。
浪人中に、高校1年生になったかつての同級生と会うこともあるでしょう。
そのとき、照れることも恥じ入ることも苦しむ必要もありません。
堂々と「今、必死になって受験勉強をしているよ」と近況報告してください。
そして次のことを覚えておいてください。
1年くらい遅れても人生は長いのでいくらでも挽回(ばんかい)できる
まとめ~大変だが乗り越えられる
高校浪人の実態を理解できたでしょうか。
かなりつらい体験になることは間違いありません。
しかもそれを思春期の、最も多感な時期に味わうことになるので、心が火傷(やけど)するかもしれません。
しかし癒えない傷はありません。
そして、可能な限り、火傷も傷も負わないようにしましょう。
- まずは勉強
- 結果が不合格であれば次善の策を講じる
この2段階で高校受験を乗り切ってください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。