日本国民の3大義務は、教育の義務、納税の義務、そして勤労の義務です。
学校に毎日行き、塾に通う子供たちは、教育の義務を負っているので勉強しなければなりません。
その代わり、納税の義務と勤労の義務は免除されています。
しかし、学校が修了して次の学校に進学しなければ、納税の義務と勤労の義務が生じます。
その義務を果たすには、就職しなければなりません。
就職するには、就職面接を受けなければなりません。
企業の採用の担当者と会って、志望動機などを聞かれます。
企業の採用担当者は、学校の教師や塾講師とはまったく異なる接し方をしてきます。
就職は「お金が絡むこと」なので、厳しく接してくるでしょう。
しかし、厳しくても「いつか必ずやってくること」なので、生徒のころから就職面接について知っておいてください。
「自分がもし明日から働かなければならなくなったら」という気持ちで、この記事を読んでみてください。
「働く」って何だろう
就職面接を成功させるには、就職と面接の両方について知らなければなりません。
面接については、後段で紹介します。
まずは肝心要(かんじんかなめ)の就職について考えてみましょう。
就職とは働き始めることです。
働くとは、労働を提供して賃金をもらうことです。
つまり、賃金をもらわなければいくら労働しても働いたことになりませんし、お金だけもらって労働しなければ、それも働いたことにはなりません。
労働を提供する人を労働者といい、労働者を雇い、労働の提供を受ける人や会社を雇用主といいます。
労働とは、労力や知恵を会社に提供することです。
賃金とは、労働の提供を受けた雇用主が労働者に支払うお金のことです。
賃金は労働の「対価」と呼ばれます。
労働の価値と賃金の価値は同等で、数式で表すと「労働の価値=賃金の価値」となります。
つまり労働とは、賃金に見合った内容でなければなりません。
労働者は、賃金をもらう以上は、賃金と同じ価値の労働を提供しなければなりません。
これが「社会の厳しさ」であり、「学校との決定的な違い」です。
進学と就職は何が同じで何が違うのか
就職とは、働きたい会社をみつけ、その会社に選んでもらって働き始めることです。
したがって、高校受験や大学受験と似たところがあります。
高校進学も大学進学も、自分が入りたい学校を選び、その学校に選んでもらったときに入ることができます。
そして会社も大学も、選考を行って入社希望や入学希望者を入れさせないことができます。
そして、いい会社には簡単には入れません。
これも、いい高校やいい大学には簡単には入れないのと同じです。
さらに労働も勉強も、ときに「大変な思いをする」ことがあります。
このように進学と就職には似た部分がたくさんありますが、決定的な違いがあります。
進学は、生徒や学生、またはその保護者が「お金を支払って」学ぶ行為です。
しかし就職は、本人が「お金をもらって」働く行為です。
つまり、労働には、賃金分の責任が発生します。
お金をもらっている以上、雇用主の指示通りに動かなければなりません。
以上のことをまとめると就職とは、こういうことになります。
- 就職とは労働を始めることである
- 就職するには自分で働きたい会社を選ばなければならない
- 選んだ会社に選んでもらわなければ働くことはできない
- 就職したら賃金をもらう以上、責任感をもって労働しなければならない
就職面接とは、採用担当者とは
就職面接とは、会社が労働者を選ぶ方法です。
面接とは、会社の採用を担当する人が、「働きたい」と思っている人に実際に会って、話を聞いて、自分の会社の労働者としてふさわしいかどうか「見極める」作業です。
まだ労働を開始してなく、就職先を探している人のことを、労働者と区別して「求職者」といいます。
求職者の選び方には、就職を希望する人に履歴書を書かせて、その内容を吟味する書類審査もありますが、その説明は別の機会に譲ります。
ここでは就職面接の解説に集中します。
就職面接は、企業の採用担当者と求職者が、企業の会議室で「1対1、または複数対1、または複数対複数」で会って会話をする形態を取ります。
採用担当者はまず、「なぜうちの会社に入社したいと思ったのですか」と求職者に尋ねるでしょう。
このとき求職者は、その会社を選んだ理由を述べなければなりません。
このとき、何を言わなければならないのか、そして何を言ってはいけないのか、については次の章でみていきます。
就職面接は短ければ30分、長ければ1時間以上に及ぶこともあります。
就職面接は、通常は1回では終わりません。
最初に就職面接を行うのは、会社の人事部という部署の社員です。
そして1回目の就職面接(1次面接といいます)で合格した人だけが、2次面接に進むことができます。
2次面接には、人事部の部長や取締役が会います。
2次面接では、1次面接より高度なことを聞かれるでしょう。
または、意地悪な質問をされるかもしれません。
例えば「うちの会社に入りたい理由を聞いたけど、その理由なら他の会社でもいいんじゃないかな」「うちの会社に入っても、必ずしもその仕事ができるとは限りませんよ」といったことを聞かれるかもしれません。
これは求職者の「覚悟」を試す質問なので、ひるまず「いえ、御社でないとダメなんです」「どのような仕事でも一生懸命やります」と答えたほうがいいでしょう。
1次面接は、採用したくない人を振るい落とす面接ですが、2次面接は採用したい人を厳選する面接なので、内容が厳しくなるのです。
そして2次面接に通過した人だけが、3次面接に進むことができます。
3次面接には社長が出てきます。
ただ3次面接の目的は、本当に入社の意思があるかどうかを確認することなので、むしろ穏やかな内容になることが多いでしょう。
社長がとても優しくみえるはずです。
就職面接では「こう言おう」
就職面接では、いろいろなことを聞かれますが、聞かれることは大体決まっています。
したがって「こう聞かれたら、こう答えよう」という想定問答を考えておくとよいでしょう。
「なぜうちの会社に入社したいのか」と聞かれたときの、想定される回答を考えてみます。
ここでは、カーディーラーを運営する会社(自動車販売会社)の就職面接を受けることを想定しています。
採用担当者の質問
なぜうちの会社に入社したいと思いましたか。
想定回答
- 御社が取り扱っている車は父親が長年愛用していて、私が生まれる前から家にありました。
- そのため私は、自動車メーカーといえば○○(メーカー名)と感じています。
- 自動車の販売に興味を持ったのは、○○の車を世の中の人に広く乗ってもらいたいからです。
- ○○車は高品質なのに価格はリーズナブルで、ほとんど故障することなく、街中でもキャンプでも快適に使えます。
- 他社の自動車にも乗ったことがありますが、そのたびに、父親の車のほうが優れていると思いました。
- 自動車は購入した人を喜ばせる工業製品だと思います。
- それでカーディーラーで働くことは、人に喜びを与えることだろうと思いました。
- これが私の志望動機になります。
解説
なぜこの回答が優れているのかみていきましょう。
(1)と(2)では、なぜ他社ではなく、このメーカーの販売会社でないとだめなのかをPRします。
入社したい会社が取り扱っている商品やサービスについては「好き」「自分も使っている」「深い思い入れがある」といったことをアピールします。
(3)(4)(5)は、志望先の企業を褒めています。
採用担当者は、自分の会社を愛してくれる人に入社してほしいと考えています。
そのため求職者は、「御社が好きなんです」という気持ちを伝えたほうがいいでしょう。
価格について直接的な「安い」という表現ではなく、婉曲的な「リーズナブル」を使っている点もポイントです。
「安い」には「安っぽい」という悪口のような要素が含まれてしまうからです。
(6)(7)は、どのように働きたいのか、を伝えています。
採用担当者は、しっかり働いてくれる人や、喜んで働いてくれる人を採りたいと思っています。
そして、働きたくない人を落選させようと思っています。
(8)は結びの言葉です。
就職面接では、ダラダラと答えてはいけません。
要点だけを伝えます。
そして自分の発言が終ったら、そのことを採用担当者に伝えましょう。
ここで紹介した想定回答は、あくまで「このような雰囲気で回答しましょう」という例文にすぎません。
就職面接では「嘘」は厳禁なので、もしここで紹介した想定回答が自分の実態に合っていなければ使ってはいけません。
就職面接で嘘をついて採用されて、その後でそれが発覚したら、採用を取り消されることはもちろんのこと、最悪、解雇されるかもしれません。
解雇とはクビのことです。
解雇された履歴は生涯つきまとい、次の就職にも多大な影響をもたらすでしょう。
就職面接では「これは言ってはダメ」
就職面接では、言ってはいけないことがあります。
悪い回答例をみてみましょう。
ここでは、アパレル・メーカー(洋服を製造・販売している会社)を想定してみます。
採用担当者の質問
なぜうちの会社に入社したいと思いましたか。
想定回答
- 子供のころから、洋服やバッグなど、ファッション全般に興味がありました。
- もちろん、好きなだけで社会人として通用するとは思っていません。アパレル業界が厳しい状況に置かれていることは知っています。
- ただ衣食住と呼ばれるくらい、洋服は人々の生活に欠かせない存在なので、それを製造・販売している会社は安泰していると思いました。
- また御社は給与水準が高く、社員を大切にする会社だと思いました。
- 御社の一員になりたく、応募させていただきました。
解説
(1)は内容に具体性やリアリティがありません。
なぜ、この会社でなければだめなのか、が伝わってきません。
(2)は、どれだけつらい状況でも逃げ出さない覚悟があります、という決意表明にはなっていますが、「アパレル業界が厳しい状況に置かれている」と、求職者のほうから言うのは失礼な印象を与えてしまうでしょう。
ただ、もし採用担当者が「アパレル業界は今、厳しいのですがそれでも大丈夫ですか」と聞いてきたら、「好きなだけで通用するとは思っていません」と切り返すのは正しい回答になります。
(3)は、志望動機としては弱いといわざるを得ません。
食品メーカーの就職面接でも、住宅販売会社の就職面接でも、同じ理由を使い回すことができてしまいます。
就職面接では「その会社専用のスペシャルな言葉」を使いましょう。
(4)は、給与のよさが魅力的であることを伝えること自体は間違っていません。
また、社員を大切にする会社、と褒めることも悪くはありません。
しかし、採用担当者は違和感を持つでしょう。
なぜなら、高い給与を支給するのも、社員を大切にするのも、現役の社員たちが一生懸命働いてくれるからです。
求職者はまだこの会社で働いているわけではありません。
採用担当者はきっと心のなかで「まだ君には高額給与と好待遇を約束できないよ」と思うでしょう。
就職面接での回答は、採用担当者に突っ込まれないようにしましょう。
採用担当者は、求職者の「甘い認識」や「矛盾した内容」を見逃しません。
したがって想定問答は、「この内容は甘えていないか」「話の整合性は取れているか」と自問しながら考えていってください。
本当に入社して良い会社なのか見極める
会社の採用面接というのは、会社側があなたを採用するかどうか判断するものですが、一方あなた自身も「この会社に本当に入社すべきか?」と、あなたが会社を見極めるための面接でもあるのです。
このことを頭に入れておくだけで面接に対する緊張も少しほぐれるでしょう。
当然のことですが、有名企業だからといって必ずしもあなたに合っているとは限りませんし、昨今、問題視されている「ブラック企業」である可能性もあります。
少しでも「おや…?」と思う点があれば、心にモヤモヤを残したまま入社して、後から嫌な思いをしないように、しっかり面接官に質問しましょう。
こういった意味からも「良い会社か悪い会社か」をあなたが会社を面接するというわけです。
まとめ~遠慮なく「好きです」と伝えよう
企業には、採用したくない人は採用しなくてよい自由があります。
採用担当者が「なんとなく気に入らない」と感じたら、それだけで「ご縁がありませんでした」と言われてしまうでしょう。
「縁がない」とは「採用しません」の婉曲表現です。
また就職では「相性」や「タイミング」も重要です。
「縁、相性、タイミング」と聞いて、何か思い出しませんか。
そうです恋愛です。
恋愛では、自分の気持ちを相手に伝えることがとても重要です。
そして相手がその気持ちを汲んでくれたら、恋愛が成就します。
就職面接は、恋愛の告白と同じなので、求職者は遠慮なく「御社が好きです」と伝えましょう。
その一生懸命さが採用担当者の心を打つはずです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。