保護者の方は、自分の中学生の子供が荒れたからといって、あわてないでください。
オロオロする必要もありません。
驚かず、冷静に対処してください。
その暴言や暴力や無視は第2反抗期(以下、反抗期)によるものだからです。
その荒れた言動は一定時期が過ぎれば必ずやみます。
そして「この子はもう変わってしまった」とあきらめずに、関与し続けてください。
なぜなら、反抗している子供自身、苦しんでいるからです。
「必ず元の優しいあの子に戻る」と信じて乗り越えてください。
中学生の反抗は想定しておきましょう。
悪に染まったわけではないことを確認する
中学生、または高校生の子供の言動が荒れたら、保護者はまず、反抗期なのか、それとも悪事に手を染めようとしているのかを見極めてください。
もし、飲酒喫煙をしていたり、深夜の繁華街を徘徊したり、自動車やバイクの無免許運転をしたり、保護者への暴力が傷害事件レベルだったりしていたら、それは悪に近付いているので、しかるべき行政機関や警察などに相談して食い止めてください。
そうではなく、保護者や教師などの大人に「うるせー、バカヤロー、死ね、殺すぞ」と言っていたり、人には暴力を振るわずガラス窓を1枚くらい割るだけだったり、家族とまったく口をきかなかったり、喧嘩はしてもいじめをしているわけではなかったりしたら、反抗期による言動である可能性が高いでしょう。
悪による暴言・暴行・無視ではないので、まずは安心してください。
そして冷静かつ愛情深く接してあげてください。
そもそも反抗期とは
文部科学省は反抗期について、次のように解説しています。
○中学生になるこの時期は、思春期に入り、親や友達と異なる自分独自の内面の世界があることに気づきはじめるとともに、自意識と客観的事実との違いに悩み、様々な葛藤の中で、自らの生き方を模索しはじめる時期である。
また、大人との関係よりも、友人関係に自らへの強い意味を見いだす。
さらに、親に対する反抗期を迎えたり、親子のコミュニケーションが不足しがちな時期でもあり、思春期特有の課題が現れる。
また、仲間同士の評価を強く意識する反面、他者との交流に消極的な傾向も見られる。
性意識が高まり、異性への興味関心も高まる時期でもある。
○現在の我が国においては、生徒指導に関する問題行動などが表出しやすいのが、思春期を迎えるこの時期の特徴であり、また、不登校の子どもの割合が大幅に増加する傾向や、さらには、青年期すべてに共通する引きこもりの増加といった傾向などが見られる。
また青年心理学の分野では、反抗期の言動は、
- 性的衝動の活発化
- 両親の理想からの解放欲求
- 自我の発生と自覚
- 分離と孤立
から発生すると考えられています。
そして反抗期は、思春期の終わりとともに解放欲求が減り、保護者や教師などとの関係が中立的かつ平穏になることで終わります(※)。
この2つの見解で注目したいのは、葛藤と性衝動です。
※参考:青年心理学の観点からみた「第二反抗期」 (白井利明)
自分に怒っている
反抗期の言動には破壊的なものも含まれますが、これは悪事からの誘惑で起きているのではありません。
反抗期の子供はいわば、自分に対して怒っているのです。
小学生のときにはみえなかった大人の世界がみえ始めますが、そこに入ることができません。
入りたいのに入れてもらえないこともありますし、入ることを拒否することもあります。
このとき子供の心のなかで葛藤が生まれます。
例えば中学生になると、小学生のころとは比べ物にならないくらい物欲が高まります。
しかし、ゲーム機を買ってもらっても、スマホを買ってもらっても、心は満たされません。
心はかえって不安になります。
大人なら物欲が満たされても心が豊かにならないことを知っているので、動揺することはありませんが。
そして最新のゲーム機や最新のスマホを買ってもらえない子供は、物欲のはけ口がなくなり、反抗のエネルギーになってしまいます。
そして性への目覚めが、さらにエネルギーを増加させます。
性欲を発散できない苛立ちと、性的な妄想をしたことへの自己嫌悪、さらに性的な行動をしてしまったときの罪悪感も生まれます。
これらの負のエネルギーがマグマとなって、問題行動を起こすようになるのです。
とにかく大人が嫌いなのです
反抗期の子供は、とにかく大人が嫌いです。
そして大人はバカだと思っています。
父親に特に強く当たる子供は、父親ほど下らない存在はないと思っています。
母親につらく当たる子供は、母親は何もできない存在だと思っています。
教師に怒りをぶつける中学生は、教師はろくなことを教えないと思っています。
こうした悪感情が生まれる原因は、子供自身の無知や情報のなさ、理解力の低さです。
大人がどれだけ苦労して学校制度や教育システムを構築しているのか、中学生には理解できません。
父親が会社でどれだけつらい思いをして月給を取ってくるのか知りません。
母親の家事がどれほど高度なスキルの上に成り立っているのか知ろうとしません。
教師がどれほど豊かな知見を持ち、その知見を自分が吸収すればどれほど人生を豊かにできるのかについて、想像すらできないでしょう。
反抗期の子供にとって大人は、嫌悪の対象であり、バカな存在なので、いくら暴言を吐いてもいいわけです。
特に親が嫌いです
反抗期の子供は特に親を嫌います。
したがって、親に暴言を吐き続けている子供でも、塾にはしっかり通い、塾講師には従順だったりします。
中学生が親を嫌うのは、同族嫌悪の一面があります。
同族嫌悪とは、自分と同じ種類や同じ系統の人物を攻撃したくなる感情です。
これは、自分のなかにある「嫌いな自分」を、親が持っていることで生じます。
例えば、身長が低いことにコンプレックスを持っている子供が、やはり平均身長より低い親を「恥ずかしい存在」と思うことは、同族嫌悪の現れです。
それで「お前みたいな親は恥ずかしい」といった、心無い一言が簡単に口から吐き出てしまうのです。
では、高学歴でよい会社に勤めている親が反抗期の子供のターゲットにならないかというとそのようなことはありません。
反抗期の子供は、不良やアウトローやラッパーやお笑い芸人といった、人と違うことをして尖っている人こそ、正しい道を歩んでいると考えたがります。
したがって親のエリートという属性すら攻撃の対象となります。
保護者の対処法は
では、子供の反抗が通常レベルを超えたら、保護者はどのように対応したらいいのでしょうか。
いくら悪事から発生した言動でないといっても、暴言や暴力がエスカレートすれば保護者だけでなく他のきょうだいや祖父母たちにも被害が及ぶかもしれません。
保護者の対処法を紹介します。
嫌われても無視されても傷つかない
保護者は、子供から嫌われても無視されても傷つかないでください。
これが基本姿勢となります。
反抗期の子供はモンスターのようですが、本物のモンスターではありません。
「葛藤と性衝動」がモンスターのような言動を引き起こしているのです。
このことを理解しておけば、子供から攻撃を受けても傷つかないで済みます。
保護者が傷ついてしまうと、その子の身の周りに毅然とした態度を取れる人がいなくなってしまいます。
子供から「お前なんか死ね、バカ」と言われても、保護者は「私は死なないし、バカでもない」と言ってください。
毅然と叱る
子供の反抗に傷つかない強い心を持てるようになったら、叱るようにしてください。
そのとき、動機には触れず、行為についてのみ注意するようにしてください。
保護者が子供に「なぜ反抗するのか」と動機を追求しても「関係ねえだろ」で片付けられてしまい、生産的な議論はできません。
そうではなく、例えば子供が暴れて自宅の棚を割ったら、保護者は、法治国家では破壊行為は許されず、それは家庭内でも同じだ、と叱ってください。
その罰として破片を掃除させたり、燃えないゴミの日にそれを出させたり、代わりの棚をホームセンターに行って買わせたりしてください。
無視はしないで関わり続ける
子供から無視されても、保護者は無視し返さないでください。
「べったりコミュニケーション」までは必要ありませんが、最低でも「おはよう」と「おやすみ」は言い続けましょう。
返事がなくても傷つかず、毎朝毎晩言い続けてください。
また、学校のテストでよい点数を取ったり、部活で活躍したりしたら、遠慮なく褒めてください。
「うるせえな」と言われても、「お前を(または、君を)誇りに思う」と言ってあげてください。
「誇りに思う」「愛している」といった言葉は、子供は覚えているものです。
反抗期の終盤になるとこうした言葉を頻繁に思い出すようになり、ありがたい気持ちや嬉しい気持ちが勝るようになり、急に反抗的な態度が消えます。
役割分担「嫌われ役と味方」
例えば、父、母、高3生の姉、反抗期の男子中2生という家族があったとします。
このとき、中2生が、父母に反抗するものの、姉には従順だった場合、父母と姉で対策チームを結成してください。
そして、父母は嫌われ役に徹し、姉は味方に徹してください。
父親が中2生を叱ったら、いい頃合いを見計らって姉が「お父さん、それは言いすぎだよ」と弟を擁護してください。
そうすれば中2生は、姉には何でも話すようになるでしょう。
こうしておけば、例え中2生の反抗がエスカレートしても、軌道を外れることはないでしょう。
「必ず収まる」と信じる
中学生の子供の反抗期が始まったら、保護者は「必ず収まる」と信じて対応してください。
青年心理学の見解をもう一度紹介します。
風邪が休息と風邪薬で治るように、反抗期は子供自身の成長と時間によって必ず終焉を迎えます。
そして、子供が保護者や学校の担任の教師に「信じられない」攻撃を加えても、その子が部活や塾や健全な趣味に没頭していれば、心配する必要はありません。
そのような子供はむしろ、反抗期を終えると驚くほど成長します。
ただその日を迎えるためには、保護者は「傷つかない」「毅然として叱る」「無視しない」「嫌われ役に徹する、または味方に徹する」を徹底する必要があるでしょう。
もし万が一、反抗期のお子さんと向き合う中で自信を失ってしまったら、以下のコラムも参考にしてみてください。
まとめ~制御不能になった感情
反抗期は、制御不能になった感情の暴走です。
例えるなら、錨(いかり)をつなぐ鎖が切れた船が台風のなかを漂っているようなものです。
保護者は自らが錨となって、船をつなぎ止めたり、船が転覆しないように支えたりしなければなりません。
台風が必ずやむように、反抗期も必ず終わります。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。