「一流の人」と「天才」は似ているようで違います。
天才が一流になることもありますが、一流の人がすべて天才というわけではありません。
天才の真似をすることは不可能かもしれませんが、「努力をして一流になった人」の真似なら、誰でもトライすることができます。
そして、努力型の一流の人は、自分がしてきた努力を惜しみなく教えてくれます。
普通の人を自覚している人は、一流の人がやってきた努力を真似ましょう。
学校の試験や模試で普通の点数しか取れていない人は、一流の人が実際に行なった勉強法を真似しましょう。
作家・心理カウンセラー、杉山奈津子さんの勉強法
作家と心理カウンセラーという2つの肩書を持つ杉山奈津子さんには、東大薬学部卒、厚生労働省管轄医療財団勤務といった経歴があります。
一流の人と呼ぶにふさわしい人ですが、普通の人たちが「安心できる」部分もあります。
杉山さんは、地方の進学校ではない高校に通っていて、学年での成績は180人中160番ぐらいでした。
高3のときに受けたセンター試験では、自信があった日本史ですら21点でした。
その成績では入れる大学もなく、杉山さんは浪人します。
ところがそこから努力を重ねて1年後に東大理科二類に合格しました。
東大は「類」ごとに学生を採り、東大生は3年生のときに学部に配属されます。
杉山さんは薬学部に入りました。
杉山さんはまさに努力型の一流の人なので、杉山さんの勉強法は誰でも挑戦できるはずです。
短時間で成果を出す「質×時間」勉強法
普通の高校生・浪人生だった杉山さんは、東大に入って周囲の東大生たちを見て、自分と変わらない「普通の人」と感じたそうです。
しかし、東大生たちには、普通の人たちと違うところがひとつありました。
それは勉強の「効率性」でした。
杉山さんは、頭のよさは、東大に合格する人も、一般の高校生・浪人生も、それほど変わらないと指摘します。
しかし東大に受かる人たちは、勉強をとことん効率化しているのです。
杉山さんは、勉強の質と勉強時間を掛け合わせたものが努力であると考えました。
数式であらわすとこうなります。
一般の高校生や浪人生は「このままではまずい。自分も努力しなければならない」と決意したとき、勉強時間を長くすると思います。
しかし東大に受かる人たちは、100時間勉強しても、やり方が悪かったり、勉強の質が低かったりすれば、結果はついてこないことを知っています。
そのため彼らは、単純に勉強時間だけを増やすことはしません。
杉山さんはこう指摘します。
予習に力を入れ、美しいノートをつくり、真夜中まで勉強しても、リターン(成績向上という成果)は少ない
では、「努力=勉強の質×勉強時間」を最大にして、東大や北大などの難関大学に合格する偏差値を獲得するには、何をしたらよいのでしょうか。
杉山さんは「要領よく勉強しなさい」とアドバイスしています。
「基礎からスタートしない」「漠然と把握する」
杉山さんが編み出した要領のよい勉強法は、次の2点です。
- 基礎からスタートしない(いきなりハイレベル参考書を使う)
- 漠然と把握することを心がける
散々な成績の状態で浪人生活を始めた杉山さんでしたが、基礎レベルの参考書は使いませんでした。
いきなり、ハイレベルの参考書を使って勉強し始めたのです。
なぜなら、ハイレベルの参考書にも、少しは基礎的な内容が書かれてあるからです。
「少しの記述」だけでは、完全には理解できないかもしれませんが、その場合でも、大体理解できたら、次に進んでしまいます。
そして、ハイレベル参考書でも、理解できる部分はあります。
ハイレベル参考書である分野を理解できたら、基礎レベルの参考書を使わずに、ある分野を克服したことになります。
基礎レベルの参考書から始めてしまうと、理解しているところも基礎から学ぶことになり、とても非効率です。
学力が上がっていない状態で、いきなりハイレベル参考書から始めるときのポイントは、「漠然と理解できればよい」という気持ちで勉強することです。
なんとなく理解できたら、正確に理解できているかどうか突き詰めることなく、次に進みます。
このようにして、早い段階でとりあえず1回、ハイレベル参考書を終わらせます。
これで、教科の全体像が見えてきます。
全体像が頭のなかに入っていると、2回目にハイレベル参考書を使って勉強するときに、理解できていない分野の学習がスムーズに進みます。
「基礎レベル参考書1回+ハイレベル参考書1回」も「ハイレベル参考書2回」も、勉強時間はあまり変わりません。
しかし「ハイレベル参考書2回」のほうが、より深く、かつ、より高度に教科を理解することができます。
強い気持ちが必要
杉山さんの「基礎からスタートしない」「漠然と把握する」勉強法は誰でも試すことできそうです。
しかし、この方法を成功させるには、ひとつ重要な資質が必要です。
それは「強い気持ち」です。
学力が低いときからハイレベル参考書を使えば「ちんぷんかんぷん」状態に陥るはずです。
1カ月経っても3カ月経っても「よくわからない」状態が続くでしょう。
このとき「やっぱり自分にはハイレベル参考書は無理」と考えて基礎レベル参考書に手をつけてしまうと、効率性は、最初から基礎レベル参考書を使っていた人より悪化します。
「基礎からスタートしない」「漠然と把握する」勉強法は、一度始めたら貫徹しなければなりません。
そのためには「今わからなくても、いずれ理解できるときがくる」「今は漠然と理解できればそれでいいのだ」と自分に言い聞かせて、進む必要があります。
杉山式「基礎からスタートしない」「漠然と把握する」勉強法は、始めてしばらくは、偏差値はまったく上がらないでしょう。
しかしある地点を突破すると、偏差値は一気に上昇します。
その地点に到達するまで、ひたすら我慢の勉強が続きます。
「自分は一発逆転を狙うタイプではない」と感じている人は、杉山式を採用しないほうがよいでしょう。
杉山式は、長期にわたって勉強をおろそかにしてきて、「それでも有名大学(または有名高校)に入りたい」と強く思った人に向いています。
難関試験を次々合格した、山口真由氏の勉強法
山口真由さんは、東大生のときに司法試験に合格し、4年生のときに国家公務員採用一種試験に合格して東大を首席で卒業し、財務省に入省しました。
その後、財務省を辞めて弁護士事務所で働き、さらにアメリカの超名門大学であるハーバード大学のロースクールを卒業しました。
山口さんは、世の中に「難関」と呼ばれる試験に次々合格した一流の人です。
山口さんの勉強法は「丸暗記ポイントを絞る」方法です。
丸暗記はするものの、最低限にとどめます。
丸暗記ポイントを絞ると学習効率が上がる
勉強の仕方が議論されるとき、丸暗記の是非が問題になります。
暗記力が優れた人は、丸暗記型の勉強が得意です。
丸暗記すれば、考えることなく、尋ねられた質問に答えることができます。
しかし、暗記力に優れた人は少なく、多くの人は丸暗記に苦労します。
それで丸暗記を強要されたことで、勉強全体を嫌いになってしまうこともあります。
また、丸暗記勉強法は、考える力を養いません。
覚えたことをそのまま出しているだけだからです。
つまり丸暗記勉強法では、身につけた知識や情報を応用することができません。
このように丸暗記には、よい面も悪い面もあります。
そこで山口さんは、丸暗記する項目を最小限に絞ることで、丸暗記のよい面を最大限に生かし、丸暗記の悪い面を排除しました。
日本史の勉強を例に取り、山口式勉強法を解説します。
上記の42個のマスは、日本史のある分野で学ぶ項目です。
この42項目をすべて理解したとき、この分野の試験問題で満点を取ることができます。
マスの色分けについてはあとで解説します。
すなわち、42項目をすべて丸暗記すれば満点を取ることができますが、それを実施するには莫大な労力が必要になります。
しかし実際の試験では、すべてを丸暗記する必要はありません。
いくつかの項目さえ丸暗記すれば、あとは「つながり」を把握することで42項目すべて理解できます。
上記の概念図のうち、黄色い9項目を理解すれば、あとは「つながり」を把握することで、残りの青い33項目は自然と理解できてしまうのです。
山口式「丸暗記ポイント絞り込み」勉強法のポイント
山口式「丸暗記ポイント絞り込み」勉強法のポイントは、丸暗記する項目と、「つながり」で理解する項目を、厳格にわけることです。
「ここはさすがに丸暗記しなければならない」と決めた部分は、徹底的に丸暗記します。
しかし、丸暗記する項目は最小限にとどめ、それ以外の項目については、できるだけ「つながり」で理解するようにします。
杉山式と山口式を合体させよう
ここまで、次の2つの勉強法をみてきました。
- 杉山式「基礎からスタートしない」「漠然と把握する」勉強法
- 山口式「丸暗記ポイント絞り込み」勉強法
一流の人が開発した勉強法なので、このまま「完コピ」してもよいのですが、それでは一流の人を追い越すことはできません。
そこで、杉山式勉強法と山口式勉強法を合体させ、それに取り組めば、「一流×一流」になるので「超一流」になれるかもしれません。
山口式「丸暗記ポイント絞り込み」勉強法は、丸暗記する項目と「つながり」で理解する項目を厳格にわける方法でした。
そこで、杉山式でハイレベル参考書を漠然と把握しながら勉強するときに、同時に「丸暗記項目」と「つながり項目」をわけてしまってはいかがでしょうか。
ハイレベル参考書を読みながら、「丸暗記すべき項目」をチェックして、さらにノートに書き出します。
そして、ハイレベル参考書の2回目の勉強のときに、丸暗記項目を丸暗記してしまうのです。
さらに、丸暗記項目にしなかった項目は、徹底して「つながり」を学習します。
「つながり」の学習は記憶力を使わずに理解ができるので、楽しい勉強になるはずです。
「絞りに絞った最小限の丸暗記項目だけ丸暗記すればよい」と思いながら勉強するので、丸暗記への嫌悪感を軽減できます。
まとめ~真似たら工夫を忘れずに
一流と呼ばれている人たちは、恐らく、気がついたら一流と呼ばれていたのだと思います。
今、一流と呼ばれている人たちも、努力を開始したスタート地点では、普通の人だったはずです。
一流の人に憧れ、「どうしたらああいうふうになれるのか」と思い、懸命に努力したのです。
「一流になれる人」など存在せず、「一流になるための努力をした人」が一流の人になります。
一流の人が教えてくれる勉強を真似て、その真似がうまくいき始めたら、工夫してみましょう。
工夫がうまくいかなかったら、また一流の人の勉強法を真似ましょう。
それを繰り返しているうちに「なんだか最近、成績がメキメキ上昇している」というゾーンに入るはずです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。