高卒で社会人になった方は、さまざまなシーンで「大卒者との差」を感じているのではないでしょうか。
最もわかりやすい差は、会社の給料です。
多くの企業が、大卒の給与体系と高卒の給与体系を別につくっています。
その差は大きく、高卒者が大卒者より多く給料をもらうには、3倍働いて2倍の結果を出さなければならないイメージです。
最近の大学は、社会人に門戸を開いています。
社会人が大学に入り、卒業すれば、晴れて大卒者になることができます。
ただ、いわゆる「高卒コンプレックス」を解消するためだけに社会人が大学に入るのは、おすすめできません。
それだけで大学に入って卒業しても、得られるものは少ないでしょう。
社会人による大学受験は、業務につながる勉強をしたい人や、起業に必要な知識を得たい人におすすめできます。
この記事では、社会人が大学に行く意義を考えてみます。
さらに、社会人が道内の大学を受験する方法も紹介します。
「大卒の資格だけ」が目的ならおすすめできない
社会人が大学に入る意義を解説する前に、もし社会人入学を目指す目的が「大卒の資格を獲得することだけ」なら受験をおすすめしない理由を紹介します。
高卒社会人のなかには、自分のほうが確実に仕事ができるのに、仕事ができない大卒者のほうが早く昇格したり、より多く給料をもらったりしていることに、不満を持っている人がいると思います。
しかしその状況は、高卒社会人が今から大学に入って卒業しただけでは変えられないでしょう。
企業は、順当に大学を卒業した人を有利に扱う傾向が強いからです。
高校を卒業してしばらく社会人経験を積み、そこから大学に入って卒業した「だけの」人を、企業はあまり高く評価しません。
また、高卒社会人が大学を卒業しても、高卒コンプレックスは解消できないでしょう。
なぜなら世間では、「普通の大卒者」と「高卒社会人からの大卒者」を区別してみているからです。
この区別は正しいとはいえませんが、厳然たる事実として日本の社会のなかに存在します。
また「大卒の資格だけ」を目的にして大学に入っても、コストに見合わないと思います。
社会人が大学に入るには、さまざまなコストが必要になります。
勉強コスト、時間コスト、教育費コスト、仕事に支障が出るコスト…これらのコストはとても高額なので、簡単には元を取ることはできません。
では、高卒社会人が大学に行くメリットはないのかというと、そのようなことはありません。
もし高卒社会人が、「現状の仕事環境ではスキルアップに限界がある」「専門知識のなさを痛感している」「実力が足りない」と感じていたら、大学にその解決法があるかもしれません。
「大学教育の本質」が必要になった社会人が大学に入れば、現状を変えるヒントを見つけられるはずです。
社会人が大学で学び直す意義
どのような社会人が、どのような目的を持っているとき、大学で学び直す意義が生まれるのでしょうか。
小樽商大ビジネススクールで社会人が学び直す意義
小樽商大には「アントレプレナーシップ専攻」という部門を用意して、社会人を受け入れています。
この専攻は「小樽商大ビジネススクール、OBS」と呼ばれることもあります。
OBSが社会人に教えることは明快です。
起業、経営、新規事業開発、組織改革に携わりたいと考えている人に、その大仕事に必要な知識を与えてくれます。
OBSの卒業者のAさんは、OBSで学んだことが「ダイレクトにビジネスの現場で活かされている」と述べています。
Aさんは、起業して半年ほど経過して、自分が決算書をきちんと読めないことに愕然としました。
起業とは、会社員を辞めて自ら株式会社などを設立することです。
決算書とは、会社の売上や経費や利益や借金やお金の流れがわかる資料のことです。
Aさんは「このままでは会社経営がおぼつかない」と思い、OBSに入学しました。
Aさんはこのとき、会社を潰さないようにするにはOBSで経営を学び直すしかない、と考えたわけです。
AさんはOBSで、決算書を読むために必要な「減価償却費」や「キャッシュフロー計算書」などの知識を吸収しました。
さらに、戦略的ファイナンス、マーケティング、企業戦略、組織の在り方、財務管理の方法、事業計画のつくり方について学びました。
経営を丸ごと学ぶことができた結果、Aさんはその後、会社を大きくすることができました。
OBSは短大や高等専門学校、専門学校を出ていないと受験資格を得られません。
高卒では入ることができません。
そこで小樽商大は、高卒社会人のために「夜間主コース」に社会人枠を設けていて、毎年10名ほど募集しています。
夜間主コースは、講義が17:45~22:55の時間帯に開かれます。
職場の協力が得られれば、なんとか通うことができます。
夜間主コースには経済学科、商学科、企業法学科、社会情報学科が用意されていて、このすべてを学ぶことができます。
小樽商大は、OBSと夜間主コースの2つのコースで、現役バリバリのビジネスパーソンをしっかりサポートしてくれます。
北大の公共政策大学院は高卒者でも入学可能
北大には公共政策大学院(HOPS)という部門があり、ここは高卒者でも入学することができます。
HOPSでは「政策」をつくるスキルを身につけることができます。
政策は、一般的には、政治家や官僚がつくる政治上の方針や手段、と理解されていますが、HOPSはその考えに一石を投じようとしています。
HOPSは「政策が、一部の行政エリートだけのものである時代は終わった」と断言しています。
では、現代の政策はどのようにあるべきなのかというと、自治体職員が政策提起能力を養い、地域の課題を解決するアイデアを政策に盛り込まなければなりません。
また、現代の政策は、民間企業の提起も重要です。
HOPSには「公共経営コース」「国際政策コース」「技術政策コース」があります。
そしてHOPSの教員には、中央省庁や政府機関で活躍している「各界の第一線の実務家」が多く就いています。
札幌市内でベーシックな知識を身につけるなら北海学園大
「大学で学び直したい」と考える社会人は、道内のビジネス集積地である札幌に多くいるはずです。
札幌で働いているビジネスパーソンが小樽商大に入学すると、毎日小樽まで通わなければならず、それでは仕事に支障が出かねません。
また、北大の公共政策大学院(HOPS)は、「政策」というかなりレアな内容を学ぶ場なので、一般の社会人のニーズに合わないことが多いでしょう。
そこで、札幌で、ビジネスのベーシックな知識を得たいと考える人には、北海学園大の「社会人特別入試」をおすすめします。
社会人枠ではありますが、受験資格と入試以外、普通の大学生とまったく同じ内容になっています。
高卒社会人なら挑戦できます。
ここで学べるのは、経済、地域経済、経営学、経営情報学、法律、政治、日本文化、英米文化です。
社会人特別入試の受験資格は学部や学科によって異なり、「入学時に19歳以上に達し、半年以上の就業経験がある人」や「入学時に23歳以上に達し、正社員や契約社員などの社会経験が3年以上ある人」「入学後も仕事をしながら大学で学ぶことが確約できる人」となっています。
そして高卒社会人に「嬉しい」のが、入試(選考方法)が簡便なことです。
原則、書類審査と面接だけです。
英語や数学といった筆記試験は行ないません。
書類審査に必要な書類は、願書、調査書、志願理由書、経歴書などです。
この受験資格と選考方法から、北海学園大が、「大学の知見を本当に必要としている高卒社会人をサポートしたい」と考えていることがわかります。
社会人が大学で学び直す方法
すでに一部紹介済みですが、あらためて社会人が大学で学び直す方法について解説します。
小樽商大と北海学園大は入試の負担が小さい
北海学園大の「社会人特別入試」は、先ほど紹介したとおり、書類審査と面接で合否が決まります。
小樽商大も「夜間主コース」の「社会人入試」は、推薦書、志願理由書、面接、小論文だけで合否判定します。
センター試験も2次試験も受ける必要はありません。
しかも小樽商大の場合、資格やビジネス実績があると合格に有利になります。
つまり、一生懸命働いている人ほど、合格しやすくなるわけです。
北大HOPSはハードルが高い
北大の公共政策大学院(HOPS)は高卒者でも受験資格がありますが、そのハードルはとても高くなっています。
学修を示す書類として、TOEFLなどの英語能力に関する試験の成績や、国家国務院採用試験一種の合格実績、国家資格などが必要です。
また、志願理由書は4,000字も書かなければなりません。
北大には、その他の学部にも社会人枠が用意されていますが、そのほとんどは、大学を卒業した社会人向けです。
まとめ~「実質」を「強く」求める人でないと厳しい
「やっぱり大学を出ておけばよかった」と考える人が少なくないのは、日本が学歴社会だからです。
大卒者は明確に優遇されています。
しかし、ビジネスの「上のほう」では、ほとんどは実力主義になっています。
高卒社長はたくさんいます。
そのため、すでに社会人として活躍しているのに、「大卒という称号がほしいだけ」で高卒者が大学を目指すことは、あまりメリットがないでしょう。
社会人が大学に通うには、多額のコストと多くの犠牲が必要になるので、目的が小さいと割に合いません。
「実質」を「強く」求める人は、大学でしか「それ」を得ることはできません。
仕事の支障を乗り越えて、業務と勉学を両立すれば、大学を卒業したときに新しい武器を持つことができるはずです。
大学に入りたいから大学を目指すのではなく、「大学に行くしかない」と思えたときに大学を目指してください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。