日々の生活に欠くことができない存在が電気や電子、そして機械です。
人々のより高まるニーズに応えるべく、新技術の導入や工夫を凝らした設計をする仕事があります。
鉄道や航空機といった大きなものからスマホやタブレットといった小さな端末、電子機器まで設計、開発するのが電子・機械系の学科を卒業した技術者です。
そこで今回は、電子・機械系の職に就くために具体的にどのような学科を目指したら良いのか、さらに入学後に取得したい資格、多い就職先などを解説していきます。
電子・機械系の仕事に就くなら学部or院卒が必要
電気や電子・機械系の職に就きたい場合、大学を出て専門知識を得るのが現実的に考えると必要です。
特に電子・機械系の職業は半導体などの緻密な電気部品を組み合わせて時代のニーズに即した新製品を開発したり、既存の部品では実現できない製品を構築するために新たな素材を作り上げたり、非常に専門的で高度な知識、技術が必要です。
実際には研究者よりも、民間や公的機関に入って開発に従事することが多いです。
その場合も、学部ばかりではなく大学院まで進んで研鑽を積み、就職をするケースがまたかなりあります。
文系では稀な院進がポピュラー
文系では弁護士など法律家になることを目指して法科大学院に進学したり、それこそ教授など研究者になるために修士・博士課程に進んだりする場合を除いて、大多数の人は院進せずに就職します。
さらにいうと文系では民間就職を考えた場合、大学院に進めばそれだけアドバンテージになるどころか単に回り道になるケースが多いです。
企業としても学部の新卒のほうが欲しく、なぜ院に進学したのか見出せない人に魅力を感じづらいです。
たまに存在するのが最終学歴を上げたいがために院に行くケースです。
これが無意味どころかデメリットになりやすいのが文系の院進学です。
一方で、上述のように電子・機械系技術者になることを目標としている場合、より専門的で高度な知識を身に付けるための大学院進学は、就職の際にも大きなアドバンテージになります。
電子・機械系の仕事に就くための学部・学科
電子・機械系の職に就くための専門的知識が学べる学部・学科を設置する大学は、全国に数多くあります。
理系のある大学であれば、大抵は設置しているといって過言ではありません。
学部的には工学部や理工学部ということになります。
学科のネーミング的には、電子工学科、機械工学科、電気工学科、電子機械工学科などがあります。
大学間で異なる学科名でも、その実、似たようなことが学べるケースも珍しくありません。
ただし、大学内では似た名前の学科を設置していても、相互に関連しつつもまた違った学びができる例があります。
大学内での似た学科名の例(日本大学理工学部)
たとえば、日本大学では理工学部に機械工学科と精密機械工学科という似た名前の2つの学科が置かれています。
それぞれの学科の特徴を以下にみていきます。
機械工学科
機械工学というのは、社会のニーズに応じて必要な製品を開発する学問だと一般的に知られています。
特に製品というと、自動車やマシン、工場機械がイメージされます。
しかし日大の機械工学科は、より広いアプローチで開発を捉え、その研究材料を提供しています(※)。
具体的には、医療機器や食品・介助器具、電車、船、家電、空調など様々です。
さらに開発に必須の5系統が研究対象として設定され、各研究室が割り振られています。
5系統とは、機械力学・制御系、材料工学系、加工系、熱工学系、流体工学系です。
学部生は1~3年次まで基礎学力の養成にあたり、4年次で研究室に配属されて本格的な卒業研究を開始します。
そこから研究を深彫りするために、大学院に進学する人も多いです。
平成30年度の実績では、162名中29名が、同大学の大学院機械工学専攻に進学しています(※)。
※参考:卒業/修了後の進路
精密機械工学科
精密機械工学科は、機械をより正確に動かすことに特化した学びが展開されています(※)。
それこそ、機械を正確に動かすことは、社会のニーズに応えることにつながります。
精密機械工学科のHPでは、学生の開発したロボットが動く様子がダイナミックな動画で公開されています。
※参考:日本大学理工学部 精密機械工学科
医療機器は、正確な動作が人命に関わります。
体内で施術を行うマイクロマシンを考えれば分かります。
他にも、災害の現場で活躍するレスキューロボット、飛行機、自動車などの開発に必要な技術が学べます。
■3分野から広角的なアプローチ
このような正確性が重視される精密機器の研究開発を行う過程で、電気・電子分野、機械分野、情報分野といった3方向のアプローチで幅広い知識の習得が叶います。
特に製品を開発するだけではなく、それを制御する技術も現代社会では強く求められています。
情報分野ではそのためのプログラミングが実践されます。
ロボット工房、ロボティクスソサエティ、マイクロ機能デバイス研究センターといった関連施設を備えて、座学だけではない主体的な学習ができるのも魅力です。
2018年度の実績では、26.4%が進学、就職(電気機械製造業13.1%、一般機械製造業10.2%)となっています(※)。
※参考:進路の傾向
北海道にある電子・機械系の大学
電子・機械系の学科がある大学は、全国に存在します。
北海道科学大学
北海道では、北海道科学大学が開学から工学系を基本としていることで有名です(※)。
※参考:北海道科学大学
■機械工学科
機械工学科では、自動車、農業機械、航空機、ロボット、環境・エネルギーといった各分野について実学中心のカリキュラムが提供されています(※)。
※参考:北海道科学大学機械工学科
それぞれの分野について履修モデルが公表されています。
たとえば自動車なら、図学・製図(CAD)、機械力学、機械加工、材料工学、環境・エネルギー系です。
■電子工学科
電子工学科では、電気エネルギーと電子機器の研究開発を基礎として社会に貢献できる人材の育成を図っています(※)。
※参考:北海道科学大学電子工学科
電気エネルギーの分野では、再生可能エネルギーを始めとする電力システム、電力応用を学びます。
電子系では話題の人工知能(AI)やセンサー技術(loT)を実践的に学びます。
どちらかの系統を選択するのではなく、社会で力を発揮するには両方の分野に精通している必要があるということで、横断的な学びが展開されます。
北海道科学大学以外
北海道において、電子・機械系の学びができる大学としては他に以下が挙げられます。
- 北海道大学工学部
- 公立はこだて未来大学システム情報科学部
- 北海道職業能力開発大学校生産技術科電気エネルギー制御科
- 北見工業大学工学部
- 室蘭工業大学理工学部
電子・機械系学科の卒業後の仕事
電子・機械系の学科を出た場合の職業は、広義にはエンジニアに分類されることが大半です。
それこそ研究者や技術者としてより省エネでエコな機械、電子構造を発見していくだけではなくて、修理やメンテナンスも行います。
特に施工現場でチーム全体の指揮、監督をするとともに、自らも参加して専門家の立場から漏れのない作業を行います。
北海道科学大学の例
先に挙げた北海道科学大学を参考にします。
機械工学科
機械工学科では、卒業生の主な職業として以下のものが掲載されています。
- 機械設計エンジニア
- 自動車関連エンジニア
- 航空機関連エンジニア
- ロボティクスエンジニア
- 鉄道車両関連エンジニア
など比較的に大型のもののエンジニアが多く挙げられています。
電気電子工学科
一方で、電気電子工学科をみてみます。
- 電力設備設計エンジニア
- エネルギープラントエンジニア
- 組み込みシステム開発エンジニア
- 携帯機器・タブレット端末エンジニア
- 医療機器開発エンジニア
こちらは電力設備や電気エネルギーなどより俯瞰的なフローを担当するエンジニアが特徴です。
もちろん、電子系の職業としても、タブレットや医療機器といった精密ICを複雑に関連させるエンジニアがみられます。
就職先
■民間
このように、大学や大学院で学んだ専門的知識や技術を生かせる特定分野のエンジニアになる人がよくいます。
所属としては、大手企業から地元企業まで様々です(※)。
シチズン時計マニュファクチャリング株式会社、株式会社富士通ゼネラル、戸田建設株式会社、日立造船株式会社、北海道旅客鉄道株式会社、札幌ボデー工業株式会社、株式会社ネクスコ、メンテナンス北海道
※参考:北海道科学大学 工学部 機械工学科・電気電子工学科 就職先一覧
■公務員
公務員として技術職に就くケースもあります。
たとえば国家公務員一般職では、電気電子情報(情報系)という技術系分野の試験区分が設けられています。
実際に人事院には、電気電子工学科を出て、内閣衛星情報センターに勤務している例が紹介されています(※)。
※参考:人事院 内閣衛星情報センター
内閣衛星情報センターでの情報系の仕事内容は、その名のとおり、衛星開発に向けて最新の情報を取得したり、他のメンバーと開発の方向性をディスカッションしたりします。
電子・機械系学科では資格を取る人が多い
電気・機械系の学科においては、在学中に、ないし大学で学んだことを生かして卒業後に資格を取るケースがよくあります。
たとえば北海道科学大学の電気電子工学科HPにおいては、「全員が資格を持って卒業すること」を学科の目標として掲げています。
電気主任技術者
電気系の資格としては、電気主任技術者が有名です。
企業ビルや発電所、製造工場における電気設備の保安を司ることができる国家資格です。
電気主任技術者は、設置者が電気設備を運用、メンテナンスをしていくにあたって、保安の関係上、必ず存在しなければならないと法令で定められています。
そのため、社会的な需要が普遍的に高いです。
この資格は、認定校(ex. 北海道科学大学、北海道大学、日本大学など 参考:経済産業省 電気主任技術者認定校一覧(第1種) )において指定科目の単位を得ていれば、実務に出て一定の経験を積むだけ取得できます(※)。
※参考:一般財団法人電気技術者試験センター 電気主任技術者の資格取得フロー
特別の試験を受けずに国家資格を取れるのが魅力です。
機械設計技術者
機械系の学科だと、機械設計技術者試験の人気が高いです。
これは、日本機械設計工業会が主宰しているもので、国家資格ではありません。
しかし、3級の試験が大学在学中に受験可能なのが魅力です。
機械系の学科を出た方は、民間であれ公的機関であれ、エンジニア系の職に就くのが多いのは既に紹介したとおりです。
日々発展を続ける機械産業において、その性能やコスパの側面は、大きく機械設計者の手に委ねられています。
その能力を一般的に担保される基準で認定しようというのが、機械設計技術者試験のコンセプトです。
3級取得で就職に有利に働く
つまるところ、在学中に機械設計技術者試験の3級に受かっておくことで、就職に有利に働くことが期待できます。
授業で学んだことをしっかりと自分のものにしていることが証明されるからです。
もし仮に受からなかったとしても、試験勉強の内容は機械系学科の内容と密接に関連し、就職後においても役立つ知識です。
大学が資格取得を応援
上記のような資格取得について、電気・機械系の学科では大学を挙げて推奨しています。
先ほどから挙げている北海道科学大学では授業内外でのフォローアップをしています。
この例は当然、北海道科学大学に限ったことではありません。
たとえば福山大学では機械システム工学科に所属する5名が上記機械設計技術者試験3級に受かったことを、その公式ブログで発表しています(※)。
みなさん合格の賞状を嬉しそうな笑顔で持たれています。
この福山大学でももちろん、「機械設計技術者試験対策講座」という資格所得に特化した授業を行っています。
電子・機械系学科で目指せる資格はたくさん
上記で挙げた資格以外にも、エネルギー管理士〔国〕やCAD利用技術者試験〈コンピュータソフトウェア協会〉、ITパスポート試験〔国〕電気工事施工管理技士〔国〕エネルギー管理士〔国〕など様々なものがあり、実際に電気・機械系学科の方が取得を目指しています。
もちろんなんでも取れば良いというものではなく、自身の専門領域や将来の展望に照らして、有意と思われる資格の取得を目指していくことが必要です。
電子・機械系の仕事についてまとめ
将来的に電子や電気・機械系の仕事に就きたい場合、大学で専門的な知識を学んでおく必要があります。
機械工学科や電子工学科、電気電子工学科など、色々な名前で全国的に電子・機械系の学科が設置されています。
大学のHPなどを参考に、どの大学のどの学科が自分の将来的なビジョンに照らして有意義な学びができるのか、しっかりと把握しておくことが大事です。
特に電子・機械系の学科では、資格取得を支援してくれる例が多いです。
大学院まで進む人も多く、それだけ長い学生生活のなかで1つでも資格を取っておくと、就活や就職後の仕事において、実際的に役立ちます。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。