今回は「子どもを算数好き」にさせる方法やコツについてをまとめています。
小学生のうちは文系理系の得意があまり顕著に現れないためどの教科も努力次第で得意にすることが可能です。
実際に筆者も小学生の頃はどちらかと言うと理科や算数が得意でしたが、現在は英語が得意なので教えています。
小学生の頃に数に対して苦手意識を抱いてしまうと中学校や高校に進学してからもその影響を引きずることになりますので、小学生低学年のうちに得意になるような働きかけが大切です。
日本人の小学生は算数が得意!?
IEA(国際教育到達度評価学会:国際機関)が実施しているTIMSS調査では世界中の子どもを対象に理系教科の習熟度を調査しています。
日本もTIMSS調査を実施しており国際的な日本の子どもの立ち位置が分かるようになっています。
TIMSS調査から読み取る小学生の算数力
TIMSS調査は4年ごとに実施されており、2019年執筆時点での最新情報は2015年のものとなっています。
TIMSS調査は日本では小学4年生と中学2年生を対象に算数(数学)と理科で実施されます。
2015年のTIMSS調査では小学四年生の算数の成績で49カ国中5位という好成績を残しました。
TIMSS調査が開始されて以来、算数の成績は毎回有意に上昇しており日本の算数力は年を重ねるごとに良い方向へ向かっているかと思われます。
一方で順位は下降していますが、こちらに関しては回を重ねるごとに加盟国が増えていった事に原因があります。
成績は上昇していますので今回は考慮していません。
なおTIMSSの平均点は日本で593点となっていますが、TIMSS調査には満点が存在しません。
500点を平均点として偏差値化しているので、593点という成績は平均点より93点分優れているといった見方がよろしいかと思います。
一方で算数が好きな小学生は比較的少ない
TIMSSでは学力調査にとどまらず、受験者の学習意識に関するアンケートも同時に行っています。
TIMSS2015のアンケート調査結果によると「算数が楽しい」という質問に対して「はい」と回答した小学生の割合は75%であると報告されています。
この数値に関してどのような感想を持つかは本記事を読んでいる皆さんの主観に委ねられますが、この質問に「はい」と答えた生徒の割合を国際平均を見てみましょう。
「算数が楽しい」と答えた小学生の割合は国際平均で85%と日本の数値よりも10ポイント高くなっています。
日本では40人クラスの場合、10人は算数が嫌いだという生徒がいるという事です。
国際平均では40人クラスの場合6人が算数が嫌いだという結果を踏まえると結構な差がある事が伺えます。
計算は得意だが問題文を読み取ることは苦手
また日本人小学生の特徴として問題文自体の読解力が足りないという結果が分かっています。
読解力に関する国際調査としてPISA2018が参考になりますのでご紹介します。
文部科学省の発表によるとPISA調査のポイントとして読解力に課題があるとしています。
その内容は「テキストから内容を探し出す」「自身の考えを他人に伝える」「情報を評価する」などの評価が低いことが分かっています。
算数に転用すると「問題文を読み取ることが出来ない」「問題文で問われている事を適切に考えることが出来ない」「図形を読み取り推測することが出来ない」等が考えられるのではないでしょうか。
すなわち、計算能力やルーチンワークなどが得意である事に対して思考力を問うような問題は苦手であるという事が分かります。
算数が嫌いになるポイント
私が塾で指導していた小学生に算数が嫌いな理由を聞いてみた所、以下の3点が特に多い回答であることが分かりました。
算数は目に見えない「数」を数字や物体というイメージ(具体物)として考える学問であるため、子どもには以下のような箇所で躓く傾向にあります。
10進法(繰り上がり)が理解できない
数のかぞえ方の単元で躓く原因となるのが10進法です。
10進法とは数字が1,2,3 …と続き9の次に位が上がる(10になる)という数え方ですが、この繰り上がりに難色を示す子どもが大変多かったです。
例えばミカンであれば10個であろうが4個であろうが横並びに並べてしまえばそれを一纏まりとして捉える事が出来ますが、数字の世界では10個で1つの単位となるため、例えば12個であれば10個の纏まりと2個の纏まりに分けなくてはいけません。
数え方のルールで制約のある数字の世界と、自分の好きなようにまとまりを作ることの出来る実物とのギャップに子どもは困惑するようです。
関連的に足し算や引き算も繰り上がり・下がりが交じってくる辺りで嫌になる子も少なく有りません。
割り算や掛け算の考え方が分からない
掛け算は学校では九九として語呂で覚えるため、一度暗記してしまえば大した問題にはなりません。
しかし九九の範疇を超える計算について課題を持つ子が多いようです。
12×5等の問題は「九九で習ってない!」と投げ出す子が多いようです。
習っていないこと以外は出来ないと考えてしまうようです。
割り算も同様に何が起こっているか全くわからないという状態になり、手をつけられなくなる・イライラしてしまうという事になってしまいます。
ある長さのテープを○等分する等の問題も数の考え方が成っていないと大変な難問となります。
立体的な図形が分からない
立体的な図形を目にして算数を投げ出す子どもも多かったです。
面積も同様でなぜ「タテ×ヨコ=面積」になるのかを理解できない子が多いようです。
こちらも抽象的な数字と具体的な実物を別物と捉えている子どもが多いという事が理由であると推測しています。
算数が苦手な子どもは目の前の数字だけを見て、その問題に含まれる背景事情を理解していない事が多数です。
思考力が日本人の課題となっていますが、図形を脳内に再現し処理する事は子どもには大変な作業ですが、それを乗り越えることで以降の算数学習が格段に楽なものとなります。
算数教育のやっていい事と悪いこと
家庭で算数を教える際に注意したい点を以下に示しています。
積極的に行うべきことと、行うべきでは無いこと、それに加えて指導に際して注意したい点についても述べています。
算数は具体物で楽しく
算数で扱う数字は抽象的なもので、それを理解するという事は子どもにとって難しい事です。
そのため数を楽しく身につける手立てが必要となります。
小学校低学年の子どもにお勧めの知育玩具がありますのでご紹介します。
モンテッソーリの金ビーズ というアイテムで10進法をマスターしましょう。
金ビーズは10ピースで1本の棒になるものが100本まとまっている商品です。
10ピースで1本なので例えば15という数を表そうとすれば金ビーズの棒が1本と5このビーズで表すことになります。
この特性を利用して繰り上がりについてを感覚的に身につける事が出来ます。
また繰り上がり・下がりのある計算や掛け算を理解する際にも金ビーズは長く使用することが出来ますので、高価なものですが購入して損はありません。
また数が具体物として捉えられるようになってくると、以降の算数の学習もスムーズに進みます。
算数は目の前の現象を記号化したに過ぎないという事を意識しましょう。
子どもに分かってもらうこと
子どもには以下の事を分かってもらうようにアプローチを行う必要があります。
現在の小学生が抱えている問題に沿った方針です。
単に問題をこなすだけではなく「なぜそのような考えに至るのか」という思考の側面を手厚くサポートすると算数は習熟が高いでしょう。
数字や記号の意味を理解することが出来る
文字で説明するには少しむずかしいのですが、例えば “3” という数字を見て「ミカン3個」「イヌ3匹」など何かが3つ存在しているという事を理解する必要があります。
大人にとっては当たり前の事のように思えますが、子どもはその知識から習得しなければなりません。
問題文を理解して式を作る事が出来る
国語力にも繋がる部分ではありますが「長い問題文を短く要約して、何を聞かれているのか」についてをまとめる能力も身に着けなければなりません。
以上の問題文から考えるべき事は1ダースが12本である事、その12本のまとまりを5セット購入した事です。
算数が苦手な子は計算式を5×1や12×1とする場合もあります。
この指導の際には具体物(鉛筆に見立てた箸やペンなど)も併用して図解してあげるとスムーズです。
与えられた式の計算方法を考えることが出来る
こちらに関してはスムーズです。
いわゆる計算の習熟に対するもので、正しく計算が出来ているかを確認しましょう。
つまづきポイントとしては掛け算・割り算を先に済ませているかが多いですが、単なるルールとして決められているものなので飲み込みは早いでしょう。
公式は絶対に教えてはいけない
理系出身の保護者の方に多いのが「公式から教えてしまう事」です。
公式は大変便利ですが、同時に子どもの思考力を奪う原因ともなります。
そもそも公式は「数学の原理を簡略化したもの」であり根本的な理論を身に着けていないといけません。
まずは子どもの想像力を育むことに努めましょう。
さいごに
算数は一度学ぶと人生の終わりまで長く付き合うことになります。
中学生や高校生レベルの数学的知識を利用する機会は日常生活の場にはそうありませんが、小学校で身につける算数の知識を活用しなければいけない場面は数多く散りばめられています。
算数が嫌いにならないように保護者の方も支援を行ってあげましょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。