大学受験では入試を受ける大学に願書を郵送します。
そのとき証明写真として顔写真を専用用紙に貼り付けます。
証明写真を用意するとき、次の4点に注意してください。
- 服装はしっかり
- 髪型とメイクは控えめに
- 写真スタジオで撮影を
- 表情はつくりすぎずに
どれも重要なので、詳しく解説します。
そして、証明写真が合否に影響を与えることはありませんが、それでもこだわったほうがよい理由もあわせて紹介します。
注意点1:服装はしっかり
大学入試の願書用の証明写真を撮るときは、学生服をしっかり着込みましょう。
クリーニングしたてのものを崩さず着てください。
浪人生も、箪笥のなかから学生服を取り出して、それを着て写真を撮りましょう。
制服のない高校の生徒は、男子はワイシャツにネクタイをしめてジャケットを着てください。
女子もワイシャツ+レディースネクタイ+ジャケットがおすすめです。
わざわざクリーニングした制服やジャケットやワイシャツを着こむ必要があるのか、と思われる人もいると思います。
クリーニングのシャキッとした感じが写真に写り込むのか、と疑問に思う人もいるでしょう。
証明写真は横3センチ、縦4センチほどの小さなものですが、しっかりとシャキッと感が出ます。
証明写真だけで、だらしない人なのか、身なりが整っている人なのかがわかります。
受験生から送られてくる願書を整理している大学の職員たちは、毎年「千枚単位」「万枚単位」で高校生たちの証明写真を見ているので、証明写真の微妙な違いを見分けることができます。
では、よれよれのTシャツを着た証明写真が拒否されるのかというと、そのようなことはありません。
それでもしっかりした服装で撮ることの意義は、あとで説明します。
注意点2:髪型とメイクは控えめに
普段から派手な髪形やメイクをしている受験生は、証明写真を撮るときは控えめにしましょう。
髪型を整えることは大切で、ぼさぼさの頭では印象が悪くなります。
しかし、決めすぎている髪型もよい印象は与えません。
そして、染めて茶髪にしている人は、証明写真を撮るときは黒髪に戻したほうがいいかもしれません。
その自己主張が、受験によい影響を与えることはないからです。
メイクについては、普段からしていない人は、写真撮影のときにわざわざする必要はありません。
普段からメイクをしている人も、そこまでこだわりがなければノーメイクでよいでしょう。
しかし、「見た目をよくしたい」という強いこだわりがあるのであれば、証明写真を撮るときは、ナチュラルメイクくらいにとどめましょう。
注意点3:写真スタジオで撮影を
証明写真を撮る場所は街の写真スタジオがおすすめです。
証明写真では、写真のなかの顔の大きさや、頭のてっぺんと写真の上端の距離まで指定されることがあります。
写真スタジオなら、その指示通りの写真を撮ってくれます。
最近はインスタントの証明写真ボックスの品質も向上していて、写真スタジオ並みのクオリティで撮れることもあります。
しかしやはり、写真スタジオのプロの写真家に撮ってもらったほうが無難です。
値段も、写真スタジオと証明写真ボックスであまり差がありません。
そして何より、受験用の証明写真は一生に何度も撮るものではありません。
それならば、よりよいものを選びましょう。
注意点4:表情はつくりすぎずに
証明写真を笑顔にしたほうがよいのかどうかは、意見がわかれるところです。
無難なのは「真面目顔」です。
笑っても怒ってもいない無の表情です。
しかし最近は、少し口角(口のはし)あげた「ややスマイル顔」も、証明写真として認められつつあります。
笑顔はよい印象を与えるので、魅力的です。
ややスマイル顔を証明写真に使われるようになったのは、アメリカの影響を受けていると思われます。
アメリカの証明写真は、やや斜めに構えて、少し笑っている顔が一般的です。
ただ、大学職員は、まだこの潮流に慣れていないかもしれません。
そのような大学職員がアメリカ流のややスマイル証明写真をみると「つくりすぎ」という印象を持つかもしれません。
社会人バージョンの写真を撮ろう
繰り返しになりますが、優れた証明写真が撮れたからといって、それが合格につながることはありませんし、よれよれのTシャツを着て撮った証明写真が不利に働くことはありません。
それでも受験生が良質の証明写真を撮り、それを願書に貼ったほうがよいのは、自分の見た目について気を配っていただきたいからです。
見た目といっても、美人とか非美人とか、かわいいとかそうでないとか、二枚目とか三枚目とか、といった話ではありません。
自分の見た目に気を配ることは、エチケットやマナーとして、社会から求められています。
清潔であること、整った服を着ること、派手さを出さずに年相応のファッションを気にかけることは、コミュニケーションを円滑にしたり、相手によい印象を与えたりすることができるからです。
大学に入れば、また一歩、社会に近づくことになります。
そうであるならば、大学受験用の証明写真も「社会人バージョン」にしたほうがよいわけです。
人の見た目について
大学受験や証明写真から離れた話になりますが、人の見た目について考えてみましょう。
人の見た目によって、人生が有利になったり不利になったりすることは、残念ながら事実です。
それは科学的にも証明されています。
「残念ながら」というのは、本来は、外見によって人生が変化してしまうことはよくないことだからです。
なぜなら外見は「与えられたもの」であり、「努力で乗り越えられないもの」だからです。
そして外見は「実力やスキルや効率性や正義と関係ないもの」なので、それが人物評価に使われるのは損失を招く可能性があります。
見た目が善悪の印象に影響する
しかし世の中のかなり多くの人は、日常生活のなかで外見にとらわれてしまっています。
心理学者でスクールカウンセラーの碓井真史氏(新潟青陵大学大学院教授)は、「見るからに善人そうな人よりも、見るからに悪人そうな人相の悪い人に、人は重い刑罰を与えがちだ」と指摘します。
これは、次のような心理学の実験で証明されました。
被験者に、実際は犯罪にまったく関与していない複数の人の顔写真をみせて「この人がとても悪いことをしました。懲役何年が適当だと思いますか」と質問しました。
すると被験者たちは、人相の悪い人に長い懲役を科し、人相のよい人に短い懲役を科したのです。
また、次のような実験もありました。
大学生の新入生だけを集めてパーティーを開きました。
参加者は全員初対面です。
さらに参加者には、全員の趣味、宗教、政治的な考え方がわかるようにしておきました。
つまりパーティーに参加した新入生たちは、自分以外の全員について、よくは知らないが、表面的な個人情報は知っている状態になっています。
パーティーのあと、全員に「誰と交際したいか」と質問しました。
すると見た目のよい人の名前を挙げることが多かったのです。
男子学生はかわいい女子学生を、女子学生はかっこういい男子学生を選んだのです。
趣味や考え方より、見た目のほうが恋愛に有利であることが証明された形です。
この2つの実験から、次のことがわかります。
見た目のよい・悪いは「よい行動をしていそう・悪い行動をしていそう」という先入観をつくる
見た目のよい・悪いは「好き・嫌い」という先入観をつくる
人の見た目のよい・悪いは、自然科学的にはなんらの価値がありません。
四角か三角かの違いと同じです。
しかし社会科学的には、人の見た目は大きな影響を持ってしまうのです。
結局は中身が重要
しかし、見た目による影響力は長く続かないという特徴もあります。
先ほどの大学生の新入生のパーティーの実験には第2弾があって、入学から期間が経ってから追跡調査をしました。
彼らが恋人や親友に選んだのは、見た目に関係なかったのです。
碓井氏はこの結果について次のように分析しています。
クラスの全員が、クラス一の美男美女を好きになるわけではないでしょう。たくさんの人物写真を見せて、「誰をミスコンテスト、ミスターコンテストの候補にするか」と質問すると、意見はかなり一致します。ところが、誰と付き合いたいかと質問すると、答えはバラバラになります。
確かに美男美女は目立ちますが、人は好きになった人の外見を好きなるものなのです。好きになって共に生活を始め、良い関係が持続できれば、年齢とともに相手の外見が変化しても、相変わらず相手の内面も外面も、素敵だと感じ続けることができるでしょう。
「人は見た目が重要」という言葉がある一方で、「見た目でだまされるほど馬鹿ではない」という言葉もあります。
見た目の不利を、内面を磨いたり学習したりすることで挽回することは全然簡単です。
また見た目にアドバンテージを持っている人が油断して堕落してしまうこともよく起きています。
見た目は人生に影響しますが、見た目が人生を決定することはありません。
社会での証明写真について
証明写真の話に戻ります。
大学受験の証明写真は合否に関係しない、と述べましたが、入試で面接を課す場合は例外かもしれません。
見た目がよい証明写真が貼られている場合、面接官がよい印象の先入観を持って面接を始めるかもしれません。
面接官は職業倫理上、「見た目に左右されないで面接する」と心に決めますが、人間ですので「見た目の力」に負けてしまう可能性はゼロではありません。
しかしその先入観も、面接が進んで受験生の知識や人間性がみえてくれば消えていくでしょう。
ただ社会に出ると、証明写真の力は露骨になります。
入社試験は、大学受験ほどの公正さを求められないからです。
大学受験には「学力が高い人を優先して合格させなければならない」という厳格なルールがありますが、企業の採用にはそのようなルールがありません。
企業は、自社が気に入った人だけを採用する権利があります。
そのため、見た目のよい証明写真が入社に有利に働くことは普通に起きています。
大学受験の段階から証明写真にこだわることは、数年後に訪れる就活(就職活動)の練習になります。
上記のコラムでは就職面接について詳しく書いていますので参考にしてみてください。
まとめ~少しずつ本音と建て前を覚えよう
社会には本音と建前があります。
人を見た目で判断してはいけない、というのが建前で、どうしても見た目で先入観を持ってしまうのが本音です。
高校生のなかには、社会に存在する本音と建前の存在に傷つく人もいるでしょう。
しかし、社会に出るとすぐに本音と建前に直面するので、今のうちから少しずつ慣れていく必要があります。
大学受験の証明写真にこだわるのは、その一歩です。
少しでも有利になる可能性があれば取り組む、不利になることは回避する――残念ながら、このような処世術は社会でどうしても必要になります。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。