「頭がいい人が落ちる」「偏差値が高くても不合格になる」
こうした現象は、高い偏差値の大学の入試ほど多く発生します。
道内なら北大、札幌医大、旭川医大、小樽商大、帯広畜産大を目指す受験生は油断しないようにしてください。
なぜこのような異変が起きるのかというと、高偏差値大の受験生の得点は、合格ラインに集中しやすいからです。1点2点の差で不合格になります。
この1点2点の差で合格するには、ミスをしないことです。
大きく学力を伸ばす勉強が攻めの学習だとすれば、ミスを防ぎ貪欲に1点2点を狙う勉強は守りの学習です。
攻めに出る前に、鉄壁の守りを築きましょう。
ミス防止対策は、学力向上対策より先に講じる必要があります。
こういう人はいつまでもミスする
ミス癖と呼ばざるをえないほど、ミスを続ける人はいます。
そのような人はいつまでも試験でケアレス・ミスを続けるでしょう。
それを解消しないと入試の1点で泣くことになります。
難しい問題は解けるのに基礎問題でミスをする人
中学のころから難しい問題は解けるのに、サービス問題といってもよい基礎問題で満点を取れない人は、ミス癖がついていると自覚してください。
こういう人の多くは「本気を出せばノーミスの解答用紙をつくることができる」と高をくくっています。
しかし結局はそのまま入試本番に突入してしまい、思うような結果を出せません。
先に難しい問題から解こうとする人
試験は、基礎問題が先に置かれ、あとに進むにしたがって徐々に難易度を高めていく構成になっていますが、先に難しい問題から解く人も注意してください。
長い時間を要する難しい問題を、気持ちにも時間にも余裕がある前半で解いてしまおうという戦略は合理的とはいえません。
学問の価値を考えると、難問の1点のほうが、基礎問題の1点より高いのは事実です。
しかし入試では難問の1点も基礎問題の1点も同じ価値です。
難問で満点を取って基礎問題を落とすくらいなら、基礎問題で満点を取って難問で失点するほうが、受験戦略としては優れています。
なぜなら、難問で満点を取って基礎問題を落とす人は、いくら学力を上げても基礎問題に足を引っ張られるからです。
基礎問題で満点を取って難問で失点している人は、学力を向上させた分だけ得点を高めることができます。
ミス分析をしない人
「次の選択肢のなかから適切でないものを選びなさい」という設問なのに「適切なもの」を選んで間違える人は、典型的な、賢いのに入試で不合格になる人です。
これは注意力が散漫なために起こすミスですが、なぜ注意力が身につかないのでしょうか。
それは、これまでの高校の定期テストにおいてミス分析をしてこなかったからです。
90点を取る実力があるのに、80点で満足してしまう人は、テストで85点を取っても65点を取ってもミス分析をしません。
85点のテストは満足しているからミス分析しません。
65点のテストは学力を上げることに集中するためにミス分析をしません。
高校の定期テストには、合格も不合格もありません。
1点少なくても学年順位が少し下がるだけです。
それで真剣に学力向上を目指しているのに、ミス分析に興味を持てないのです。
1点で合否が決まることは正しいことではないが
教育評論家の渡辺敦司氏は、わずか1点の差で合否が決まってしまう現行の入試制度に疑問を呈しています。
1点刻み試験は、定員からはみ出た受験生を、わずか1回のテストの1点で落としてしまうからです。
1点刻み試験は「厳格な一線」が存在することから公正に感じるかもしれませんが、1点差では合格した人が優秀で、1点足りずに不合格になった人が優秀でないとはいえません。
つまり1点刻み試験は受験生の優劣を正確に測ることができないのです。
少々のミスなど気にせず、難問や応用問題を解く力を身につけようとしている人は、学問を究める姿としては間違っていません。
しかし1点刻み試験が入試で継続している限り、ミスをしない解答のスキルは、受験生全員が獲得しなければならないでしょう。
英語のミス防止策
続いて教科ごとのミス防止策をみていきましょう。
まずは英語です。
英語では細かい違いが問われることが多いので、注意深い人でもミスをおかしてしまうことがあります。
ここではミスしやすい英単語を確認します。
compensate「補う」とcompromise「妥協」
comで始まる単語は数多くあり、多くの受験生を悩ませています。
comには「共に」という意味があります。
「補う」は補われるものと補うものが存在するのでcomが使われています。
「妥協」は本来の姿とあきらめる姿が存在し「共に」のニュアンスがあります。
辞書のcomの箇所をすべてノートに書き出して整理しておいたほうがいいかもしれません。
advice「助言」とadvise「助言する」
cかsかで、名詞か動詞かが決まります。
日本語では存在しない変化なので注意してください。
発音はadviceが「アドバイス、ədvaɪs」、adviseは「アドバイズ、ədvaɪz」となっています。
この2つは「混同しがち単語」として有名です。
curve「曲線」とcurb「縁石」とcarve「彫る」とcarb「炭水化物」
どれもカタカナ表記すると「カーブ」となります。
日本語になっているのはcurveで、「ダルビッシュ投手のカーブ」や「峠道のカーブ」はこれです。
この4単語は、日本人が苦手とする、urとarの発音の違いとbとvの発音の違いが含まれています。
curとcarに注目すれば「curveとcurb」と「carveとcarb」にわけることができます。
bとveに注目すれば「curbとcarb」と「curveとcarve」にわけることができます。
この4つは発音の違いでも出題されますので、発音記号も押さえておいてください。
affect「影響を与える」とeffect「効果」「変化をもたらす」
つづりが似ているだけでなく、日本語の「影響」と「効果」も似ているので二重に混同しやすい英単語です。
影響も効果も、対象物が変化すること表現しています。
影響はそのままでマイナスイメージを持つことができます。
効果はそのままではプラスイメージがあります。
afには「その方向へ」という意味があります。
efはexと同じ「外へ」という意味です。
fectは「つくる」という意味です。
したがってaffectには「意図する方向に導く目的で変化を与える」というニュアンスがあります。
effectには「意図か偶然かは問わず、何かの作用によって変化が起きる」ニュアンスがあります。
そしてeffectには名詞「効果」と動詞「変化をもたらす」の2つがあることも覚えておいてください。
ミスしやすい英単語を集めよう
混同しやすい英単語については、新しいノートに「ミスしやすい英単語」とタイトルをつけて、気が付いた英単語を書きつづっていったほうがいいでしょう。
そのとき例文も書き写しておいてください。
現国のミス防止策
現国でミスを防げない人に共通しているのが「惜しいところまできている」です。
センター試験の場合5つの選択肢から1つを選びます。
常に5つから3つまで絞り込んだなかに正解が入っているのに、正答できない人がいます。
なぜ正答の方向に進んでいるのに正答にたどりつけないのかというと、最後の最後で「自分の意見」を通そうとしてしまうからです。
現国の問題では「多くの人はAと思うが、筆者はBと考えている」点を突いてきます。
なぜなら、「多くの人はAと思い、筆者もAと考えている」点は、多くの人が正答してしまうからです。
例えばセンター試験に次のような問題が出ました。
【例文】
まったく違う文化的背景の中で、まったく違った言語によって書かれた文学作品を別の言語に翻訳して、それがまがりなりにも理解されるということじたい、よく考えてみると、何か奇跡のようなことではないのか、と。翻訳をするということ、いや翻訳を試みるということは、この奇跡を目指して、奇跡と不可能性の間で揺れ動くことなのだと思う。もちろん、心の中のどこかで奇跡を信じているような楽天家でなければ、奇跡を目指すことなどできないだろう。「翻訳家という楽天家たち」とは、青山南さんの名著のタイトルだが、(A)翻訳家とはみなその意味では楽天家なのだ。
【問い】
下線部(A)「翻訳家とはみなその意味では楽天家なのだ」とあるが、どういうことか。適切なものを次の1~5のうちから一つ選べ。
1:難しい文学作品を数多く翻訳することによって、いつかは誰でも優れた翻訳家になれると信じているということ。
2:どんな言葉で書かれた文学作品であっても、たいていのものはたやすく翻訳できると信じているということ。
3:どんなに翻訳が難しい文学作品でも、質を問われなければおおよそのところは翻訳できると信じているということ。
4:言語や文化的背景がどれほど異なる文学作品でも、読者に何とか理解される翻訳が可能だと信じているということ。
5:文学作品を原語で読んだとしても翻訳で読んだとしても、ほぼ同じ読書体験が可能だと信じているということ。
あとで正答を紹介しますが、ぜひ独力で解いてみてください。
そのあとで、以下の解説を読んでみてください。
解説
まず簡単に1と2は除外できます。
1の「いつかは誰でも優れた翻訳家になれる」と、2の「たいていのものはたやすく翻訳できる」は、この手の評論を書く人が主張するわけがないからです。
確かに楽観的な考え方なのですが、表現が乱暴かつ幼稚すぎます。
したがって3、4、5のなかから適切なものを選ぶことになります。
3は「おおよそのところは翻訳できる」という控えめな表現が、楽天家につながりそうです。
4の「読者に何とか理解される翻訳が可能」は3の「おおよそのところは翻訳できる」と酷似しています。
5の「ほぼ同じ読書体験が可能」も楽天家が考えそうな内容です。
このように、3、4、5はいずれも「正解でもよさそう」と思わせます。
この場合、「NG言葉」が入っているものを探し、それを除外することになります。
3は「質を問われなければ」がNG言葉になります。
翻訳家はプロなので、いくら楽天家であっても質は放棄しません。
5は「原語と翻訳の比較」がNG言葉になります。
例文を読み返すと、原語と翻訳の比較について一切触れていないことがわかります。
例文の部分を要約すると「理解という奇跡を信じる行為が楽観的だ」となります。
これは4の「読者に何とか理解される翻訳が可能だと信じること」と一致します。
現国を自分の考えやフィーリングで解こうとすると、いつまでも「惜しい間違い」を繰り返すことになります。
現国の出題者は、例文を使って説明できることしか正解にしません。
「普通はこう思いますよね」という内容を正解にしない、ということです。
引っかからないようにしてください。
まとめ~掘り起こして潰す
受験生に、学力向上対策より先にミス防止対策を講じてほしいのは、ミス防止対策のほうが学力向上対策より圧倒的に楽だからです。
学力向上でもミス防止でも1点を取ることができます。
しかし1点を取る労力は、ミス防止のほうが少なくて済みます。
ミスは、苦労して手に入れた学力向上を「無」にしてしまいます。
それはもったいない話なので、まずは自分のミス癖を発見し解消しましょう。
そのためには、受けたテストをなるべく早い段階で見直すことです。
終わったテストには、ミス癖がたくさん詰まっています。
それを1個1個掘り起こし、1個1個潰していってください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。