「どうしたら子供が自発的に勉強するか」
これは、小学生の保護者の永遠のテーマといっても過言ではありません。
小学生はとにかく勉強を嫌がります。
それは遊びたいからだけでなく、勉強をするメリットがみえていないからです。
以前にも当コラムの記事で「宿題・勉強をさせるにはコミュニケーションが大切!」とお伝えしました。
あの手この手を使って、小学生を勉強したくなるように導いてあげることはできます。
「あの手この手」で最も効果的なのは、保護者による「愛の言葉」です。
勉強するメリットを理解できない小学生でも、テストで満点を取って、それを保護者に見せて保護者が喜べば快感を覚えます。
問題は、保護者がそのとき何と言ってあげるかです。
そのときの言葉で、子供が「また勉強してみようかな」と思えるかどうかが決まります。
この記事ではさらに、小学生の子供に、将来北大生になってもらいたいと願っている保護者の対応についても考えてみました。
基本方針は「とにかく褒める」
これは、子供が小学生であることを前提にしたアドバイスになりますが、勉強に関しては「とにかく褒める」基本方針を貫いたほうがよいのではないでしょうか。
とにかく褒めるとは、必ず褒めるということです。
例えばテストで悪い点数を取っても、褒めて構いません。
もちろん「悪い点数を取ったね、すごいね」と言うわけではありません。
テストで悪い点数を取ったのは、別のことに熱中していたからではないか、と推測するのです。
例えばその子が卓球クラブに所属していて、卓球に熱中しすぎたために勉強がおろそかになったとしたら、「あれだけ卓球が強くなれば、テストの点数が落ちるのは当然だね。ひとつのことに集中できるのは素晴らしい才能だ」と言ってあげればいいのです。
そのうえで、悪い点数のテストの中身をみてあげて、「この難しい問題は正解できているのだから、油断しなければもっと高得点が取れたね」と指摘してあげれば完成です。
しつけとは切り離して
とにかく褒める方針は、小学生限定と考えてください。
中学生になっても学習習慣が身についていなかったら、保護者からも厳しい一言が必要になるでしょう。
しかし小学生には「勉強=保護者との楽しいやりとり」という印象を植え付けることが何より大切です。
このころに「勉強=苦しいもの」という印象を持ってしまうと、将来、自分は何のために勉強しているんだ、と悩むことになってしまいます。
そして、とにかく褒める方針は、勉強についてだけでよいでしょう。
一般的なしつけは、通常とおり、注意したり叱ったりしてあげてください。
保護者が喜び、悲しむ
小学生が勉強をしたくなるのは、保護者が喜んでくれるからです。
小学生が、時折「勉強しなきゃ」と思うのは、悪い点数ばかり取っていると保護者が悲しむことを知っているからです。
子供の成績に対する保護者のリアクションは重要です。
喜ぶ効果
子供がテストでよい点数を取ったり、授業参観のときに活躍したりしたら、保護者は自分がどれだけ喜んでいるかを子供に伝えてあげてください。
喜びは、褒めることと区別して子供に伝えましょう。
褒める行為は評価です。
テストでよい点数を取ったり、通知表がよい結果だったりしたときに評価してあげるのが褒めです。
一方の喜びは、保護者の感情です。
小学生はいい意味でも悪い意味でも、毎日保護者の顔色をうかがいながら生活しています。
小学生にとって、保護者の喜びこそ、最大の喜びです。
例えば、よい点数のテストの解答用紙をしばらく冷蔵庫に貼っておいてはいかがでしょうか。
子供は保護者が心の底から喜んでいると思うでしょう。
悲しむ効果
テストで悪い点数を取っても、なんとか褒めポイントを探して褒めてあげる一方で、保護者はどこかで悲しいことを伝えるようにしてください。
小学生は、保護者が悲しむと本能的に反省します。
例えば次のように言ってあげてはいかがでしょうか。
「簡単な問題を間違えたのは、お母さん(または、お父さん)、悲しいなあ。
だって今この問題を解いたら解けるわけでしょ。もったいないなあ。
でも、この難しい問題は正解できているんだね。油断しなければもっと高得点が取れたね」
ポイントは、先に悲しさを伝えて、後に褒め言葉を置くことです。
日本語には、重要なことや本音をうしろに持っていく特徴があり、それは小学生でも理解できています。
「悲しいな、でもすごいね」と「すごいね、でも悲しいな」では、どちらのほうがすごさを伝えているでしょうか。
成功体験をさせる
小学生に必要なのは、長時間の勉強習慣ではありません。
保護者の目標は、子供に勉強したくなる気持ちを持たせることです。
このように説明すると「勉強したくなれば、長時間の勉強が苦にならないのではないか」と感じるのではないでしょうか。
まれにそのような子供もいるかもしれませんが、大半の小学生はそうはなりません。
勉強がしたいと思っても、その10分後にはゲームがしたくなってウズウズします。
しかしゲームをする前に「勉強したい」と思ったことは、大きな一歩です。
勉強したい気持ちを持つ癖がつけば、真剣に勉強をしなければならない高校受験の前や大学受験の前に、「勉強したい=長時間勉強しよう」となります。
ではどのようにして、小学生に勉強したいと思わせたらいいのでしょうか。
成功体験をさせればいいのです。
結果の重要性をどう認識させるか
例えば自分の小学生の子供がまったく勉強しようとせず、遊んでばかりいて、テストの結果や通知表の評価も案の定悪かったとします。
このとき、算数だけ頑張らせてみましょう。
「他の教科は一切勉強しなくていいから、算数だけ勉強しよう」と子供と約束するのです。
そして次の算数のテストまで、保護者と子供の二人三脚で算数を徹底的に勉強します。
それでよい点数が取れると、子供は「やればできる」ことを体験します。
しかも他の教科はまったく勉強していないので、依然としてテストの点数は低いままです。
すると「やらないとできない」ことも学びます。
この「やればできる」ことと「やらないとできない」ことを1回でも体験すれば、あとは子供自身が「このままではまずい」と思うようになれば、勉強するようになります。
しかし小学生のうちは、子供が「このまま勉強しないとまずい」と思わなくても、保護者は心配しなくていいでしょう。
中学生になって勉強が難しくなれば、自然と「このままではまずい」と思うようになるからです。
「やればできる」「やらないとできない」を知るだけで、結果の重要性を理解できるようになるので安心してください。
ネガティブな状況下でのポジティブ発言
子供自身が「やればできる」「やらないとできない」と思うことは重要ですが、保護者は子供に「あなたは(または君は)、やらないとできない人なんだよ」とは言わないであげたほうがいいでしょう。
「やればできる」と「やらないとできない」は同じ内容を示していますが、前者はポジティブ表現で後者はネガティブ表現になっています。
後者は二重否定になっているので肯定の意味になっていますが、ネガティブ表現は褒めになりません。
保護者が子供に「あなたは(または君は)やればできる」と声をかけると、そこには「君にはとてつもない潜在能力が眠っている」というメッセージが込められます。
しかし保護者が子供に「あなたは(または君は)やらないとできない」と言ってしまうと、「だからサボるな」という叱りの意味を含んでしまいます。
小学生の勉強については、とにかく褒める方針のほうがいいので、叱らないほうがいいでしょう。
繰り返しになりますが、子供自身が危機感を持って「私は(または僕は)やらないとできない」と思うことは問題ありません。
子供が保護者に「私は(または僕は)やらないとできない」と言ったら、保護者は「やらないとできないのではなく、やればできるんだからやってみたらいいでしょう」と、やんわり修正してあげてはいかがでしょうか。
北大生にしたい保護者はどうすればよいのか
北海道内の小学生の保護者のなかには、子供を将来、北大、または札幌医大、または旭川医大に入れたいと強く願っている人もいるでしょう。
その場合、小学生のうちから長時間勉強する習慣を身につけさせたいと考えるはずです。
確かに、小学生なのに長時間勉強を苦にしない子供はいます。
しかしそれでもなお、叱ったり強い口調で諭したりする方法で勉強を強要しないほうがいいでしょう。
「勉強嫌いのトラウマ」がついてしまうと、北大どころか大学にすら行きたくないと考えるようになるかもしれません。
子供を北大や札幌医大や旭川医大に入れたいと思っていても、その子が小学生のうちは、とにかく褒める方針でいきましょう。
自分を甘やかさない習慣をつけさせる
とにかく褒める方針を維持しつつ、子供には自分を甘やかさない習慣を身につけさせてはいかがでしょうか。
そのためには、セルフチェックが有効です。
テストが終わったり、通知表が渡されたりしたら、保護者と子供で大反省会を開くのです。
このとき、和やかな雰囲気で行うことがポイントです。
お菓子を食べたりジュースを飲んだりしながら、これまでの勉強について語り合うのです。
保護者は、勉強で知識を身につけて人生で得した経験を話してあげてください。
子供が自分から点数が悪かった理由を言えるようになるまで、徹底的に場の雰囲気を和ませてください。
そして「いい点数が取りたい」という気持ちを言葉にできるようになったら、この大反省会は成功です。
自分はいい点数を取りたいと思っている、という気づきを子供に与えて、勉強すればいい点数が取れる成功体験をさせれば、自分を甘やかさないようになるでしょう。
東大医学部、京大医学部、ケンブリッジ大、ハーバード大に入れるのではなく、北大、札幌医大、旭川医大に入れたいのであれば、小学生の子供にはここまでで大丈夫です。
「ここまで」とは、勉強を嫌いにならない、勉強を好きになる、「やればできる」ことを知っている、自分を甘やかさない習慣を身につけることまでのことです。
北大受験の勝負どころは、中学の後半と高校です。
小学生のころから子供にスパートさせてしまうと、中学や高校で息切れしてしまうでしょう。
きょうだいとも同級生とも比べない
子供の勉強モチベーションを著しく減退させるのは、比較です。
小学生の子供に次のように言うのは百害あって一利なしです。
- お兄ちゃん、またはお姉ちゃんはもっとできたのに
- 弟、または妹はもっとできているよ
- あなたはお兄ちゃん、またはお姉ちゃんよりできるね
- あなたは弟、または妹よりできるね
- あなたは、○○君、または○○ちゃんよりできないね
- あなたは、○○君、または○○ちゃんよりできるね
きょうだいや同級生との比較は、できないことを知らせる目的でも、できることを知らせる目的でも、避けたほうがいいでしょう。
それは、きょうだいまたは同級生を追い抜くことがゴールになってしまうからです。
そして、勉強ができただけで、きょうだいまたは同級生より人間的に勝っていると勘違いさせることになってしまいます。
勉強や受験には競争心が重要です。
しかし競争心は中学生や高校生になれば自然と芽生えてきます。
小学生の子供に、保護者が意図的に競争心を植え付ける必要はないでしょう。
報酬について
成績が上がったことを理由にスマホを買い与えたり、小遣いを増額したりすることは、十分検討する必要があります。
勉強を一生懸命する小学生の子供になんらかの報酬を与えることは悪いことではありません。
例えば、兄のお古の自転車に乗っている小学生の弟に、通知表の評価が上がったら新品の自転車を買ってあげると約束することは、家族の一大イベントにもなるので、よい方法といえそうです。
これまでは、札幌ドームでの日ハム戦は外野席で観ていたが、よい点数を取ったらバックネット裏で観よう、という約束も家族全員で楽しめます。
しかし、報酬を与えないと勉強しない子供にならないように、ルールを吟味したほうがいいでしょう。
例えば子供が「○○を買ってくれないのなら、もう二度と勉強をしない」と言ったら、しつけとして、保護者に交換条件を出すことがどれほど悪いことなのかを教え諭してあげたほうがいいかもしれません。
まとめ~待ってもやる気は出ないが強制すれば引っ込む
小学生の勉強のやる気は、待っていてもなかなか出てきません。
保護者は、とにかく褒める方針を基本にしながら、子供との勉強に関係する時間を増やしていきましょう。
しかし、勉強が苦しくてつらいものであることは、保護者も身をもって知っているはずです。
勉強を強制すればするほど子供は勉強から離れていきます。
強制力が強ければ形だけは勉強するかもしれませんが、心は勉強から離れていきます。
小学生のうちは、子供が「勉強? 嫌いじゃないよ」と言ってくれるくらいでちょうどよいのです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。