「モンスターティーチャー」という言葉をご存知でしょうか。
学校生活の中で存在する、「モンスターペアレント」ならぬ「モンスターティーチャー」とは、いわゆる問題教師のことです。
例えば、生徒がせっかく授業中に手を挙げているのに、自分が気に入らないある特定の生徒だけ全く指さない、成績が悪い生徒たちに罰として1カ月間ずっとトイレ掃除させる、夜遅くまで居残り学習させる、などのような、話を聞く限り「本当にその生徒のためを思ってやっていることなのだろうか?」と疑問に思うようなことをする問題教師「モンスターティーチャー」は、実際に存在するようです。
今回のコラムでは、そうした問題教師「モンスターティーチャー」とはどんな先生なのか、そのタイプと周りの大人や生徒ができる対処法について紹介します。
もしかしてモンスターティーチャー?こんな先生はイヤ!
子供たちはどんな先生を嫌だと思うのでしょうか。
親御さんも子供の頃を思い出してみてください。
学校生活をしているなかで、どうしても好きになれない先生っていましたよね。
ここでは「こんな先生はイヤ!」という声が多かった先生の特徴を紹介します。
生徒に対してえこひいきや差別する先生
生徒や保護者から嫌われる先生の典型的な例としてあげられるのが、生徒たちを差別したり、えこひいきする先生です。
- 女子生徒には優しいのに男子生徒に厳しい(逆もあります)先生
- 優等生にだけ甘くする先生
- 自分の部活の生徒にだけ厳しい、あるいは甘い先生
- 勉強ができない生徒に冷たい、もしくはあえて指名してバカにする先生
- 勉強ができる人に冷たい、もしくはあえて指名して、答えられないような問題を課す先生
他にもあるかもしれませんが、このように特定の生徒に対してだけほかの生徒と違う態度をとることは、いくら教師本人にその気がないとはいえ、生徒たちも敏感に感じとってしまいます。
ましてや差別する対象や基準を設けて意図的にそうしているのであれば、生徒たちからその先生は嫌われることでしょう。
特に理不尽な扱いを受けている生徒たちからは、確実に猛反発をされて嫌われるだけでなく、人間として信用してもらえなくなるでしょう。
生徒たちにとって模範的な大人であろうとするならば、どの生徒にも平等に接するべきだと思いますが…。
その日の気分やその時の機嫌によって態度を変える先生
その時の機嫌によって、生徒に対する態度を変えたり、感情的な先生は厄介なものです。
機嫌が良い日はニコニコして優しいのに、機嫌が悪い時はちょっとしたことでいきなり怒鳴り出したり、お説教を始めたりと、生徒たちは付き合いづらいと感じています。
ひどい時には、何もしていてない生徒にいきなり八つ当たりする先生もいるようです。
もちろん、こんな先生は生徒から嫌われています。
大人なのですから感情や気分に振り回されることなく生徒たちと向き合うべきですね。
生徒には厳しく、自分にだけは甘い先生
他人には厳しいくせに自分にはだけ甘い、という性格の人は、たとえ先生でなくても嫌われてしまいます。
タチが悪いことに、そのような性格の教師もいるのです。
自分がミスした時には笑ってごまかすだけなのに、生徒がちょっとミスしただけで激しく怒ったり、生徒たちに大変な課題を出しておきながら、それを大してチェックしないでほったらかしにしておくなど、自己中心的な先生。
こうした先生は、生徒たちからすぐに信用されなくなり、嫌われる対象になるでしょう。
生徒に対して面と向かって罵る、バカにする先生
面と向かって生徒を罵ったりバカにしたりするようなひどい先生もなかにはいるようです。
こんな先生は教師としてはもちろん、それ以前に人間としてどうなのかと疑問に思わざるを得ません。
面と向かってそうした教師から、人格を否定するような言葉を浴びせられた生徒はとても傷つくことはもちろん、下手をすれば生涯のトラウマにもなりかねません。
それくらい、先生の言葉は子供たちにとって重みがあるのだということを、教師たちは自覚してほしいものです。
生徒に自分の考えを一方的に押し付ける先生
どんな人間でも、本人の考えや意志を尊重されたいと思っています。
教師であるならば、そうした生徒たちの心情を理解して、生徒の意思をできるだけ尊重しながら物事の道理を伝えたり、アドバイスをするべきです。
ところが、進路や志望校など、生徒の目的や思いを蔑ろにして自分の都合や考えを一方的に押し付ける先生も残念ながらいるようです。
生徒の考え方を一切受け入れず、とにかく自分の言う通りにするようにと、自分の考えを一方的に押しつける態度は、間違いなく生徒たちから嫌われてしまいます。
例えば、進路相談の際に勝手に志望校を決められたり、志望校を受けさせてくれなかったり、体調が悪いのに無理やり部活動や授業に参加させられたり、不都合なことの責任を一方的に押し付けたり…。
数え上げればキリがありませんが、このように、生徒の意思やその時の状態やその場の状況を理解せず、なんでもかんでも自分の考えで物事を決めるつける態度は生徒たちから嫌われてしまいます。
生徒たちを信頼して意見をしっかりと聞き入れて判断する先生を子供たちは望んでいます。
こんな先生がいたら危険!要注意レベルのモンスターティーチャー
以上のような先生は、ひょっとしたら時々学校にも存在し、生徒たちからも「ちょっとあの先生、気をつけたほうがいいぞ」と、もうすでにマークされているかもしれませんね。
程度にもよりますが、生徒とたちともうまく折り合いをつけて「ちょっと困った先生」くらいに周りから思われている程度で済んでいるかもしれません。
ところが、次に紹介するような先生が、もし身近にいたとしたら、今度こそ要注意です。
場合によっては保護者が我が子を守ってあげなければならない場面が出てくるかもしれません。
もしも自分の学校の先生にこんな先生がいたら、周りの大人たちはしっかりトラブルに発展しないように目を光らせておくようにすると良いでしょう。
自己中心型教師
自分の仕事や出世のために生徒への授業や指導をおろそかにするタイプの先生がこれに当てはまります。
過去には期末テストの採点を生徒にしてもらい、それに対して、1クラス1000円という報酬を渡していたという例があるそうです。
その教師の言い訳は、「自分は他の採点で忙しいから」というもの。
授業中で行われる小テストなどでは、席が近い生徒同士で交換して採点するなどのケースもあるかもしれませんが、期末テストは内申書や進路にも繋がる大切なものであり、教師が責任を持って採点しなければならないはずです。
もちろん、生徒たちにしてみたら、自分のテストの成績が他の生徒にそのような形で見られてしまうことはとても許せるはずがありません。
これはプライバシーに関わるとても大事なことです。
教師個人の資質にも問題はありますが、このようなことが起こった背景としては、先生たちは会議や報告、研修などがあまりにも多く、自分の仕事が進まないという現実があるようです。
それだけ多くの仕事を先生がこなさなければならないのは、社会が学校に責任を押し付けすぎているという問題もあるという意見もあるでしょう。
けれども、生徒のプライバシーを守るといった常識的なことでさえ疎かにしてしまうような教師が実際にいるということは、いくら忙しいからと言い訳を言っていたとしても、とても考えられないことです。
その他にも、教師が自分の勉強をしたいがために、受け持ちの授業を自習にしてしまうといったケースがありました。
教師は出世すると、学年主任や教頭、校長と順調に階段を登っていくのですが、もちろん自動的に誰でも出世できるはずもなく、指導主事試験や教頭試験などといった試験を受けなければいけません。
そうした自分のための勉強をするために、学校の授業を自習にしてしまうのです。
また、先生も研修のため地方へ行くことがあります。
この研修に行くこと自体は決して悪いことではありませんし、むしろ積極的に研修に参加し教師が成長することで、生徒たちはその先生の授業から、質が高く多くのことを得ることができるようになります。
問題なのは、上司である校長や教頭からより良い評価を得たいからといった動機で研修に参加する教師がいるということです。
また、学校長側からみると、自分の学校から研修者を多く出すとその校長の評価が上がるという一面もあるようです。
先生の人事評価制度については、もっと教師の資質や内面、生徒たちへの指導実績を見るような方法が良いのではないかと思うのですが…。
常識逸脱型教師
このタイプの教師は、教育者として常識と非常識の判断がつかない先生のことを指します。
実際に、過去にはこんな教師が問題になりました。
生徒の成績表や、学級日誌、住所・電話番号・家族構成などと言ったプライバシーが記載されている生徒個票を、コンビニのゴミ箱に捨てた教師。
なぜそのようなことをするのかといえば、教師がプライバシーのことを甘くみて重要視していなかったことが原因の一つです。
他にも実際にあった例では、韓国への修学旅行の際に11人の引率の教師がいたのですが、自由行動の時間になり、その中の校長を含めた5人の教師が、別のツアーに参加したそうです。
それだけでも問題ですが、その時に修学旅行中の生徒達がいる場所から60kmも離れた所まで行ったということです。
いくら自由行動と言っても、それは生徒側の話であって、引率の教師は業務時間中で生徒の行動をチェックする責務があるということを忘れています。
プライベートと仕事中の区別がつかない非常識な行為だと目を疑わずにはいられません。
過剰ペナルティ型教師
これは、生徒の問題行動に対して、異常な罰を与える教師のことを言います。
過去に実際にあった例としては、サッカーでシュートを決められなかった生徒に対して、罰として裸でグラウンドを走るように命じた教師がいたそうです。
それを命じた教師の言い分としては、生徒が「次にあんな罰を受けたくない」という思いから、集中力をつけて他の生徒たちも含めて失敗させないようにするために行ったとのことでした。
その他にも過去に実際にあった例では、給食を残した児童に対してその罰として給食を素手で食べるよう強要したということもありました。
また、いじめた生徒の罰として、鳥インフルエンザが流行している最中に鳩の死骸を素手で埋めるよう強要したこともあります。
このことは、現在では教師による体罰が禁止されているので、苦肉の策で教師が考え出したことなのかもしれないと考えられなくはありませんが…。
このような過剰な体罰はもちろん許されないことですが、子供に対してしっかりと叱って理解させることは必要であるとも言えなくはありません。
大人としてしっかりと指導する必要はありますが、不必要な恐怖感を与えるだけでは意味がないのではないでしょうか。
とはいえ、叱ることに対する過剰すぎるとも言える反応は、教師が生徒に叱ることを難しくしてしまっているという事実も指摘されています。
というのも、今では何かとすぐに「体罰だ!」と親御さんから学校へ苦情が来てしまうからです。
教室の後ろや廊下に立たせるだけでも「体罰」と言われかねないですし、言葉できつく叱ると、生徒をいじめたという捉え方をされてしまいかねません。
そのため教師は生徒に対して効果的な叱り方が見出せていないのが現状のようです。
教師は言葉や行動一つ一つに気を配らなければならなくなっていて、それが原因で教育に集中できないという声も上がっています。
何を持って「体罰」にあたるのか、もう一度よく考えてみるべきかもしれませんね。
セクハラ型教師
これは、教師という立場をわきまえず性的な要求を教育現場に持ち込む教師のことを指します。
無意味に家庭訪問をして、会いに行く教師や、女子生徒の帰りを待ち伏せする教師、ストーカーをする教師もいるそうです。
また、最近はメールでセクハラをするケースもあるそうです。
このケースの深刻な点は、こうして子供の頃に受けたセクハラが、成人になってもトラウマとして残ってしまうことがあるのです。
こうした教師は、「子供が好き」という要素は持っていても、思考が歪んでいるので、たとえ一人の生徒のストーカーを止めさせたとしても、次の年はまた別の生徒を標的にしてしまいます。
これはもはや教師以前の問題で、社会人として世の中で生きる上でも大いに問題がありますので、なんらかのカウンセリングを受けてもらうといった対策が必要なのではないかと思います。
逸脱授業型教師
教師本人は至って真面目なのですが、社会的な常識が欠けているために異常な授業を展開してしまうといったケースを指します。
実際にあったことでは、理科の授業で「呼吸」のメカニズムを教える時に、生徒の首を絞めて説明した教師がいたとのことです。
生徒は息ができずに苦しがっていましたが、口も鼻もふさがれていたためにその場で失神してしまいました。
けれどもその生徒は揺さぶると息を吹き返したので、そのままその教師は平然と授業を再開したそうです。
ここまでして「呼吸」のメカニズムを体験しなくても、別の方法で学ことはできるのではないかと思うのですが…。
他にも、算数のテストで「8人のうち3人殺したら残りは何人でしょう?」という常識はずれの問題を出した教師がいたことも以前問題になりました。
このような非常識な教師がいることは、一つにはモンスターティーチャーの先生とその周りの人たちとのコミュニケーションが不足しているからではないかと考えられます。
周りの人との何気ないコミュニケーションによって常識などは学ぶことができるものです。
また、以前は地域の学校や教師たちは地元の地域コミュニティーとのかかわりが密接だったようですが、現在はそれほどではありません。
そのため、教師も孤立してしまって、常識を学ぶ機会を失ってしまっているのかもしれません。
さらに地域社会が教師に教育の責任を背負わせすぎていることも、教師が孤立してしまう原因の一つとも言えるでしょう。
モンスターティーチャーへの対処法
これまでに実例を挙げて紹介したモンスターティーチャーは、実際には教師全体の3%以下にすぎないごくごく一部の教師の話です。
けれども、そうした教師が実際に存在するということを知っておくことは必要でしょう。
もしもこのようなモンスターティーチャーが運悪く子供の先生に当たってしまった場合、保護者や周りの大人はどのように対処したらいいのでしょうか?
そのためには、まずは親御さんのネットワークを駆使してみることをお勧めします。
子供と同じクラスのほかのママ友などに相談して、自分の子どもだけが先生から理不尽な仕打ちを受けているのかどうかを確認しましょう。
もしそこで、ほかの子供も同じ辛い思いをしていたり、実際の被害にあっていたら、保護者同士で団結して、モンスターティーチャーの上司にあたる学年主任などの人物に相談します。
公立学校なら管轄の教育委員会に相談するという手もあり、実際にそうした対応がきっかけで打開策が見つかったというケースもあります。
けれども私立中学や私立高校は、直接指導できる公的機関がないため、学校がいわば「治外法権」のような状態になってしまうこともあるのだそうです。
そうすると、最終的には保護者と教師、もしくは学校と直接対決しなければならないことになります。
その際の対処法としては、一つには、電話の会話はできるだけ録音し、メールなどのやりとりも保存して、いざという時に証拠として使えるように残しておくようにしましょう。
万が一学校側と争うことになった時にこうしたことが重要な参考資料となります。
けれども、最初からケンカ腰で先生や学校に乗り込んでいかないことも大切です。
ひょっとして自分の子供が教師から理不尽な態度を取られているのは、何らかの理由があるからかもしれないからです。
親が知らないだけで、実は学校で授業態度が悪かったり、提出物をきちんと出さなかったり、忘れ物が多かったりといったように、生徒の側にも何か理由があるかもしれません。
ですから、できるだけ穏やかに学校や担任の先生などに次のように相談するのが良いでしょう。
「うちの子供にいたらない点があるようなので、どのあたりを直したらよいでしょうか。家庭でもきちんと注意していきたいと思いますので…」
このように、まずはこちらが下手に出て、相手へ探りを入れることから始めましょう。
よくも悪くも教師や学校側は「自分が正しい」と信じています。
その考えを正面から否定してしまうと話はうまく進みませんし、相手の考えも聞き出せません。
また、このように何か問題があったときに学校へすぐに相談することは、ある意味教師や学校への警告にもなります。
「もしも納得のいかない回答だった時は黙ってはいないぞ。」という、親としての気概を伝えることにもなるはずです。
もしも運悪くモンスターティーチャーに遭遇してしまった時には、大事な子供のためにも親御さんはしっかりと子供の味方になり、子供をしっかりと守ることを最優先に、何をしたら一番良いかを考えて行動してください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。