新学期が始まりました。
新しい学年、新しいクラス、新しい友達、新しい先生…と、新しい学校生活に期待を膨らませているお子さんも多いのではないでしょうか。
けれども学年が上がるにつれ、学校で習う教科の中には、だんだんと難しい内容も増えてきます。
お子さんによっては特定の教科の勉強を「苦手だ」と感じてしまう人も出てくるかもしれませんね。
特に算数が苦手だと感じる子供たちは高学年になるにつれて増えると言われています。
そこで、今回のコラムでは、小学生向けに算数が好きになるような勉強のコツや算数の魅力について紹介したいと思います。
どうして算数が苦手だと思う小学生が多いのか?
算数が苦手になる子には、次のような4つの特徴があると言われています。
- 単純な計算ミスが多い
- 先取り学習に力を入れすぎている
- 答えの根拠や理由まで理解していない
- 読解力がない
これらについて詳しく順番に説明しましょう。
単純な計算ミスが多い
他の教科とは異なり、算数では「答え」は1つだけ。
どんなに考え方や視点がいいものだとしても、答えが合っていなければ、そこでもうアウトになってしまいます。
中学受験で子供たちを難関校に合格させる塾や家庭教師は、口を揃えて同じように言っています。
いくら計算のやり方が合っていても、ちょっとした計算ミスのせいでその問題がバツになってしまうことはよくあります。
するとそのせいで点数が下がり、余計に算数に対して苦手意識を持ってしまう子もいるかもしれません。
けれども逆に言えば「計算ミスを無くせば」算数の点数は急上昇させられるのです。
計算ミスが目立つ子供に対しては、最初のうちは、簡単な問題から徹底的に計算ミスがなくなるまで毎日継続してトレーニングすることが大切です。
計算ミスがなくなれば自然と成績も上がり、算数が「楽しい」と思えるようになるでしょう。
大切なことは、どうしてその点数になったのか?と、しっかり分析をして振り返り、原因を探ることです。
そうすることで、ミスがなぜ起こったのか考える思考力が養われます。
ミスをなくすために地道な努力をすることが算数の成績アップへの近道です。
先取り学習に力を入れすぎている
自宅で子供に算数の勉強をさせるとき、先取り学習に力を入れているという親御さんも多いでしょう。
教育熱心な家庭ほどその傾向が強いと言えます。
例えば、小学3年生のうちから、小学4年、5年生の問題に取り組ませている人もいるかもしれません。
ところが、このことが子供たちに算数を嫌いにさせてしまう原因になってしまうということがあるので注意しましょう。
例えば、分数の学習を子供が始めた時に分数の足し算や引き算が「なんとなく分かった」というようなあやふやな段階で、すぐに分数の掛け算や割り算など次のステップをさせてしまうことがあります。
一見、大人には簡単なように見えても、内容の理解が盤石でない子供にとっては、急に難易度が上がるのです。
簡単なようで難しい、このような問題が解けない子供たちは、そこで「算数が苦手」と考えてしまうのです。
算数は積み上げ式の教科です。
これまで学習した範囲をしっかり定着させてから、難易度を上げるようにしましょう。
特に文章問題についてですが、低学年の早い段階から先取り学習で難しい文章問題に挑戦させることはお勧めしません。
国語の読解力がない時点で難しい文章問題に取り組ませても、文章の内容の理解ができないからです。
その結果、文章題が解けずに算数が苦手になってしまうこともあります。
文章問題は小学3年生をすぎてからで充分なので、小学3年生頃までは計算力を伸ばすような訓練をしていきましょう。
かといって先取り学習は決して悪いことではありません。
もしも先取り学習をする場合は、子供の現在の学力をしっかりと把握して行うようにしましょう。
答えの根拠や理由まで理解していない
これまでに算数に対して苦手意識を作らないように、計算力を伸ばすことの重要性について述べてきました。
けれども、計算することがただの単純作業になってしまっても、算数が嫌いになってしまうことがあります。
もちろん、成績を上げるために速く正確に計算ができるということは重要です。
それ以上に、「なぜその答えになるのか」ということについて、計算の根拠をしっかり理解しておくことがとても大切になります。
分数の掛け算について例に挙げると、「どうして分子同士と分母同士を掛けるのか」ということについて、図などを用いてイメージができ、理屈を根本から理解できると算数の楽しさを感じることができるでしょう。
中学生や高校生では「数学の証明問題」も扱います。
そのため、小学生の算数の段階から「なぜその答えになるのか?」について理解するようにしておきましょう。
算数や理科といった教科は、その根拠を知ることで興味が湧き、いっそう楽しくなります。
タブレット学習などでは動画解説などもあり、算数に対してのイメージがつきやすく理解がしやすくなるのでおすすめです。
読解力がない
算数の文章問題を解くためには、計算力以上に実は「国語力」が必要になってきます。
問題文をよく読んで、何を尋ねられているのかをきちんと理解することが重要です。
読解力がない子供には問題文の内容が理解できずに、正解に辿り着けないケースも多いようです。
算数の点数を上げる為には「国語力」も同時に鍛えることが必要なのです。
算数の才能は、誰にでもあるもの
「親の私には算数の才能がないから」と、諦めてしまっている親御さんも多いかもしれません。
けれども、算数が得意か苦手かということは生まれつきの能力ではないのだそうです。
算数の得意不得意を分けるポイントは、脳の中にその問題を解く回路ができているかどうかと、その回路が太いかどうかが重要なのだそうです。
算数は他の教科に比べて、脳の中の複数の部分を同時に働かせることが必要です。
このことはつまり、あるひとつの問題を解く回路を確立することができれば、それと類似した問題に次に出会った時、脳の中のどの部分を動かせば良いかを推測できるのです。
同じような多くの問題を解く経験を重ねることで、その脳の中の神経回路が太くなり、ネットワークとして機能しやすくなるのです。
算数が好きになるか嫌いになるかという違いは、生まれもったものではありません。
そうではなく、算数の問題に出会ってその問題が解けた時の「できた!」「わかった!」という経験を積んでこられたかどうかに起因するのです。
子供の算数を苦手にしてしまう親御さんの「思い込み」
多くの親御さんが、自分の子どもには算数を好きになってほしいと願います。
けれども子どもの能力を向上させるための方法がわからないと考える親御さんが多いということも事実です。
好きになってほしい。でも、子供の学習をどのようにバックアップしたらよいのかわからない。
そのように悩む親御さんは、どのように子供をサポートすればよいのでしょうか。
実は、算数が苦手な親御さんの中には間違った先入観を持っている人が多いのだそうです。
そして、その「思い込み」が原因で、子供が算数を嫌いになってしまうこともあるのだそうです。
そのような「思い込み」の代表的なもの3つを次に紹介します。
算数が苦手だから算数が教えられない。算数が得意な親なら教え方が上手
これはよくある思い込みですが、算数が得意だという親御さんは、子供に対して、「どうしてできないの?」というようにきつい言葉をかけてしまうケースも少なくないようです。
すると結果的に、子供は算数を嫌いになってしまうことがあります。
むしろ算数が苦手な親御さんのほうが、子供が「わからない」といってきた時に寄り添えるので、子どもは安心して学習でき、算数好きになるというケースもあります。
計算力を身につけるには学校の授業と宿題だけで十分
現在、小学生が使っている教科書には演習問題があまり出てこないため、学校の授業だけでは計算力身につきにくいようです。
実は、現在30~40代である親世代が子供だったころに比べると、圧倒的に現在の小学校での演習量は減っています。
自宅でドリル学習などの計算演習をすることが、後の算数の伸びしろを作るといっても過言ではないでしょう。
算数のつまずきは問題をよく読んでいないから
親御さんは、子供たちの教科書やテストの問題を読んだことがあるでしょうか?
というのも、最近の教科書や問題の文章は、大人が読んでも意外と難しい表現が多いのに驚きます。
決して、子供たちはめんどくさいからといって問題文を読んでいないわけではないのです。
例えば、「もとにする量」「くらべる量」「〇〇の数を整理すると」など、大人が読んでも難しいと感じる、独特な表現を使用している問題は決して少なくありません。
算数が苦手な子へ向けた具体的な対策とは
くり上がり、くり下がりが苦手な子への対策
くり上がり、くり下がりの計算は、子供達にとって小学校の算数の最初の関門です。
ここがクリアできなくて算数に苦手意識を持ってしまう子供たちも多いのではないでしょうか。
くり上がりが苦手な子供は、10を2つの数に分けることや、合わせて10になる数を見つけることといった「10の分解・合成」や、数を2つの数に分ける「数の分解」がすらすらできないということが原因です。
これを解決するためには、数を2つに分ける練習、特に10の数を2つの数に分ける練習をするようにしましょう。
「たくさん練習すれば、そのうち自然とできるようになるだろう」と、計算問題をさせ続けてもあまり解決にはつながりません。
子供がどこでつまずいているのかを見て、大人がその子に応じた対策を講じるようにしましょう。
具体的に、くり下がりの計算を例に挙げると、くり下がりのひき算の全部のパターンの問題を1枚の紙に書き出してみて、コピーをとり毎日同じ内容のプリントをくり返し解くようにすると、くり下がり計算の対策になります。
パターンは全部でたったの36問ですが、いきなり36問では多すぎるという場合は、半分の18問程度から始めてはどうでしょうか。
それでも効果は十分です。
「1分程度で1枚をサッと解き終える」ことができるようになったら、徐々に問題の数を増やしていくと無理なく続けられるでしょう。
図形や分数が苦手な子への対策
小学校の算数の図形問題でつまずく子供も多いようです。
図形の問題が解けない理由は、図形を「イメージできない事」が原因と言われています。
たとえば、図形の問題が苦手な子供には、サイコロを展開するとどうなるかや、立体的な円柱を描くにはどうすればいいのかが想像できないようです。
そうした苦手意識をなくすためには、まず紙に図形をたくさん書いてみる練習をしてみましょう。
はじめは平面の三角形や四角形といった簡単な図形から、慣れてきたら多角形をどんどん書いていきましょう。
その後に、立体的なテッシュ箱を描くにはどんな補助線が必要なのかといったことについて、大人が一緒に考えながら教えると良いでしょう。
パズルや折り紙、レゴブロックなどで全体像を把握しながら「図形」の勉強をするのもおすすめです。
また、小学校算数の苦手分野であげられるのが「分数」です。
小学3年生頃から分数の計算が始まるため、このあたりから急激に算数が不得意な子供が増えるようです。
分数についても、イメージがしやすくなるように、初めはピザなどといった丸い食材を食べながら分数を教えることをおすすめします。
ピースを取り分け、分数の概念や数え方から教えていき、徐々に分数の足し算、引き算を伝えていくと良いでしょう。
図形は頭の中で形を想像するのが難しいので、紙に描いて可視化するのがおすすめです。
図形をノートに書くことで、情報を整理し、理解しやすくなります。
図形を使ったパズルも数理的思考力を身につけることができるのでおすすめです。
百分率や割合が苦手な子への対策
高学年の5年生になると、算数で百分率や割合の考え方が登場します。
これは、なかなか紙上ではイメージがつきにくく一気に難しいと感じる子が増えます。
対策としては、この場合も身近な生活と結びつけて考えることがおすすめです。
実際の店舗やネットショップなどで実際に計算してみましょう。
「定価の○パーセント引き」というような問題がよくありますが、「20%引き」とあれば、一緒に実際の商品の値段を計算してみます。
こうして実生活に活用することができると、百分率が理解できるようになります。
子供に「算数を好きになってもらう」にはどうずればいい?勉強方法は?
「ミスすることはあたりまえ!」と考えよう
ちょっとしたミスで算数のテストの点数が低くなり、自分は算数が苦手だと勝手に思い込む子供は多いです。
けれども人間はコンピューターではないのですから、全て間違いなく完璧にできることはありません。
ミスをしたら、原因を探りその都度答えを正していけばいいのです。
ミスをしたら、「問題文を読み間違えているのか」「繰り下がり(繰り上がり)ミスをしているのか」「答を書くときに書き間違えているのか」など、どういうミスをしたのかを追求しましょう。
ミスに対する対策を大人が子どもと一緒に改めて確認することで、ミスは減ってくるはずです。
文章題は焦らずゆっくり。音読は3回する
急いで答えを出さなければならない時ほど、まずは落ち着いてゆっくりと問題文を読んで内容を理解する練習をしてみましょう。
くれぐれも焦って問題に取り組まないように気をつけます。
特に文章題に取り組むときには、焦らず問題文を読み込むこと、場合によっては音読すると良いでしょう。
1回読んで意味がわからない時には、3回読んでみましょう。
問題文を声に出すことで、黙読よりも理解できる場合が多いと言えます。
計算ドリルは毎日の習慣にする
歯を磨くように、計算問題は少しの時間でもよいので毎日取り組むことが大切です。
1日10分と時間を決めて家庭でもドリルなどを継続してコツコツと解くことが、計算力アップへの近道になります。
起床後に顔を洗ったら、計算ドリルを1ページ、夕食前に1ページ、などのように、毎日の習慣にしてしまえば、子供にも親御さんにもそれほど負担にならずに済むようです。
日常生活に楽しみながら計算を取り入れる
これは、小学校の低学年や未就学児に特におすすめの方法です。
例えば子供に買い物の時の「計算係」をしてもらってはどうでしょうか。
または、「いくらまでならお菓子を買っていいよ」と言って、子供に計算をさせてみましょう。
自分のおやつのこととなれば子供たちは積極的に取り組むでしょう。
もしも計算がストレスになりすぎるということであれば、いくつか商品の値段を子供に覚えてもらうことも良いでしょう。
記憶することは問題把握の第一歩です。
料理も生活に算数を取り入れるのにおすすめです。
実際にスケールや計量カップを取り出し測りながら分量の計算をしてみましょう。
また無意識に使いがちな「これ、あれ、それ」という言葉「こそあど言葉」を辞めるのも良いでしょう。
「あそこにあるそれ、とってちょうだい」と言うのではなく、「食器棚の上から二番目にある、丸いお皿をとってちょうだい」というように、普段から数字を交えた会話をするようにしましょう。
注意深く気をつけてみると、日常生活には足し算や引き算といった算数の要素がたくさんあります。
とにかく自信をもってもらうこと!
スポーツでも音楽でも、小学生には「基礎練習」が大切です。
同じように、算数も基礎練習は大切です。
どんなに成績が良い子でも基礎の計算を毎日取り組んでいると答える子供は少なくありません。
毎日の計算ドリルの習慣で計算ミスが減ることで、大きな自信になります。
また、以前できなかった問題が解けるようになったら大人がきちんと褒めてあげることも子供にとって大きな自信になり、算数が得意に感じるようになるでしょう。
まとめ
算数は、「ああでもない、こうでもない」と頭を使って試行錯誤しながら答えにたどり着く力が必要です。
そのため、試行錯誤して出した答えが間違っていても叱らないことも重要です。
子供は大人に叱られると萎縮してしまい、苦手意識が生まれてしまい、悪くすると算数を嫌いになってしまいます。
そばにいる大人たちは算数の上手な教え方にこだわるよりも、子供と一緒に悩み、解けたときに「すごいね!」と素直にほめることが大切です。
また、家庭で子供たちに楽しく算数を教えるには、生活と結びつけるとイメージしやすく覚えやすくなりおすすめです。
算数の基本は、足し算、割り算、かけ算、割り算といった計算となります。
学年に合わせた難易度の計算問題に愚直に繰り返し取り組むことが算数を得意にさせる第1歩だということを忘れないようにしてください。
算数の難易度が上がる高学年になっても、子供たちが算数を好きになれるよう、周りの大人たちは子供に伴走しつつサポートしてあげてくださいね。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。