ポジティブ・ネガティブという言葉はよく耳にしますが、具体的にどのような違いがあるのか考えたことはありますか?
子育て・教育においてもポジティブ思考を上手く取り入れることで子供に与えるポジティブな影響はさまざまあります。
そこで今回は、ポジティブ思考が与える子育てへの影響について解説します。
物事の捉え方は”十人十色”ですが…
他の人のふるまいをみて「こんな風に考えるんだ…」と不思議に思ったことはありませんか?
良し悪しは別にして、似たような出来事を体験したとしても、その捉え方や解釈は人によって結構違うものですよね。
物事を「いい風に」考えるか、「悪い風に」考えるか。
考え方の違いを表す「ポジティブ思考」「ネガティブ思考」というワードは、すっかりお馴染みのものとして定着しています。
そして、前者は楽観的、後者は慎重と言い換えることもできます。
どちらかといえば、何が起こってもネガティブ=慎重に考えるという人のほうが、日本人では多数派かもしれません。
その一方で、「ポジティブ思考」はその人の運気を上げ、「ネガティブ思考」は運気を下げるとも言われます。
「それも私の人生だから…」と開き直るのもひとつの手ですが、お子さんがいるとなると話は別。
ネガティブ思考はあなただけでなく、お子さんの人生にも悪い影響を与えるからです。
逆にポジティブ思考はお子さんにも良い影響を与えるようです。
意外と知らないポジティブ思考が与える子育てへの影響について、以下に詳しく解説していきたいと思います。
物事をポジティブに考えること(=プラス思考)のメリット
パーティや会議などの集まりの場で、思わず会話に参加したくなるような人、つねに会話の輪の中心になるような人っていませんか?
つねに前向きなことを口にする人は、まわりの人を明るくさせます。
「因果応報」とはよく言ったもので、まわりを明るくさせる人は回り回って自分にも良いことを引き寄せ、幸運が巡ってくることが多いものです。
物事をプラスに考えること、いわゆる「ポジティブ思考」にはそうしたパワーがあるようです。
とはいっても、度が過ぎないことが大事です。
耳障りのいい意見や感想を言うだけでは、単に楽観的な人と変わりませんね。
重大な問題や、慎重に考えたい事柄に対してもポジティブなことばかり口にする人は信用ならないからです。
そのような態度はしばしば「能天気」と呼ばれたりします。
たとえば、原子力発電所の是非や、オリンピック開催の是非、新型コロナの感染拡大対策のような、重大かつデリケートな問題について語る場があるとします。
そのような場では、「深く考えないで放っておいても大丈夫」のような、ただ単にポジティブな姿勢は非難の的になりかねません。
そうではなく、真っ当な科学的・政治的な知識や知見をもって、現実的な議論をする必要があります。
たとえ辛辣で厳しい現実的な意見を吐いたとしても、最後には関わる人たちを鼓舞するような口調で問題をうまく着地させ、前向きで建設的な意見を口にするような人は周囲から絶大な信頼を集めることでしょう。
つまり、正しい知識を前提としたうえで、適度なポジティブ思考が大事ということです。
物事をネガティブに考えること(マイナス思考)のデメリット
逆に、悪いことや心配事ばかり口にする人や、後ろ向きにばかり考えている人、あなたのまわりにも一人や二人いませんか?
「もし悪いことが起こったら…」
「でも、うまくいかなかったら…」
「いつまでも彼女(彼氏)ができない…」
「一生結婚できなかったらどうしよう…」
いわゆる「ネガティブ思考」「マイナス思考」と呼ばれるものですね。
ポジティブ思考とは逆に、まわりの人の気持ちを暗くさせ、結果的にあなたの周囲から人が遠ざかります。
回り回って運気を下げかねません。
それも真剣に悩んでいたり、ネタや冗談で言っている分にはいいですが、本気でネガティブな人の存在はときにまわりをウンザリさせるものです。
物事を抽象的に考えたり、問題の解決をいつまでも先送りしてできないこと(やらないこと)の言い訳をしていると人生が前に進みません。
もし、どうしてもできないことなら、クヨクヨせずに他のことに取りかかるほうが時間のムダにならないでしょう。
自分一人のことならまだ迷惑になりませんが、とりわけ他の人が何かチャレンジに取り組もうとしているときに、横から理由もなく感情的にネガティブなことを言う人は心象がさらによくありません。
うっとうしい、邪魔、と思われるのを通り越して、日々を真剣に生きている人に対して失礼ですらあります。
もちろん、適度な心配性や物事に対する慎重な姿勢は大事なことです。
とはいえ、度が過ぎるあまり、ネガティブ思考に陥るのはよくないため、何事も適度がよいということですね。
ネガティブな性格でも生きていける訳
このように、ネガティブ思考は幸運を遠ざけ、不運を引き寄せる傾向があります。
損や遠回りをした結果、あなたの人生に負の側面をもたらすかもしれません。
でも極論すれば、もしあなたが独身であれば、たとえネガティブな性格だとしても大きな問題は起こらないかもしれません。
なぜなら、学校や職場で付き合いのある方はしょせん他人です。
悪く言えば、性格が災いして人間関係に悪影響があったところで、その場が済めば済んでしまうことなのです。
周囲の人にとって授業や仕事の時間が終わってしまえば、あなたとは関係ないからです。
どうしてもあなたとの関わりが嫌と思えば、転校・転職・引越しなどで距離をとればよいことです。
若いうちはともかく、社会人になればある程度自分で好みの人間関係を築くことができるからです。
また、年をとるにつれ、あなたに対して「ネガティブだな…」と思っていた方も注意してくれる機会がだんだん少なくなっていくでしょう。
年をとるほど性格を変えることは難しいですし、目上の人を注意するのは非礼と考えるのが日本では一般的だからです。
そのうち、家族すらうるさく言わなくなるでしょう。
他人に対する親切な言葉さえ、「お節介」と思われがちなのが今の日本社会。
下手をすると恨まれかねないため、一度身についたネガティブ思考はそう簡単に矯正されません。
このようにして、ネガティブ思考の人は今なお多数存在しているわけです。
他人行儀ではいられない子育て
ところが子育てとなると、話は別です。
子どもにとって唯一無二の親である以上、他人でいることはできません。
何かあれば、お子さんの人生に文字通り責任を負う義務があります。
なにより、お子さんはあなたの遺伝子を受け継ぐ世界で唯一の存在です。
あなたの一挙手一投足をつぶさにみて育ち、意識的にであれ無意識的にであれ、あなたの日々の行動や思考を逐一真似することでしょう。
すると、いつのまにか可愛かったお子さんはあなたに似て、後ろ向きな発想からネガティブな言葉ばかりを発するようになります。
これが望んだ結果であれば何も問題ありません。
でも、あなたのネガティブな思考によって、お子さんが他人と人間関係がうまくいかなかったり問題を引き起こすようになったとしたら、はたして満足いく子育てができたといえるでしょうか?
思わしくない事件の引き金とは?
教育学は自然科学の分野と違い、仮説を検証して客観的な真理を見出すことが難しい学問分野のひとつです。
育児やしつけのあり方ひとつとっても、専門家によって意見や見解がかなり異なる現状があります。
そのため、多くの問題で未だに「人によって異なる/正解はない」といった曖昧な言い方にとどまっているものの、「ネガティブ思考」、すなわち子どもに対する親のネガティブな接し方については、そのマイナス効果がよく知られています。
近頃は年齢を問わず、親子間の悲しい事件も少なくありませんが、こうした殺伐とした事件の原因はいったい何なのでしょうか?
元をたどれば複雑な家庭環境や、いじめ、貧しい経済環境などの要因に行き着くこともありますが、原因はそれだけではありません。
なぜなら、そのような家庭や困難な環境のなかで育ったとしても、良好な人間に育つ子どもはたくさんいるからです。
逆に経済的に豊かで申し分なく、何不自由ない環境下で育った子どもが重大な事件を引き起こすこともあります。
親の背中をみて育つ子
このように、経済環境が等しく貧しくても問題なく育つ子とそうでない子がいたり、経済環境がまるで似ていないのにもかかわらず、似たような事件を引き起こす子が育つのはどうしてなのでしょうか?
理由としては、経済的要因ではなく心理的要因、つまり両親がネガティブ思考だったという可能性があるのです。
つまり、容疑者の幼少期の育ち方、親の子育てに問題があったと判定されるケースです。
人の特徴的な性格や気質は、あたかもウイルスのごとく、長時間一緒に過ごすと容易に感染するものです。
これは学校や職場、サークルや宗教など、あらゆる人間のグループや集合体にいえることです。
ネガティブ思考が子育てに与える影響
なかでも家族は、最も時間を長く過ごす間柄です。
世間に”似たもの夫婦”が多いのはそのためですが、では子どもはどうでしょうか?
ほとんどの子どもにとって一番長く時間を過ごす人は親です。
したがって、親から受ける影響は決定的なものになります。
遺伝的な形質だけでなく、物事に対する考え方や思考のクセ、困難な状況下での対処法など、心理的にもさまざまな観点で似てきます。
つまり親がネガティブ思考だと、子どももその影響を受けやすくなってしまうのです。
ネガティブな言葉を毎日シャワーのように浴びていると、大人でさえ思考がおかしくなりますよね。
まだ頭のやわらかい子どもならなおさらで、精神的に歪んだ構造がお子さんのなかに次第に形作られていきます。
そして何年~何十年と経った頃、溜まったマグマが噴出するかのように、重大な事件を引き起こすことになるのです。
ポジティブ思考は子育てにプラス
他方、「ポジティブ思考」がもたらす教育のプラス効果についても一定の見解が出ています。
性格がとても明るく前向きな両親のケースを考えてみましょう。
何が起きても、たとえ不幸なことがあっても、いつでも笑顔。
どんな状況でもハッピーで明るく、歌って踊って暮らすような家庭は、子どもにとって楽しく愉快で頼もしくみえることでしょう。
一説によると、ポジティブ思考は子どもの自己肯定感やGRIT を高めるとされています。
「GRIT」とはGuts (度胸)、Resilience (復元力)、Initiative (自発性)、Tenacity (執念)のことで、日本語では”やり抜く力”とも称されます。
GRIT は近年、子育ての重要な要素として提唱されており、「成功者の共通点には”GRIT”が見られる」 とも言われています。
つまり、ポジティブ思考の親のもとに育った子どもは人生に対して前向きな姿勢をとることの大切さを学び、たくましく生きる可能性が高いということです。
過度なポジティブ思考は禁物
さらに、ポジティブ思考の持ち主はむやみに不運を引き寄せるネガティブ思考に陥らないことで、悪い事件にも巻き込まれづらくなるでしょう。
つまり、ポジティブ思考にはGRITを引き寄せるプラス効果だけでなく、そうしたマイナス効果を回避する利点もあるということです。
では、親がポジティブ思考であれば、子供の人生に「幸福」をもたらすのでしょうか?
基本的にはイエスですが、必ずしもそうとはいえません。
誰の人生であれ、起こることは全て予測できず、また運も左右するからです。
さらに、先に述べたように、単に楽観的なだけのポジティブ思考だと熟慮しない人間に育つ可能性もあります。
現代社会では熟慮する人間が求められるため、適度なバランスもまた大事になります。
留意点:反面教師のケース
以上のように、親の気質や性格は子育てに影響するファクターとしてとても大きいものです。
とはいえ、「子育てに影響するファクターが引き起こす結果」としてはそう単純ではなく、複雑な部分もあります。
つまり、親がネガティブな性格だからといって、その子どもが必ずしもその性格を受け継ぐわけではありません。
たとえば、ある家庭において母親のネガティブな性格が災いして日々の生活に支障をきたしているとします。
現実には、引き起こされた問題を家族内のほかの誰かが解決しなければなりません。
もし、子どもが解決する役目を引き受けた場合、問題解決の試みを繰り返すうちに、ポジティブな性格の人間へと成長することでしょう。
小さい頃から、親の代わりに問題解決する成功体験を積み重ねるからです。
これはいわゆる「反面教師」のケースですが、このような望ましい結末を迎えるにはやはり親子の厚い信頼関係が前提になります。
愛情が注がれた子どもだからこそ、困り果てた親を助けてあげようという気持ちが芽生えるのです。
結論としては、親子の愛情や信頼はポジティブな感情のもとで育まれ、反対に愛情不足や信頼欠如はネガティブな感情のもとで育まれるため、「反面教師」のケースにおいてもポジティブ思考は望ましいといえるでしょう。
対処法は”ネガポジ変換”
ポジティブ思考は子育てに良い影響をもたらす一方、ネガティブ思考は子育てに悪影響をもたらすことがよくお分かり頂けたのではないかと思います。
では、いま現在、ネガティブ思考気味の親御さんはどうすればよいのでしょうか?
すぐにでも考え方を改めることができれば良いですが、「そう言われても、どうしてもポジティブ思考にならない…」とまたもやネガティブ思考に陥るかもしれません。
「ネガティブ思考からポジティブ思考に」どうやって考え方を変えればよいのでしょうか?
とっておきの方法、それは”ネガポジ変換”です。
ネガポジ変換とは、同じシチュエーションでも言い方次第でニュアンスを180度反転させる方法です。
有名な例に「コップの水理論」というものがあります。
この理論の提唱者はピーター・F・ドラッカー(1909〜2005)です。
ドラッカーはオーストリア出身の著名な経営学者で、社会において企業が果たす役割について深い関心をもちました。
組織内で人をよりよく活かす方法について生涯にわたって研究し続けた人物で、会社経営やマネジメントの神様として今も世界中の読者に親しまれています。
コップに入っている水をみてどう思うか?
では「コップの水理論」について説明しましょう。
あなたの目の前にひとつのコップが置いてあるとします。
もしも、そのコップに水が半分入っているとき、あなたならどのように捉えるでしょうか?
「もう水が半分入ってしまっている」、あるいは「まだ水が半分入る」のどちらでしょうか?
前者と直感的に答えた人は、物事に対する考え方を改めたほうがよいかもしれません。
ドラッカーはこのシンプルな問いに対し、以下のように答えています。
「コップに『半分入っている』と『半分空である』とは、量的には同じである。だが、意味はまったく違う。とるべき行動も違う。世の中の認識が『半分入っている』から『半分空である』に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる」
(P・F・ドラッカー『イノベーションと起業家精神』)
まだ入れる余地がある、と思うことがポジティブな考え方になるというのです。
言い換えれば、いっけんピンチのように思える状況もチャンスに捉えることで、自分の人生の変化に対して柔軟に対応できるということです。
さらにドラッカーはこのような状況のときこそ、「イノベーションが生まれる」としています。
見事なまでの、”ネガポジ変換”の好例ではないでしょうか。
ネガティブ→ポジティブの変換
日本にも、この”ネガポジ変換”の実践を勧める方がいます。
著名な書道家である武田双雲さんです。
著書『人生に幸せ連鎖が起こる!ネガポジ変換ノート』(SBクリエイティブ、2016年)では、ネガティブな言い方をポジティブな言い方に言い換える例を挙げています。
たとえば、
(1)「麦茶でいい→麦茶がいい」
(2)「あいにくの雨→めぐみの雨」
のような例です。
(1)は、麦茶「で」いい、という消極的・受動的な言い方より、麦茶「が」いい、という積極的・主体的な言い方のほうが気持ちもポジティブになり、周囲の印象もよくなるというわけですね。
(2)は、「あいにく」という不運を示唆するネガティブなワードを「めぐみ」という感謝を表すポジティブなワードに言い換えています。
このように、日頃起こり得る些細なシチュエーションにおいても、ちょっとした発想でポジティブな捉え方に変換できることを武田さんは説いています。
行動パターンを変えるのは意外に大変ですが、言い方を変えるだけならそれほど難しいことではありません。
ネガポジ変換はさまざまな状況で用いることができる汎用性が高い方法なので、ぜひ試してみてください。
まとめ
人生は平等なので、どんな人の人生でも良い事と悪い事が同じくらいの頻度で起こるものです。
悪いことが起こったとき、ちょっとした言い方で物事をポジティブに捉えられる人は「ピンチをチャンス」に変えることすらできるのです。
すべては心がけ次第ということですね。
また、ピンチのときもポジティブな言い回しができる人は、まわりからも人が集まってきやすくなります。
結果として運気が上昇し、幸せな毎日を送ることができるでしょう。
こうしてポジティブ思考をものにすれば、あなたの言葉のシャワーを毎日浴びて育つ、大切なお子さんの心の発育にも必ず良い影響をもたらすことになります。
ぜひ意識して、今日からポジティブな子育てを心がけるようにしてみてくださいね。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。