大学受験の準備は早ければ早いほど良い、どれだけ早く始めても早すぎることはない、といわれます。
では、具体的に何を早めにすれば良いのでしょうか。
今回は、特に大学受験準備を早めにするべき理由から、その具体的な内容まで詳しく解説していきます。
早めに志望大学と学部を決める
大学受験は高校入試と違って受ける大学、学部によって試験科目から出題範囲、出題の傾向、難易度まで大きく異なります。
高校入試では、私立を受験する子は例外ですが、公立高校を受ける場合、偏差値トップの高校でも、一番下の高校でも、同じ問題が出題されます(一部裁量問題の例外あり eg. 北海道)。
だから、志望校がどこでも公立高校なら同じように対策をすれば済みます。
もちろん、受験する高校のレベルが高いほど正答率が高くなければいけませんから、より勉強量は必要です。
ただ、対策の方向性は異なりません。
大学受験は志望校・学部によって試験が異なる
一方で、大学受験は異なります。
高校では、多くの子が公立高校を目指しますが、大学では、国公立を受ける子のほうが少数派です。
早稲田や慶應、上智、明治、青学といった有名な私立大学を目指して、その対策をする学生が大勢を占めています。
なかには、センター試験(2020年より大学間共通テスト)で志望校に合格する人がいます。
これは文字通り、どこの大学を志望している人も同じ問題を受けます。
ただこの場合も、共通テストで大学を決める人は少数派です。
そこで多くの人は、各大学で独自の問題が出題される個別入試を受けます。
志望校の試験科目を定めて早めに取り組む
そのため、多くの人にとって試験対策という意味において、早期に志望校を決める必要があるわけです。
特に文理選択や、同じ理系でも物理を選ぶのか生物を選ぶのか、などは志望校の合否にも関わってくる大きな問題です。
このとき、明確に志望校や志望学部が決まっていると選びやすいです。
明治大学農学部を志望する場合(具体例)
たとえば、農学部を受験する場合、物理は試験科目にないことがあります。
明治大学の農学部は理科については、化学と生物を設置しています。
そのため、高校で物理を取っても、受験には直結しません。
もちろん、大学に入ってから、社会に出てからといった長期的な視点に立てば有用です。
ただ、それでも農学部の場合、生物の知識がそれこそダイレクトに生きてきます。
物理をやることがあっても、化学に近い内容であることが多いです。
さらにいうと、物理をやったことがない人が大学から物理をやるよりも、生物をやったことがない人が大学から生物を勉強するほうが難しい、とよくいわれます。
理由は、物理は数学のように公式的な考え方を理解して、あとは計算というシンプルな勉強でクリアできます。
一方で、生物は公式を憶えるほど単純ではなく、まず理解するまでに時間がかかります。
■早めに学部を決めると何を勉強すべきか明確
生物は憶える内容が多かったり、理解したうえで応用したり、という勉強になります。
そこで物理選択者がきつい思いをする例があります。
農学部で生物を勉強しないわけにはいきません。
そこで、物理か生物を選ぶなら、やはり生物を選んでおいて、物理は大学に入ってからでも必要に応じて学ぶのが基本でありおすすめです。
志望校が決まってなくても早めに取り組む
と、このように明確に学部が決まっていればダイレクトなアドバイスが可能です。
一方で、決まっていない場合には、とりあえず汎用的な助言をすることになります。
農学部を選ぶのは、どちらかといえばマイナーです。
理系でメジャーなのは、工学部や理学部、早稲田でいえば理工学部です。
汎用性を重視した科目選択をする
そして先に出した汎用性という考え方からすると、やはり生物より物理のほうが高いです。
早稲田の先進理工学部を例に取ります。
■学科別試験科目
物理学科:物理、化学
応用物理学科:物理、化学
化学・生命化学科:物理、化学
応用化学科:物理、化学、または化学、生物
生命医科学科:物理、化学、または物理、生物、または化学、生物
電気・情報生命工学科:物理、化学、または物理、生物、または化学、生物
このようになっています。
一目で分かる通り、どの学科にも物理が入っています。
しかし、生物は6学科中3学科と半分です。
受験できる選択肢が増えて、汎用性が高いといえるのが物理です。
とりあえず理系だけれど、明確に学部が決まっていないというのであれば、やはり物理を選んでおくのが安全です。
早めに志望校と志望学部を決める方法
大学受験に向けて、志望校を、さらに志望学部を早めに決めたほうが良いと述べました。
とはいえ、なかなか高校一年生など早い段階で明確に自分のいきたい大学と学部を決められる人は少ないです。
それこそ、偏差値的に一番のところにいきたい、というのであれば決めやすいです。
文系なら東大文一、理系なら東大理三といった感じです。
そうでないと、とりあえず早慶など有名大学、といったところで学部までは難しいです。
偏差値の視点だけで選ぶのは難しい
偏差値的な大学のランキングは、書籍などで調べずとも世間的にいって周知の事実として確立しています。
東大、京大、一橋といった一流国立の下に、早慶といったトップ私大があります。
さらに明治大学や青山学院といった私立大学も人気で偏差値が高いです。
とりあえず偏差値が高い有名大学といっても選択肢がいくつもあり、学部まで併せれば相当数に及びます。
このなかから選ぶのは、やはり偏差値的な視点だけでは難しいです。
オープンキャンパスが有効
そこでおすすめなのが、オープンキャンパスにいく方法です。
オープンキャンパスは全学部同時に、というのではなく、学部別に行われているケースがあります。
たとえば、日本一のマンモス校である日本大学は、学部別にオープンキャンパスを実施しています。
特に日本大学は学部によって雰囲気がかなり違います。
学園祭も学部ごとの特色が分かる
学園祭も大学や学部の雰囲気を知るうえではもってこいです。
学園祭では学部や学科の看板を背負って企画がなされていたり、ゼミ単位、サークル単位で出し物をしていたりします。
この学部学科の〇〇というゼミ、ということまで分かるので、具体的にそのカテゴリごとのイメージをつけやすいです。
オープンキャンパスで早めの志望校選びが可能に
先に例に挙げた日本大学はキャンパスの数も多く、学部別に異なっています。
実際に色々な学部のオープンキャンパスに参加してみることで、その学部の雰囲気や実際のキャンパスの様子などを把握できます。
そのときの印象は、そのまま志望校や学部選びに直結します。
この人たちと同じ大学に通いたい、このキャンパスで学生生活を過ごしたい、とモチベーションにもつながります。
なんでもないときに行ってみるのもおすすめ
学部ごとに学ぶ棟が違う場合には、普段のなんでもないときに訪問するのも有効です。
色々な学部の棟に入って雰囲気を見たい場合、最初に警備室に今高校生で将来この大学を受験することを考えているから見学したい、と一言いっておくと安心です。
上智大学のように一つのタワーに色々な学部や大学院生が集結していると、行ってみてもどの学生がどの学部で、となかなか分かりません。
しかし、東京大学のようにいくつも建物があって、建物ごとに法学部や経済学部、工学部などで分かれていると、その建物にいる学生はほぼ間違いなくその学部の人です。
なので雰囲気などをやはり区別的に把握できるので学部選びに貢献します。
いつでも良いからとにかく訪問してみる
オープンキャンパスにせよ学園祭にせよ平常時のキャンパス訪問にせよ、とにかく早く行動することが大切です。
確かにいくつもの大学を訪問するのは面倒ですし、手間がかかります。
しかし同じ大学に何度も行く必要はありません。
一度いけば良いわけですから、一年次に一度だけの面倒だと割り切って足を運ぶのが良いです。
地方に住んでいる人であれば、時間やお金のコストが跳ね上がります。
この場合も、観光気分で良いですから、2泊3日などで予定を取って色々な大学を廻ってみるのがおすすめです。
いくら評判が良くても自分には合わないことがある
人からの評判と、自分が持つ感覚とは異なることがあります。
具体的にいうと、人からの評判は良い大学でも、実際に行って見てみたらなんか違う、自分には合わない、と思う可能性があります。
賃貸物件選びとパラレルに考えられる
少し賃貸マンションを選ぶケースと似ています。
高校生だとまだ経験がないことがほとんどですが、地方から都内の大学に進学する場合、都心で賃貸マンションやアパートを探すことになります。
このとき、入居するまで実際にその物件に足を運んで内見することなく契約をしてしまうと、いざ入ってみて写真で見たイメージと全然違う、ということが起こります。
不動産情報サイトなどに掲載される写真は、やはりできるだけ魅力的に写るように配慮されています。
ネガティブ情報は極力排されていますから、実際に見たときと印象に齟齬が発生する例が多いです。
■パンフレットやホームページはあくまで広告
大学も同じです。
パンフレットやホームページは、やはりその大学が魅力的に見えるように、読んだ人、見た人がその大学に入りたいと思ってもらえるように広告として設計されています。
そのため、実際に足を運んで見たときに、イメージとの違いが生じるわけです。
パンフレットでは太陽が燦々と照り付け光輝くキャンパスに見えても、実際に行って見ると外壁がくすみ、澱んで見えるかもしれません。
公式ホームページのインタビューでは、利発そうで爽やかな好感の持てる学生ばかりがでていても、実際にキャンパスに行ったら、大声でバカ騒ぎをするウェイ勢ばかりかもしれません。
クリーンで大人な雰囲気に満ちているかと思いきや、講義室の前でも平気でおしゃべりに興じる人ばかりで幻滅するかもしれません。
■結局、行ってみないと分からない
なかにはイメージとのギャップに許容性が持てたり、そのほうが良いと感じたりする人がいます。
人それぞれですが、自分がどちらになるのかは行ってみないことには分かりません。
いくら実際に通っている先輩が良い大学だと絶賛していても、自分が同じように感じるかは分からないというわけです。
だからこそ、実際にキャンパスに行って自分の目で見て感じることは極めて重要です。
行かずに評判だけで決めていて、いざ入ってから合わないと悟る、というのは避けたいところです。
特別の入試方式は早めに取り組むのが必須
一般入試については、既に多くの情報が蓄積されています。
ネットで検索をしたり、本屋に行ったりすれば、簡単に過去問や対策がヒットします。
しかし、大学では新たな入試方式が採用されることがあります。
特に歴史が浅かったり、自分が受ける年から始まったりする方式の場合、情報収集に難儀します。
一般入試以外の特別な入試を受けることを検討している場合には、より早くから動いて情報収集に時間をかけ、準備を始めるのが賢いです。
京都大学の特色入試の例
例として、京都大学の特色入試があります。
こちらは、2020年7月現在、令和2年分と平成31年分の過去問しか公式で開示されていません(※)。
※参考:京都大学 特色入試の過去問題
情報が錯そうしていて、オリンピックにいくほどの実績がなければ受からない、という声もあります。
この辺も、実際に早くから動き出して情報を集めておくと、より有利な対策が可能になります。
たとえば、実際に受かっている人は、オリンピックに出るような輝かしい実績がある人ばかりではありません。
それこそ、ボランティアや生徒会、クラブ活動、英語スピーチなど、何か自分の個性を生かした活動で努力をしたこと、すなわち特色が求められます。
早めの大学受験準備で問題集を何度も回せる
早めに勉強をすることのメリットとして、それだけたくさん参考書や問題集を回せることが挙げられます。
受験では、とにかく厳選したテキストを何度も繰り返し、いつでもアウトプットできるように頭に定着させておくことが大切です。
問題集の数を増やすのではない
問題集はむやみにあれもこれも購入するのではなく、これと決めた一冊を完璧になるまで繰り返したほうが良い、ということは、何も塾ではなくても学校の先生の多くが口を揃えて言います。
これはまさしくその通りで、問題集はまずは一冊をやり切ること、やり切ったら今度は最初から繰り返して完璧に定着させること、これが大事です。
問題集を一冊通したら、今度は新たに問題集を購入して、さらにそれもやったらまた新たな一冊を買って……、というのは一見してたくさん勉強しているように見えますが、最初の問題集をいざ試験前にやってみたら、多くを忘れている、ということがあり得ます。
本当に何度も繰り返して諳んじることができる域までいったら、新たな問題集を買うのは結構です。
しかし、一回通しただけでもうクリアした気になって次のものへ進むのは、望ましい流れではありません。
早めに受験勉強を開始するメリットとしてこれぞと決めた問題集を何度も繰り返せることがあります。
つまり、時間があるからといって10冊も20冊も問題集を量を増やしたら、逆にデメリットになり得ます。
信頼できる問題集を見つけるには
ここで、より原始的な悩みとして、これぞという問題集を決められないという人がよくいます。
確かに、書店にいってみれば多くの参考書や問題集が並べられ、amazonにも色々な種類のものが出ています。
学校での評判やネットの口コミを参考にするのも良いです。
塾に通うことを検討している子は、入塾相談のときに使う問題集も聞くのがベストです。
塾でテキストを作っていれば、それだけやっていれば、と言うかもしれませんし、作っていなくても市販のおすすめのものを教えてくれるはずです。
塾の先生に聞くメリットは、志望校に照らした最適なものが知れる点です。
たとえば、日大の法学部を目指している学生が、東大の法学部を目指す学生が使うのと同じ問題集を使っては、オーバースペックといえます。
国立か私立かでも変わってくる面があります。
そこで、塾の先生は生徒の志望校に照らして最適な問題集を提案してくれます。
自分で自信を持って選べるものがない場合、このように信頼できる人に相談して決めるのが安全です。
疑念に負けずにこれと決めた一冊を信じる
良い問題集を選んでも、まだ問題が解決しないことがあります。
それは、使っていて、「なんか合っていない気がする」という問題です。
隣の芝は青く見える、とはよくいったもので、友だちが使っている問題集のほうが解きやすいのではないか、解説が丁寧で記憶に適しているのではないか、と次々と疑念が湧いてきます。
ただ、その多くは杞憂で、自分が選んだ問題集には致命的な弱点はなく、それを信じてやり通せば良い場合がほとんどです。
本当に稀に問題集の質が悪いものや、その人に決定的に合っていないものがありますが、可能性としては高くありません。
とはいえ、疑念がどんどん膨らんできて、自分の勉強に自信が持てない、というのは望ましい状態ではありません。
このときは、学校の先生や塾の講師に使っている問題集を見せてみて、それが良いかどうか意見を聞くのが良い方法です。
信頼のおける第三者の客観的な意見があれば、これまでとまた違ったモチベーションで問題集に臨めます。
苦手科目に余裕をもって臨める
早めに受験勉強を始めることのメリットとして、苦手科目に余裕をもって取り組めることがあります。
言い換えれば、早めに受験勉強を始めて、余裕を持って苦手科目の克服に臨むべきです。
得意科目を伸ばすよりも、やはり苦手科目を克服することのほうが難しく、時間がかかります。
苦手科目の場合、しっかりと初心に帰って基礎から理解していくほうが、解決の近道になることがよくあります。
受験までの期間が短くなってくると、かなり初歩的な事項から勉強をすることに焦りを感じてしまうことが少なくありません。
それこそ高校三年生のときに、中学一年生の勉強から始めていては、不安を感じるのも当然といえます。
しかし、それが高校一年生からスタートだったらどうでしょうか。
一年生のときに、中学の復習から始めるのは何もおかしいことではありません。
さらに受験までの期間があるので、自身のメンタルとしても無用な焦りを感じずに済みます。
受験勉強を早めに始めることは、苦手科目に腰を据えてじっくり向き合える、そういった大きなメリットが存在します。
受験生が早めにやることについてまとめ
受験生が大学受験に向けて早めにやるべきことは、まずは志望校・志望学部を明確にすることです。
偏差値的な要素だけで決められる人ばかりではないので、できれば実際にキャンパスに足を運ぶのが良いです。
コロナで難しくても、オンラインの企画を出す大学が多いですから、これを利用します。
他には、早めにこれという問題集を決めて何度も繰り返したり、特に腰を据えて基礎からみっちり苦手科目の克服に当たったり、などが挙げられます。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。