中学の内申点は、高校入試において合否に影響する重要な要素です。
そのため、学生自身も親も一点でも上げたい、と考えます。
そこで今回は、内申の計算から評価の方法、そこから見えてくる評点を上げるコツにいたるまで、詳しく解説していきます。
内申点の考え方は各都道府県により異なる
内申点の考え方は、各自治体によって異なります。
北海道は1年生の内申から大事
北海道の場合、他の自治体と比較してもシビアに評価されるといえます。
自治体によっては、1年生のときの内申は考慮されないことがあります。
しかし、北海道では1年生からの内申が高校入試で審査の対象になります。
そのため、まだ一年生だから、という理由で気を抜くわけにはいきません。
中学に入学をすると同時に本腰を入れて頑張ることが必要です。
北海道の入試は3方式で基本どれも内申を評価
北海道の公立高校入試では、複数の方式があります。
高校によっては学力検査の点数でのみ評価する方式が用意されています。
しかし、それでもほとんどのケースで、内申+学力検査の総合点によって合否が判断されます。
内申度外視で学力検査のみで合格を決める生徒は、極めて少数派といえます。
内申点の計算方法
内申点の出し方も、各都道府県で違いがみられます。
北海道では、具体的に以下のように算出されます(※)。
北海道の場合
中2学年末・9教科合計×2├すべて五段階評価
中3学年末・9教科合計×3┘
以上のように算出されます。
中学三年の成績が3倍になるので、最も大事です。
ただ、当然に1年次、2年次もそれぞれ2倍で考慮されるので、当然に悪い年があれば足を引っ張られます。
内申の最高点は315点です。
9教科オール5だと45になります。
それを単純に1年~3年のトータルで7倍にすれば315点になる計算です。
北海道には「内申ランク」がある
さらに北海道の特徴として、内申ランクというものがあります。
内申点の点数レンジが定められていて、どの範囲に自分がいるかでランクが決まります。
「●●君の内申ランクはBなんですよね、うちの子はCだから〇〇高校は難しいかも」などという会話が保護者の間でみられます。
具体的な内申ランクの換算は次の通りです。
■内申点ランク換算表(ランク 点数レンジ)
- A:315~296
- B:295~276
- C:275~256
- D:255~236
- E:235~216
- F:215~196
- G:195~176
- H:175~156
- I:155~136
- J:135~116
- K:115~96
- L:95~76
- M:75~6
このように、A~Mまで13段階の内申ランクがあります。
難易度の高い高校になればなるほど、より高いランクが求められます。
内申点を上げるコツ
絶対評価が内申点アップの鍵になる
内申点を上げる方法として、まず理解したいのが、評価方法が絶対評価だということです。
これが非常に重要です。
2002年より前は、相対評価制度が導入されていました。
これは、極端にいえばクラスの生徒全員が定期テストで100点でも、そのうちの数人にしか5をつけることができない制度です。
一方で、絶対評価は先の例でいえばクラス全員に5をつけることが可能です。
絶対評価は先生の裁量がより大きい
つまり、先生の裁量がより広くなった制度が絶対評価です。
ネガティブな表現でいえば、恣意的な判断もできるといえます。
たとえば、テストの点数が90点で、普通に考えれば5に値するけれど、授業態度がいまひとつだから4にしようとか、一方で、点数は80点だけど授業も積極的に受けていて努力しているから5にしてあげよう、などです。
相対評価だと、どうしても誰かを5にすれば他の誰かを4にしなければならないなど、評価を上げるのに一定のハードルがありました。
しかし、絶対評価では特に5が何人とも決まっていないので、誰を5にしても良いですし、逆に多くの人に1をつけても良いわけです。
先生に気に入られれば5を獲れる
このように絶対評価制度は先生の裁量こそ物を言います。
テストの点が5に値しなくても、他の要素をプラスに判断してくれれば5に上げてもらえます。
成績を上げる一番良い方法は、当該科目の担当教師に好かれることが一番です。
逆に授業態度が悪かったり、提出物もちゃんと出さなかったりして嫌われていると、いかにテストの点数が良くても思うように内申が伸びません。
心の奥では苦手な先生だと思っていても、態度に出さずに上手に付き合っていく姿勢が、ひいては自分の進路のために有利に働きます。
積極的な姿勢が先生に気に入られる
一般的に、積極的な生徒は先生に好まれる傾向があります。
それこそ、授業中に積極的に手を挙げて質問をしたり、先生の質問に答えたりすることです。
2020年よりの教育改革によって、さらに双方向型の主体性が求められる授業に変わっていきます。
今までよりも授業に対する積極的な姿勢が評価されやすくなります。
■内気な子も積極性を見せることは可能
ただ一方で、どうしても内気な性格で授業中に自ら手を挙げて答えるなんてできない、極度のストレスが溜まって学校に行くのも嫌になってしまう、という人がいます。
このような人は、無理をする必要はありません。
できるだけ先生と目が合うように真面目に授業を聞くだけで大きく違います。
■授業後の質問が効果てきめん
そして、授業中の比較的にフリーな時間や、授業後に先生のところへ行って質問をするようにします。
内容は、やはり授業に関連したことや、勉強方法などが良いです。
授業中に率先して手を挙げるのではなく、皆が特段注目していない状況で、先生のそばに行って個人的に質問をするのであれば、特別に大きな勇気はいりません。
ただこの質問を何度もすることで、先生にはやる気があって真面目ないい生徒だと、印象付けることが可能です。
たとえ授業中に一度も手を挙げなくても、先生から好印象になり、積極的に授業に取り組む生徒だと評価されることもあり得ます。
■内申を上げるにはテストと授業態度の両軸が必要
シャイな子も、絶対評価を有利に使えます。
勉強をしてなるべく定期テストで良い点を取るのは当然の前提です。
それを踏まえたうえで、さらに先生から好かれる努力をすると、内申点が目に見えて良くなる傾向があります。
イメージしてみてください。
オール5の生徒が、職員室で「あの子は授業も真面目に聞かないし態度は悪いしどうしようもないな……」などと話題に上るでしょうか。
えてして先生たちから好印象を持たれています。
もちろん、先生にゴマをする必要はありません。
ただ、真摯な姿勢で真面目な取り組みをアピールするという気持ちでいくと、実際に自分の勉強にも評価にも良い影響を及ぼすことは間違いないです。
つまり、絶対評価になったいま、内申点を上げるためにはテストの点数だけ良くても、授業態度だけが良くても、どちらでもダメだということです。
テストの点数を上げながら、授業に積極的な姿勢を見せて印象を良くする、この二つを同時にやることが、最も内申点アップに寄与します。
実技科目(副教科)の重要性を認識する
北海道の内申点として、国数英理社の主要5科目の他、美術、音楽、技術家庭、保健体育といった実技4科目もまた平等に考慮されます。
すなわち、主要5科目がオール5で実技4科目がオール2の子よりも、単純に実技を含めた9科目でオール4のほうが内申ランクは上になります。
具体的にいうと、前者が内申点231で内申ランクDになり、後者が内申点252で内申ランクCになります。
このように、内申点は軽視されがちな実技科目の出来によって大きく左右されます。
実技は軽視している子が多いからこそ上げやすい
実技科目は、わざわざ熟に通って対策をする例は少ないです。
5科目は多くの子が塾に通って勉強をしますから、ここで成績を上げるのは実技に比べると難しいです。
つまり、内申点を手っ取り早く上げるには、実技の成績を上げるのが最も簡単で早いです。
実技科目は適性が必要?
副教科は、適性があると考える家庭がよくいます。
たとえば美術なら、どうしても絵が上手な子のほうが有利、という具合です。
■「美術は絵の上手い子が有利」の真実
これは、完全に的はずれではないですが、真を打っているとも言い難いです。
すなわち、絵が上手な子はすべからく絵を描くのが好きであり、美術の授業を自然と楽しめることにつながります。
授業を楽しんで受けられるということは、何よりも前述した先生の印象に良い影響を与えます。
意欲的な姿勢になりやすく、それが積極性とダイレクトに結びつきます。
丁寧に作品を仕上げますから、提出物の質も高く、努力の色も窺えます。
そしてペーパーテストも悪くなければ、当然に成績が高く出ます。
一方で、絵が下手で苦手意識があると、どうしても美術の時間を楽しめません。
テキトーな作品を提出して、本人は自分は絵が下手なんだから仕方ないと言い訳をしています。
こういった子の成績が伸びないのはいわば当然といえます。
■絵が上手い子は提出物の質と授業態度が良くなりやすいだけ
つまり、大事になってくるのは提出物に対する注力と、授業に対する意欲的な態度です。
結果として、たとえば提出物の絵が下手でも構いません。
決して上手ではなくても、色の使い方を工夫して、濃淡を組み合わせたり、重ねたり、細かく色分けをしたり、様々な努力の跡が作品から感じられれば、それは良い評価につながり、質が高い提出物だといえます。
さらに授業中も意欲的に質問をして、たとえば木々の模写なら「どういった色の組み合わせをしたらより幹の質感が出せるか」、「影の部分を上手に表現するにはどうたらいいか」といった内容です。
こういう質問を繰り返して、そのうえでアドバイスを踏まえたことを絵に表現すれば、それは先生も感じ取ります。
「あ、この子は自分がアドバイスしたことをこういった感じで表現しているな」と分かります。
先生は質問に対して自分が答えたことを憶えていることが多く、それを下手でも表現しようとしている跡が見られれば可愛く感じるものです。
■他の実技科目でも同じ原理が通用する
これは、他の実技科目でも同じことです。
歌が下手でも、裁縫が苦手でも、運動神経がなくても構いません。
大事なのは、それだからテキトーでいいと言い訳をしないことです。
下手でも上手くなれるように頑張っている、先生のアドバイスを受けてそれを実現しようとしている、そういった姿勢を見せることが高評価につながります。
逆に言えば、それがないと実力に比して低評価になることもあり得ます。
クラスで一番足が速くて運動神経が良い子も、授業中はロクに先生の話も聞かずに遊んでばかりいたら、いざ本番の100m走でクラスの誰よりも速く走り抜けても5がつきません。
反対に、クラスで一番足の遅い子が、どうやったらもっと速く走れるかを授業のときに積極的に先生に質問をして、教えられたフォームを体現して走り抜ければ、結果的にビリのタイムでも5がつくことがあり得ます。
このように、主要5科目と基本性は異なりません。
授業に対して積極的に取り組み、先生からの印象を良くすることが大切です。
定期テストもちゃんと勉強する
あと盲点になりがちなのが、実技のペーパーテストです。
実技科目はどうしても提出物や実技試験が重要視されますが、もちろん定期テストも重要な評価項目です。
実技の定期テストは、基本的に対策が簡単です。教科書の指定の範囲を憶えたり、授業中のノートをやはり憶えておくだけで高得点を取れます。
定期テスト対策では、主要5科目に気を取られるあまり、実技科目の勉強がおろそかになっている子が非常に多いです。
授業への取り組みで高評価でも、定期テストの点数が悪いと5を取れません。
少し早く定期テストへの勉強を始めて、実技科目の勉強時間もしっかりと確保しておくことが大事です。
おろそかにしている子が多い分、しっかりと対策をしていると差をつけやすいです。
実技にも主要5科目と同じ情熱を持つ
このように、実技も主要5科目と同じように、授業への積極性(提出物や実技テストを含む)と定期テストの得点が2本柱です。
ただ、実技のほうが主要5科目に比べて、より定期テストよりも授業への積極性が重視される傾向があります。
いずれにしても、実技だから、苦手だから、と軽視して力を抜くのではなく、主要5科目と同じくらいの意識で取り組むことが、ひいては総合的な視点での内申点の向上につながります。
テストは成績のためのツールだと知る
これはお子さんも保護者の方も感じると思いますが、周りの子でテストの点の割に良い成績をもらっている例があります。
これには様々な理由が考えられます。
単に授業態度を高く評価しているかもしれませんし、お子さんの積極的なアプローチが奏功しているかも、保護者の方からの圧に教師があてられているからかもしれません。
いずれにせよ、結果論として、大事なのは成績です。
つまり、どれだけテストの点数が良くても、たとえばクラスで一番の点数でも5がもらえなければ意味がありません。
テストの点を着地点にしない
結局は成績を良くするためのテストの点数であることを忘れてはいけません。
塾に通うと、どうしてもテストの点数ばかりに気を取られる子が出てきます。
すると、授業中に塾の宿題をやったり、今日の塾で当てられそうなところを予習したりします。
もしこの状況に教師が気づけば、もちろん心証は良くありません。
自分の授業をよく聞かない子よりも、熱心に質問をして主体的に授業に取り組む子を評価しやすいです。
すると、後者の子の点数が前者より悪かったとしても、結果的に成績が同じか、あるいはより以上の評点がつくことがあります。
これでは、塾通いが本末転倒になります。
テストの点数はあくまで成績を良くするための要素に過ぎないと認識します。
中学の成績は大学の一般入試のようにテストの点だけで決まるわけではありません。
前述したように、テストの点以外の提出物や授業態度も大事な評価材料です。
もちろんテストの点をなるべく高くすることは大前提ですが、実は他の評価項目もそれと同じくらい成績に影響を及ぼします。
成績が出てから、「なんでテストで90点獲ったのに5じゃないんですか?」と聞きに行くことがないように、点数だけに傾倒する姿勢をなくしておくべきです。
先生に第一志望校を認識させる
さらに、教師は内申点を意識して評点をつける傾向があります。
分かりやすく言うと、この子は数学などで5があるし理科は4にしても全体の評点は40と申し分ないから良いだろう、ということがあり得ます。
これは、もちろん学校や教師によっても変わります。
あくまで一例ですが、似たような考え方で評価することはよくあります。
ここで注目をしたいのが、内申点が「40と申し分ない」のは何を持って判断しているかです。
答えはもちろん、その生徒の志望校です。
志望校の他の生徒と比べて、評点が40なら充分にアドバンテージがあるという意味です。
9教科の評点が40というと、7倍で280点になりますから、上述のランク表でみるとBランクです。
一方で、たとえば札幌南のような道内でも屈指の公立高校となると、申し分ないといえるにはやはりAランク、できればオール5を獲っておきたいです。
このとき、特に3年の2学期では、暗黙的な配慮がなされることがあります。
すなわち、今までは理科が4だったけれど、3年の2学期だけ5になった、ということです。
これがそれこそBランクで充分な高校なら起こらないかもしれませんが、札幌南のようなトップ校となってくると、教師もそれを汲んで、普段なら5をつけないところでつけてくれることがあるわけです。
志望校を伝えたうえで努力の姿勢を見せる
特にレベルの高い高校に行くことを考えているのであれば、担任には伝えておくべきです。
そしてそのためにはどれくらいの成績が必要か、そしてそのために努力している姿勢をみせます。
もちろん、本当に5がもらえるだけの結果を残せるのが一番です。
しかし、それに満たなかったとしても、志望校を伝えておいて、さらにそのために努力してきた姿勢を見せることで、仮にテストの点が通常なら5に値しなくても、特別にくれる例がみられます。
中学一年生のときに担任に志望校を伝えて、そのためにこの子は大体これぐらいの内申ランクが必要だな、と分からせることが大切です。
主要5科目もテストの点数は一要素と考える
主要5教科については、実技に比べてペーパーテストの影響が強いです。
しかし当然、それだけで決まるわけではありません。
ここが肝です。
つまり、100点を取れば5になるわけではないし、80点だから5は取れないということもありません。
たとえば自分が100点で4で、友だちが80点なのに5だったとします。
先生にその点を問いただしたら、「〇〇君のほうが熱心に授業に取り組んでいる」と答えが返ってきました。
この返答に「そんなことはない、何を持って自分より〇〇のほうが熱心だと評価しているのか」とさらに追及をしても、納得のいく答えは返ってこない可能性が高いです。
それこそ授業中はいつも居眠りをしていたとか、提出物をおろそかにしていたとか、自分で落ち度が分かっているのであれば、そもそも上記のような質問をしません。
そういった思い当たる節がないのに、自分より点数の低い子が自分より良い内申を得ることがあります。
つまり、本記事で再三にわたって主張しているように、あくまでテストの点数は内申を決する一つのファクターに過ぎないということです。
ターゲットの科目を決めて先生の心証を良くする
これは、よりテストの点数が重視される主要5科目に関しても例外ではありません。
そこで、素点分布表などを参考に、点数に比して内申が低い、あるいは、この点数ならサジ加減次第でより上の評点を狙える、といった科目を見つけます。
そして、それにつき担当の先生の心証を良くする努力をします。
アプローチは、これまでの指摘と変わりません。
授業中、あるいは授業後に積極的に質問をしたり、努力をしているところを見せたり、といった感じです。
基本的に、評点は低い段階のほうが挙げやすいです。
つまり、2→3、3→4、4→5と後者にいくほど難度が上がります。
テストの点数が圧倒的に低いとさすがにどれだけ気に入られても5は難しい、というラインがあります。
たとえば、2が妥当な点数なのに5をもらおうとするのはさすがに無理があります。
そこで、明らかに点数が低くて5の可能性がない科目については、塾に通うなどして5を狙える点数に届くように努力をします。
普通に考えれば4、というレベルなら充分に5を狙えます。
中学の内申点を上げるコツについてまとめ
中学の内申点を上げるには、とにかくテストの点数を上げなければ、と考えることがよくあります。
しかし、実際には点数は内申決定の一要素に過ぎません。
特に絶対評価になった今日では、その性格がより顕著になっています。
実際、周りに点数の割に良い評価を得ている子がいるはずです。
先生にゴマをするのは良くありません。
一方で、健全な努力の姿勢を見せて良い評価を得ようと動くことは、内申に有利に働き、視座を高めて見ると大人になってからも役立つ能力となります。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。