大学生に、株式投資を強くおすすめします。
なぜなら、株式投資ほど「経済をリアルに学べる」機会はないからです。
株を始めたほうがよい大学生は、経済学部の学生だけではありません。
法学部生も工学部生も文学部生も、挑戦したほうがよいでしょう。
なぜなら経済は、仕事をするすべての人が知っておいたほうがよいからです。
ただし、株式投資には成功と失敗があります。
成功すれば、大金を得ることができます。
失敗すれば、投資したお金を失うだけでなく、借金を抱えることもあります。
そのため、大学生の株式投資は、「余裕資金」で行なわなければなりません。
余裕資金とは、全額なくなっても生活に影響を与えないお金のことです。
そこまでのリスクを負ってでも、大学生が株式投資を経験しておいたほうがよい理由を解説します。
未成年でも株を買うことができる
大学生でも未成年でも株式投資を始めることができます。
株式投資を始めるには、証券会社に口座を開く必要がありますが、未成年の場合、親の同意書などがあれば開設できます。
株式投資の始め方は、後段で紹介します。
そもそも株式投資とは
株式投資は、投資の一種です。
株式投資を理解するには、まずは投資を知る必要があります。
投資とは「お金でお金を増やす」行為
投資とは、お金を増やす方法のひとつです。
お金を増やす方法には投資以外に、労働があります。
しかし、投資と労働は、お金を増やす目的は同じでも、内容がまったく異なります。
投資は、お金でお金を増やします。
世の中には、お金をかければかけるほど価値が高くなるモノや行為があります。
お金をかけてモノや行為の価値を高まったら、その時点でそのモノや行為を売却すれば利益が出ます。
これが投資です。
一方の労働は、自分の労力や能力を他人に買ってもらう行為です。
投資も労働も「元手」からお金を増やします。
投資の元手はお金で、労働の元手は自分自身です。
株式とは、株式に投資するとは
株式投資は、株式に投資をしてお金を増やそうとする取り組みです。
そして株式投資は、購入した株式を発行している株式会社を、資金面で応援する行為でもあります。
株式のことを単に「株」と呼ぶこともあります。
株式とは、株式会社がお金を集めるときに使うツールです。
株式会社は、人を雇ったり、原材料を買ったり、原材料を加工したり、製品やサービスを売ったり、お金を増やしたり社会貢献したりします。
それにはお金が必要です。
そこで株式会社は、株式を発行して、株式を投資家たちに売ってお金を集めるわけです。
お金を出して株式を買うと、その株式会社を支配することができます。
会社における「支配」とは、社長を決めたり、社長を解任したり、事業内容を決めたり、事業をやめたり、人を雇ったり、従業員を辞めさせたりすることです。
例えば、ある株式会社が、1株3,000円の株式を10万株発行したとします。
もし、10万株すべてを1人の人が買ったら、その人は3億円(=1株3,000円×10万株)でその株式会社を買ったことになります。
その人はその株式会社を完全に支配することができ、その人はオーナーと呼ばれるようになります。
オーナーは、自分で社長になってその株式会社を経営することもできますが、優秀な社長を雇って経営を任せることもできます。
そして、その株式会社の経営がうまくいくと、株価が値上がりします。
このオーナーは、株価が1株3,000円のときに株式を買いましたが、例えばその後、株価が4,000円に値上がりしたとします。
このときオーナーが、自分が持っている10万株すべてを1株4,000円で売れば、4億円を手にすることができます。
株式をすべて売却した時点で、この人は会社を手放したことになるので、オーナーでなくなります。
この人は、3億円を出してこの株式会社の株式を買い、4億円でその株式を売りました。
その結果、この人は1億円(=4億円-3億円)の利益を得ることができました(儲けることができました)。
この人が最初に支払った3億円のことを、投資額といいます。
そして3億円で株式を購入したことを「株式投資をした」といいます。
ここまでは株式投資の「成功」の話です。
株式投資は「失敗」することがあります。
この人が1株3,000円の株式を10万株買い、3億円を投資してこの株式会社のオーナーになったあと、経営が傾き、企業価値が落ち、株価が1株2,000円にまで値下がりしたとします。
このとき、この人がこの株式会社から手を引きたいと考え、10万株すべて売却すると、2億円(=1株2,000円×10万株)しか手に入れることができません。
この人は最初に3億円を投資しているので、1億円損(=2億円-3億円)したことになります。
さらに最悪なケースは、この株式会社が倒産することです。
株式の価値は、株式会社が倒産すると0円になります。
このオーナーは3億円を丸々損することになります。
「投資」は「ギャンブル」ではない
投資のことを「ギャンブルと同じ」と言う人がいます。
「株式投資は経営がうまくいくであろう会社を選んでお金を投じるのだから、勝ちそうな馬の馬券を買う競馬と同じだ」というわけです。
売上や利益を上げることができそうな会社を予想することと、勝ちそうな馬を予想することは、似ているようにも思えます。
また、予想が外れると、大きな金銭的な損失が発生する点も同じです。
しかし、「株式投資=ギャンブル」という考え方は間違っています。
確かに、株式投資をギャンブルのように楽しむ人はいます。
しかし、ギャンブル感覚で株式投資をしている人は、それは「ギャンブルをしている」のであって、株式投資とは呼べないでしょう。
先ほど、株式投資は、「購入した株式を発行している株式会社を、資金面で応援する行為」と説明しました。
株式会社には、雇用した従業員に賃金を支払うことと、事業を通して社会を発展させることの、2つの使命があります。
株式投資をする人のことを投資家というのですが、投資家は、株式投資を通じて、その2つの使命を支援することになります。
なぜ大学生は株を始めたほうがよいのか
「株式投資をする」ことを「株をする」ということがあります。
大学生に株をすすめるのは、リアルな経済を知ることができるからです。
リアルな経済を知ることができるから
経済は、すべての大学生が知るべきです。
経済学部の学生が経済を知るべきなのは当然としても、法学部生も工学部生も文学部生も、美大生も経済を知っておくべきです。
法学部生は将来、法律に関係した仕事に就くでしょう。
法律問題の多くに、お金や経済が関係してきます。
工学部生は将来、エンジニアになるでしょう。
エンジニアは、利益が出るものをつくらなければなりません。
経済性を無視した製品をつくっても、評価されません。
文学部生は将来、例えば出版社の編集者になるかもしれません。
編集者は、売れる本や、広告がつく雑誌をつくっていかなければなりません。
やはりお金が絡みます。
美大生は将来、デザイナーになるかもしれません。
広告や製品をデザインする場合、消費者を魅了する広告や製品にしなければなりません。
消費者のことを考えることは、それだけで「経済する」ことになります。
そして、大学生が社会に出て出会う経済は、かなりリアルなものです。
リアルな経済とは、お金がたくさん動き、多くのお金を手に入れて「うまみ」を知ったり、多額の損をして「痛み」を知ったりすることです。
すべての社会人は、大金を得るチャンスも、大損する機会も持っています。
それでも、お金持ちとそうでない人が存在するのは、多くのお金を得る方法と損失を最小限に抑える方法を、知っているか知っていないかの差です。
リアルな経済を知れば、多くのお金を得る方法と損失を最小限に抑える方法が見えてきます。
リアルな経済を知るには、いくつか方法がありますが、株式投資は最も手軽な方法のひとつです。
毎日、毎時間、「気になって仕方がない」状態になる
ではなぜ、大学生が株式投資をすると、リアルな経済を知ることができるのでしょうか。
ある企業の株式を買うと、つまり、その企業に投資をすると、毎日、毎時間、その企業の株価が気になるはずです。
株価は、証券取引所での売買の状況によって、値上がりしたり値下がりしたりします。
ある企業の株式を買う人が増えれば、その株価は値上がりします。
ある企業の株式を持っている人の多くがその株を売却すれば、その株価は値下がりします。
株価は、証券取引所の営業時間内に動きます。
証券取引所は、午前9時から始まって、午後3時に終わります。
株価は、1秒ごとに動くこともあります。
例えば、2020年2月28日のソフトバンク株式会社の株価は、午前9時には1株1,420円でした。
それが午前9時20分ごろには、1,400円にまで値下がりしました。
すると午前10時に1,430円に値上がりしました。
結局、午後3時には1,412円になりました。
例えばある投資家が午前9時20分に、1株1,400円になったソフトバンク株を100株買ったとします。
投資家は140,000円支払うことになります。
この投資家がその100株を、午前10時に1,430円になったときに売れば、143,000円の収入になります。
ただこの143,000円がそのまま利益になるわけではありません。
この投資家は、午前9時20分から午後10時までのわずか40分で、3,000円(=143,000円-140,000円)の利益を得たことになります。
時給に換算すると、4,500円になります。
大学生のアルバイトで、これだけ稼げるものはなかなかないでしょう。
これだけ簡単に儲けることができると「興奮」するはずです。
ただ株式投資では、簡単に大損することも珍しくありません。
すると投資家は相当「落ち込む」はずです。
株式投資では興奮と落ち込みを繰り返すので、株価が気になって仕方なくなります。
それで1日に何度もスマホで株価を確認するようになるでしょう。
その企業やその業界について調べるようになる
値上がりする株式を探すには、企業研究や業界研究が欠かせません。
例えば、日本経済新聞(以下、日経)が「A社が世界初の画期的な製品を開発した。これは世界中で売れるはずだ」と報道したとします。
すると、A社の株価は急上昇するでしょう。
日経が報道した直後にA社株を買えば、その時点から株価が上昇した分が利益になります。
日経をよく読むことも企業研究のひとつですが、さらに企業研究を進めると、より大きな利益を得ることができます。
もしA社が、日経が発表する前に、自社のホームページでその製品について公表していたとします。
投資家がそのホームページを見て「これは世界中で売れるはずだ」と気がつき、A社の株式を買えば、かなり安く買うことができるはずです。
その後、日経が報道すれば、株価は急上昇します。
日経で知って株式を買うより、自社ホームページをチェックして株式を買ったほうが、より大きなお金を稼ぐことができるわけです。
企業研究をすれば、株式投資で利益をあげる確率が高くなります。
世界情勢のチェックも、株式投資には重要になります。
例えばシャープは、アップルのiPhoneの液晶を製造しています。
そのアップルは、中国に工場を持っています。
2019年12月、中国で新型コロナウイルスが見つかり、瞬く間に世界中に感染が広がりました。
新型ウイルスは、シャープとはなんの関係もないはずですが、シャープの株価は2019年12月17日の1,800円から、2020年2月28日の1,260円にまで下落しました。
もしシャープ株を1,000株持っていたら、その価値は540,000円(=1,260円×1,000株-1,800円×1,000株)も減ったことになります(損したことになります)。
シャープ株が大幅値下げしたのは、多くの投資家が次のように予想したからです。
新型コロナウイルスの流行
↓
中国経済に打撃
↓
アップルの中国の生産工場が稼働停止に追い込まれる
↓
iPhoneが「つくれない」「売れない」状態になる
↓
シャープの液晶を、アップルが買わなくなる
↓
シャープの業績が落ちる
シャープ株を買おうと思ったら、シャープの業績だけでなく、シャープのお客さんであるアップルの情勢もチェックしなければなりませんし、中国の状況も把握し続ける必要があります。
株式投資を始めると、これほど強い「経済勉強モチベーション」がわいてきます。
株式投資をすると、自分の意思で経済の勉強を始めるようになるでしょう。
株式投資の始め方
それでは、株式投資の始め方を紹介します。
株式投資をする人を、投資家といいます。
大学生が株式を買えば、その瞬間から「個人投資家」になります。
株式投資を始めるには、証券会社に口座を開設する必要があります。
証券会社の口座は、銀行口座をつくるのと同じ感覚で開設することができます。
最近はインターネットで簡単に口座を開設できます。
証券会社によって、口座開設が有料だったり無料だったりします。
無料の証券会社を選んだほうがよいでしょう。
株式投資は、株式を買ったり売ったりしますが、個人投資家が、企業に出向いて株式を売ってもらうわけではありません。
投資家は、証券会社に開設した口座に、投資するお金を入金します。
入金も、銀行にお金を預けるような感覚で行なえます。
そして、個人投資家が買いたい会社の株式を見つけたら、証券会社にその株を買うよう指示を出します。
証券会社は、個人投資家の口座のお金を使って、証券取引所でその株を買います。
その株は、投資家のものになります。
証券会社は、買付の手数料を投資家から受け取ります。
投資家が保有している株式を売るときも、証券会社に指示を出します。
すると証券会社は、証券取引所でその株を売り、代金を得ます。
証券会社は、売った手数料を差し引いて、残りのお金を投資家の口座に入金します。
投資家が口座のお金を引き出せば、株式投資であげた利益を「現金として手に持つ」ことができます。
【必ず守って】株式投資は余裕資金で行なおう
株式投資は、必ず余裕資金で行なってください。
余裕資金とは、その全額がなくなっても生活に影響を及ぼさないお金のことです。
大学生なら、10万円から始めてみてはいかがでしょうか。
バイトや親からの仕送りを10万円貯めて、この10万円が消えても困らない状態まで自分の家計を安定させてから、株式投資を始めてみてください。
そして、次のルールを自分に課してください。
10万円分の株式を購入し、その株式を発行している会社が倒産したら、その株式の価値は0円になり、10万円を取り戻すことはできません。
その状態になっても株式投資の「味」が忘れられず、どこかから借金をして株式投資を続けることはご法度です。
それはギャンブルに溺れるのと同じです。
もし、大学在学中にもう一度株式投資にチャレンジしたかったら、もう一度余裕資金をつくってください。
リスクとリターンはコインの表裏
株式投資におけるリスクとは、株価が下がる可能性のことであり、損する可能性のことです。
株式投資におけるリターンとは、購入した株式の株価が上がって、その株式を売って得る利益のことです。
リスクとリターンは、コインの表と裏と同じで、切り離すことはできません。
保有している株式の株価が値上がりして、それを売って利益を得たら、とても嬉しいはずです。
しかし個人投資家は、嬉しいと感じると同時に、「次は、この嬉しい感情の強さと同じ強さの落胆を経験するかもしれない」と警戒してください。
株式投資で利益を得ると、多くの個人投資家は「自分は企業の業績を見抜く才能がある」と思ってしまいますが、それは驕りです。
何十年と株式投資に関わっているプロでも、「株価を完全に予想することはできない」と断言しています。
そのため、普通の個人投資家が株価の予想を当て続けることは不可能であり、「自分には投資の才能がある」と思うことは勘違いです。
株式投資は常に「次は予想を外すかもしれない」と考えて、予想を外したときの損害を考慮に入れながら売買していきましょう。
まとめ~経済の勉強のつもりで取り組んで
社会人やビジネスパーソンたちの株式投資には、資産形成という大きな目的があります。
大人たちにとっての資産とは、家を建てるお金や、子供の教育費や、老後の蓄えなどです。
会社からもらう給料だけでは十分な資産をつくることができないので、株式投資でお金を増やそうと考えています。
大学生は、勉強のつもりで株式投資に取り組んでみてはいかがでしょうか。
大人がやる資産形成の株式投資は、重要なお金をつくらなければならないので、失敗が許されません。
大学時代に10万円ぐらいで株式投資を経験しておけば、よい練習になります。
「素人が株式投資をしても火傷をするだけだ」と言われています。
だから、株式投資のために用意した10万円は、大学を卒業するときにはほとんど消えているかもしれません。
しかし、その間に、利益をあげて興奮したり、損をしてあせったりしたはずです。
また、値上がりしそうな株式を必死に探したはずです。
「うまみ」と「痛み」の両方を若いうちにしっかり経験しておけば、社会人になったときの株式投資の成功確率を高めることができるでしょう。
大学時代に株式投資を経験しておけば、社会人になって取り組む株式投資は、もう「素人による株式投資」ではないので火傷を回避できるはずです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。