残念ながら、子供の教育には地域差、教育格差があります。
さらに残念なことに、北海道の教育は、47都道府県のなかでも下位に位置しています。
この記事では、教育の地域差の実態を、さまざまなデータを使って明らかにしていきます。
また、教育の地域差が存在するとどのような問題が生じるのか考察していきます。
小・中の学力は地方のほうが強いこともある
文部科学省が、全国の小学6年生と中学3年生を対象に実施している「全国学力・学習状況調査」(以下、学力テスト)の、2019年度の結果は以下のとおりでした。
2019年度全国学力テスト(小学生) 正答率ランキング | 2019年度全国学力テスト(中学生) 正答率ランキング | ||||
順位 | 都道府県名 | 正答率 | 順位 | 都道府県名 | 正答率 |
1 | 秋田県 | 72.00% | 1 | 福井県 | 67.33% |
1 | 石川県 | 72.00% | 2 | 秋田県 | 66.67% |
3 | 福井県 | 70.50% | 2 | 石川県 | 66.67% |
4 | 富山県 | 68.50% | 4 | 富山県 | 66.00% |
4 | 青森県 | 68.50% | 5 | 静岡県 | 65.00% |
6 | 沖縄県 | 68.00% | 5 | 東京都 | 65.00% |
7 | 東京都 | 67.50% | 7 | 兵庫県 | 64.33% |
7 | 愛媛県 | 67.50% | 7 | 岐阜県 | 64.33% |
7 | 山口県 | 67.50% | 9 | 愛知県 | 64.00% |
10 | 大分県 | 67.00% | 10 | 茨城県 | 63.67% |
10 | 京都府 | 67.00% | 10 | 愛媛県 | 63.67% |
10 | 広島県 | 67.00% | 10 | 神奈川県 | 63.67% |
10 | 新潟県 | 67.00% | 13 | 山口県 | 63.33% |
14 | 香川県 | 66.50% | 13 | 大分県 | 63.33% |
14 | 岩手県 | 66.50% | 13 | 山梨県 | 63.33% |
16 | 茨城県 | 66.00% | 13 | 京都府 | 63.33% |
16 | 福岡県 | 66.00% | 13 | 広島県 | 63.33% |
16 | 高知県 | 66.00% | 13 | 群馬県 | 63.33% |
19 | 静岡県 | 65.50% | 19 | 青森県 | 63.00% |
19 | 三重県 | 65.50% | 19 | 新潟県 | 63.00% |
19 | 山形県 | 65.50% | 21 | 香川県 | 62.67% |
19 | 鹿児島県 | 65.50% | 21 | 三重県 | 62.67% |
23 | 群馬県 | 65.00% | 21 | 埼玉県 | 62.67% |
23 | 埼玉県 | 65.00% | 24 | 長野県 | 62.33% |
23 | 長野県 | 65.00% | 24 | 長崎県 | 62.33% |
23 | 長崎県 | 65.00% | 24 | 鳥取県 | 62.33% |
23 | 和歌山県 | 65.00% | 24 | 岡山県 | 62.33% |
23 | 佐賀県 | 65.00% | 24 | 奈良県 | 62.33% |
29 | 兵庫県 | 64.50% | 24 | 栃木県 | 62.33% |
29 | 鳥取県 | 64.50% | 30 | 千葉県 | 62.00% |
29 | 岡山県 | 64.50% | 30 | 徳島県 | 62.00% |
29 | 栃木県 | 64.50% | 32 | 福岡県 | 61.67% |
29 | 千葉県 | 64.50% | 32 | 宮崎県 | 61.67% |
29 | 福島県 | 64.50% | 32 | 宮城県 | 61.67% |
35 | 岐阜県 | 64.00% | 35 | 山形県 | 61.33% |
35 | 神奈川県 | 64.00% | 35 | 和歌山県 | 61.33% |
35 | 山梨県 | 64.00% | 35 | 北海道 | 61.33% |
35 | 徳島県 | 64.00% | 35 | 大阪府 | 61.33% |
35 | 宮崎県 | 64.00% | 39 | 島根県 | 61.00% |
40 | 宮城県 | 63.50% | 39 | 熊本県 | 61.00% |
40 | 北海道 | 63.50% | 41 | 岩手県 | 60.67% |
40 | 島根県 | 63.50% | 41 | 福島県 | 60.67% |
40 | 熊本県 | 63.50% | 41 | 滋賀県 | 60.67% |
44 | 奈良県 | 63.00% | 44 | 高知県 | 60.33% |
44 | 大阪府 | 63.00% | 45 | 鹿児島県 | 60.00% |
46 | 滋賀県 | 63.00% | 46 | 佐賀県 | 59.67% |
47 | 愛知県 | 62.00% | 47 | 沖縄県 | 57.00% |
北海道は小学生40位、中学生35位と低迷
都道府県は47あるので、1~23位までが上位、24位が中位、25~47位が下位となります。
北海道勢は小学生が40位、中学生が35位なので、いずれも下位であり、しかも下位のなかでも「下のほう」となっています。
「地方だから」では説明できない
一般の人には「東京から離れると教育水準が落ちそう」というイメージがあると思います。
北海道勢の低迷「だけ」なら、そのとおりなのですが、沖縄県の小学生は6位と健闘しています。
また、秋田県、石川県、福井県、富山県、青森県といった、東北・北陸の地方県が上位に食い込んでいます。
ただ、やはり下位には、滋賀県、島根県、宮城県、徳島県、岩手県、高知県、佐賀県といった地方県が多く集まっています。
そのため「地方だから」小中学生の学力が低下するとは限りませんが、「地方であることは」教育には有利ではないこともわかります。
大都市を抱える都府県は「ばらばら」
続いて「教育がゆき届いていそう」なイメージがある、都市部を確認してみましょう。
東京23区の東京都、横浜市がある神奈川県、名古屋市がある愛知県、西の中心地の大阪府、京大がある京都府をみてみると、成績は「ばらばら」になっています。
大阪府に至っては、小学生44位、中学生35位と、北海道を下回っています。
愛知県の小学生は最下位でした。
神奈川県は小学生が35位で、下位グループです。
ただし、東京都は小学生・中学生ともにトップ10入りしています。
京都府も小学生・中学生ともにトップ15入りしています。
地方県がばらついているように、大都市圏もばらついています。
以上のことから考えると、地域は小学生と中学生の学力に影響を与えない、といえそうですが、実はそうではありません。
教育の地域差は生じていて、それは別の統計でくっきりと現れています。
大学進学率では都市部が有利
以下の表は、文部科学省が調査している、2019年の都道府県別の大学進学率です。
2019年 都道府県別大学進学率 | ||
順位 | 都道府県名 | 計 |
1 | 京都府 | 65.87% |
2 | 東京都 | 65.13% |
3 | 兵庫県 | 60.90% |
4 | 神奈川県 | 60.70% |
5 | 広島県 | 60.64% |
6 | 大阪府 | 59.64% |
7 | 奈良県 | 59.41% |
8 | 愛知県 | 58.08% |
9 | 埼玉県 | 57.43% |
10 | 福井県 | 55.98% |
11 | 山梨県 | 55.57% |
12 | 岐阜県 | 55.26% |
13 | 千葉県 | 55.05% |
14 | 石川県 | 54.91% |
15 | 滋賀県 | 54.74% |
16 | 福岡県 | 53.77% |
17 | 富山県 | 52.75% |
18 | 栃木県 | 52.33% |
19 | 岡山県 | 52.23% |
20 | 徳島県 | 52.23% |
21 | 愛媛県 | 52.21% |
22 | 静岡県 | 52.01% |
23 | 香川県 | 51.73% |
24 | 群馬県 | 51.20% |
25 | 茨城県 | 50.55% |
26 | 三重県 | 49.59% |
27 | 宮城県 | 49.41% |
28 | 高知県 | 49.35% |
29 | 和歌山県 | 48.56% |
30 | 長野県 | 47.78% |
31 | 大分県 | 47.37% |
32 | 新潟県 | 46.86% |
33 | 熊本県 | 46.53% |
34 | 青森県 | 46.21% |
35 | 北海道 | 46.18% |
36 | 島根県 | 45.96% |
37 | 福島県 | 45.82% |
38 | 秋田県 | 45.40% |
39 | 長崎県 | 45.39% |
40 | 山形県 | 44.57% |
41 | 宮崎県 | 44.51% |
42 | 佐賀県 | 44.23% |
43 | 岩手県 | 43.70% |
44 | 鳥取県 | 43.31% |
45 | 鹿児島県 | 43.28% |
46 | 山口県 | 43.06% |
47 | 沖縄県 | 40.19% |
兵庫県、広島県、奈良県、埼玉県も健闘
5大都府県が見事にトップ10入りしています。
- 1位:京都府
- 2位:東京都
- 4位:神奈川県
- 6位:大阪府
- 8位:愛知県
大学進学率は、子供の進学意欲や保護者の高学歴志向、家庭の経済状況などによって左右されます。
そのため、塾や予備校や私立学校などの教育機会と、大学進学の気持ちを高める教育情報が充実している都市部が、大学進学率が高くなるのは理解しやすいでしょう。
5大都府県以外でも、大阪府に近い兵庫県が3位、中国地方の中心地の広島県が5位、京都府に隣接する奈良県が7位、東京都のベッドタウンの埼玉県が9位と、やはりトップ10には都市部にゆかりがある県が入っています。
福井県の「脅威」と「地方の限界」
ここまで3つの表を紹介してきましたが、地方で驚異的な数値を叩き出している県があります。
福井県です。
福井県は、学力テスト(小学生)3位、学力テスト(中学生)1位、大学進学率10位となっています。
福井県は北陸地方に属す、地方県の代表のような地方県ですが、京都府と接しています。
福井県の教育力が高いのは、教育戦略が優れているからです。
例えば福井市では、「中学校区教育」を採用していて、これは中学校の学区内にある保育園、幼稚園、小学校、中学校が連携し、計画的な教育を進める仕組みです。
私立学校の中高一貫校は、中学生と高校生を連続して同じ学校で教育することで学力を伸ばしますが、福井市の「中学校区教育」は、保幼小中一貫校をつくっているようなものです。
子供たちの教育ニーズに合わせた教育を展開しやすい特長があります。
さらに、これも福井市の取り組みですが、小学校の教師と中学校の教師が、互いに授業参観するようにしています。
小学校の教師は、1人で全教科教えないといけないので、幅広い知識が求められますが、専門特化した授業は不得手なことが多い傾向にあります。
一方、中学校の教師は担当科目が決まっているので、自分の専門分野は得意としますが、他教科は苦手になりがちです。
そこで、お互いに授業を見せ合うことで、中学校の教師は、幅広知識を子供たちに授ける方法を知ることができ、小学校の教師は、専門分野を深める授業のスキルを身につけることができます。
こうした教育戦略が、子供たちの学力向上にプラスにならないわけがありません。
ただ、福井県の数値には気になる点があります。
それは、学力テスト(小学生)は3位、学力テスト(中学生)は1位と、トップ3入りしているのに、大学進学率が急に10位まで落ちていることです。
トップ10入りは立派ですが、小中までトップ3だったことを考えると、高校での落ち込みが気になります。
これは、福井県が落ちているというより、都市部の都府県が高校教育に力を入れて急上昇した、と考えるべきでしょう。
小中の教育に比べると、高校の教育はより高度で、難易度が増します。
勉強時間と努力とやる気で「上」に行ける小中の勉強と比べると、高校での勉強や大学受験は、テクニックが求められます。
高度で難易度が高い教育や、テクニックを解説する授業は、都市部に集中する教育業界が得意にするところです。
都市部で大学進学率が高くなるのは、魅力的な大学が多いことも含めて、教育業界が集まっているからでしょう。
北海道は大学進学率も下位グループ
北海道は、大学進学率で35位と、やはり下位グループでした。
先述のとおり、学力テストで小学生は40位、中学生は35位でした。
この現実は、道内の保護者も、道内の子供たちも、そして道内の教育関係者も、しっかり直視すべきです。
小さな県である福井県でもあれだけ健闘しているので、北海道は、教育力の低さを「最北の地だから」という言い訳で切り抜けることはできません。
保護者、子供、教育関係者が一丸となって教育力・学力アップに取り組み、当面は上位グループ入り(23位以上)を目指したいところです。
教育力と経済力の関係
北大や東大のような、「一流」や「超一流」と呼ばれている大学には、裕福な家庭の子供が多く通っていることは周知のとおりです。
家庭に「お金」があると、高額な教育を子供に授けることができるので、子供の偏差値が高くなりやすいからです。
また、裕福な家庭の保護者のほうが、子供の教育に熱心な傾向にあります。
このように、教育力と経済力は深い関係にあります。
都道府県の経済力は、内閣府が調査している「県民経済計算」でわかります。
県民経済計算は「都道府県別GDP」と呼ばれることもあります。
都道府県別GDPとは、その都道府県が1年間に稼いでいる額と考えて差し支えありません。
2015年の都道府県別GDPランキングは以下のとおりです。
県民経済計算 2015年ランキング (都道府県別GDPランキング) | ||
順位 | 都道府県名 | (単位:百万円) |
1 | 東京都 | 104,339,162 |
2 | 愛知県 | 39,559,324 |
3 | 大阪府 | 39,106,932 |
4 | 神奈川県 | 33,918,792 |
5 | 埼玉県 | 22,332,275 |
6 | 兵庫県 | 20,494,996 |
7 | 千葉県 | 20,218,613 |
8 | 北海道 | 18,961,154 |
9 | 福岡県 | 18,861,095 |
10 | 静岡県 | 17,292,439 |
11 | 茨城県 | 12,992,071 |
12 | 広島県 | 11,941,081 |
13 | 京都府 | 10,345,459 |
14 | 宮城県 | 9,481,621 |
15 | 栃木県 | 9,016,319 |
16 | 新潟県 | 8,845,614 |
17 | 群馬県 | 8,666,946 |
18 | 長野県 | 8,558,040 |
19 | 三重県 | 8,286,519 |
20 | 福島県 | 7,823,559 |
21 | 岡山県 | 7,787,894 |
22 | 岐阜県 | 7,551,541 |
23 | 滋賀県 | 6,163,555 |
24 | 山口県 | 5,870,248 |
25 | 熊本県 | 5,564,564 |
26 | 鹿児島県 | 5,388,480 |
27 | 愛媛県 | 4,915,526 |
28 | 岩手県 | 4,722,913 |
29 | 富山県 | 4,646,513 |
30 | 石川県 | 4,573,682 |
31 | 青森県 | 4,540,185 |
32 | 長崎県 | 4,382,214 |
33 | 大分県 | 4,378,232 |
34 | 沖縄県 | 4,141,564 |
35 | 山形県 | 3,954,232 |
36 | 香川県 | 3,777,955 |
37 | 宮崎県 | 3,633,860 |
38 | 奈良県 | 3,577,410 |
39 | 和歌山県 | 3,526,740 |
40 | 秋田県 | 3,366,869 |
41 | 山梨県 | 3,251,083 |
42 | 福井県 | 3,233,321 |
43 | 徳島県 | 3,083,714 |
44 | 佐賀県 | 2,755,607 |
45 | 島根県 | 2,565,746 |
46 | 高知県 | 2,399,735 |
47 | 鳥取県 | 1,755,097 |
5大都府県のうち、東京都、愛知県、大阪府、神奈川県が上位4位を独占しました。
京都府の13位までは、8位の北海道と9位の福岡県と12位の広島県を除くと、東京圏と大阪圏の都府県で占められています。
そして、北海道、福岡県、広島県は、その地方の中心地となっています。
つまり、東京圏と大阪圏と地方の中心地が、順当に「強い経済」を誇っていることが、このランキングからわかります。
この都道府県GDPランキングと、先ほど紹介した都道府県別大学進学率ランキングの上位を比較すると、このようになります。
(再掲) 2019年 都道府県別大学進学率 | (再掲) 2015年ランキング(単位:百万円) | ||||
順位 | 都道府県名 | 計 | 順位 | 都道府県名 |
|
1 | 京都府 | 65.87% | 1 | 東京都 | 104,339,162 |
2 | 東京都 | 65.13% | 2 | 愛知県 | 39,559,324 |
3 | 兵庫県 | 60.90% | 3 | 大阪府 | 39,106,932 |
4 | 神奈川県 | 60.70% | 4 | 神奈川県 | 33,918,792 |
5 | 広島県 | 60.64% | 5 | 埼玉県 | 22,332,275 |
6 | 大阪府 | 59.64% | 6 | 兵庫県 | 20,494,996 |
7 | 奈良県 | 59.41% | 7 | 千葉県 | 20,218,613 |
8 | 愛知県 | 58.08% | 8 | 北海道 | 18,961,154 |
9 | 埼玉県 | 57.43% | 9 | 福岡県 | 18,861,095 |
10 | 福井県 | 55.98% | 10 | 静岡県 | 17,292,439 |
東京都、兵庫県、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県の6都県は、どちらのランキングでもトップ10入りしています。
経済が強い都府県は、教育にも強い、という傾向が見えます。
続いて、都道府県GDPランキングと都道府県別大学進学率ランキングの下位を比較してみましょう。
(再掲) 2019年 都道府県別大学進学率 | (再掲) 2015年ランキング(単位:百万円) | ||||
順位 | 都道府県名 | 計 | 順位 | 都道府県名 |
|
33 | 熊本県 | 46.53% | 33 | 大分県 | 4,378,232 |
34 | 青森県 | 46.21% | 34 | 沖縄県 | 4,141,564 |
35 | 北海道 | 46.18% | 35 | 山形県 | 3,954,232 |
36 | 島根県 | 45.96% | 36 | 香川県 | 3,777,955 |
37 | 福島県 | 45.82% | 37 | 宮崎県 | 3,633,860 |
38 | 秋田県 | 45.40% | 38 | 奈良県 | 3,577,410 |
39 | 長崎県 | 45.39% | 39 | 和歌山県 | 3,526,740 |
40 | 山形県 | 44.57% | 40 | 秋田県 | 3,366,869 |
41 | 宮崎県 | 44.51% | 41 | 山梨県 | 3,251,083 |
42 | 佐賀県 | 44.23% | 42 | 福井県 | 3,233,321 |
43 | 岩手県 | 43.70% | 43 | 徳島県 | 3,083,714 |
44 | 鳥取県 | 43.31% | 44 | 佐賀県 | 2,755,607 |
45 | 鹿児島県 | 43.28% | 45 | 島根県 | 2,565,746 |
46 | 山口県 | 43.06% | 46 | 高知県 | 2,399,735 |
47 | 沖縄県 | 40.19% | 47 | 鳥取県 | 1,755,097 |
2つのランキングの下位15位に登場したのは、島根県、秋田県、山形県、宮崎県、佐賀県、鳥取県、沖縄県の7県でした。
やはり、経済規模が小さい県は大学進学率が低くなる傾向がみられます。
以上のことから「都道府県のお金」が、教育の地域差に影響を与えていることは明らかです。
頑張れ北海道
以上の考察から、次のことがわかりました。
・子供が小さいころの教育は、都道府県の「教育戦略」によって大きく変わる。自治体規模も経済規模も小さい県でも、やり方次第で、子供に高い学力を身につけさせることができる。
・東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、京都府の5大都府県は、総合的に「教育に強い」といえる。その背景には、強い経済力がある。
・逆に、経済規模が小さい県は、総合的に「教育に弱い」傾向がわかった。
そして北海道については、次のことがいえます。
なぜこのような「提言」をするのかというと、北海道全体で教育改革に動かないと、道内受験生がますます北大に入りづらくなってしまうからです。
北大の「道民率」を上げたい
下記のランキングは、教育系サイトが公開している、都道府県別の北大の合格者数です。
左の表は、高校3年生1,000人当たりの合格者数です。
都道府県内の受験生の北大人気の目安になります。
右の表は、合格者数の総数です。
「○県から○人が北大に入っている」という数字です。
人数の横の「占有率」は、北大の合格者に占める、「その都道府県出身者の割合」です。
北大の合格者数:高校3年生1,000人当たり | 合格者数:総数 | |||||
順位 | 都道府県 | 単位:人 | 順位 | 都道府県 | 単位:人 | 占有率 |
1 | 北海道 | 19.9 | 1 | 北海道 | 808.5 | 32.55% |
2 | 石川県 | 4.5 | 2 | 東京都 | 281.5 | 11.33% |
3 | 富山県 | 3.2 | 3 | 愛知県 | 126.5 | 5.09% |
4 | 東京都 | 2.7 | 4 | 神奈川県 | 124.0 | 4.99% |
5 | 奈良県 | 2.7 | 5 | 埼玉県 | 101.0 | 4.07% |
6 | 秋田県 | 2.4 | 6 | 大阪府 | 100.5 | 4.05% |
7 | 新潟県 | 2.2 | 7 | 兵庫県 | 88.5 | 3.56% |
8 | 静岡県 | 2.1 | 8 | 千葉県 | 68.5 | 2.76% |
9 | 京都府 | 2.0 | 9 | 静岡県 | 66.5 | 2.68% |
10 | 青森県 | 2.0 | 10 | 石川県 | 47.0 | 1.89% |
11 | 愛知県 | 1.9 | 11 | 茨城県 | 47.0 | 1.89% |
12 | 兵庫県 | 1.9 | 12 | 京都府 | 46.5 | 1.87% |
13 | 和歌山県 | 1.9 | 13 | 新潟県 | 41.5 | 1.67% |
14 | 茨城県 | 1.9 | 14 | 宮城県 | 35.5 | 1.43% |
15 | 神奈川県 | 1.8 | 15 | 長野県 | 32.0 | 1.29% |
16 | 宮城県 | 1.8 | 16 | 奈良県 | 31.5 | 1.27% |
17 | 埼玉県 | 1.8 | 17 | 富山県 | 30.0 | 1.21% |
18 | 長野県 | 1.7 | 18 | 群馬県 | 27.5 | 1.11% |
19 | 三重県 | 1.7 | 19 | 栃木県 | 27.0 | 1.09% |
20 | 群馬県 | 1.6 | 20 | 三重県 | 26.5 | 1.07% |
21 | 栃木県 | 1.5 | 21 | 広島県 | 26.5 | 1.07% |
22 | 香川県 | 1.5 | 22 | 福岡県 | 25.5 | 1.03% |
23 | 千葉県 | 1.4 | 23 | 岡山県 | 24.0 | 0.97% |
24 | 愛媛県 | 1.4 | 24 | 青森県 | 22.5 | 0.91% |
25 | 岡山県 | 1.4 | 25 | 秋田県 | 19.0 | 0.77% |
26 | 大阪府 | 1.3 | 26 | 岐阜県 | 18.5 | 0.74% |
27 | 山梨県 | 1.3 | 27 | 福島県 | 18.0 | 0.72% |
28 | 徳島県 | 1.3 | 28 | 和歌山県 | 16.5 | 0.66% |
29 | 滋賀県 | 1.2 | 29 | 滋賀県 | 16.0 | 0.64% |
30 | 広島県 | 1.1 | 30 | 愛媛県 | 15.5 | 0.62% |
31 | 岩手県 | 1.1 | 31 | 香川県 | 13.0 | 0.52% |
32 | 福島県 | 1.1 | 32 | 岩手県 | 12.5 | 0.50% |
33 | 福井県 | 1.0 | 33 | 山梨県 | 10.5 | 0.42% |
34 | 岐阜県 | 1.0 | 34 | 徳島県 | 8.0 | 0.32% |
35 | 鳥取県 | 0.9 | 35 | 山口県 | 8.0 | 0.32% |
36 | 島根県 | 0.9 | 36 | 福井県 | 7.5 | 0.30% |
37 | 高知県 | 0.8 | 37 | 山形県 | 7.5 | 0.30% |
38 | 山形県 | 0.8 | 38 | 長崎県 | 7.0 | 0.28% |
39 | 山口県 | 0.7 | 39 | 鹿児島県 | 7.0 | 0.28% |
40 | 佐賀県 | 0.6 | 40 | 沖縄県 | 7.0 | 0.28% |
41 | 福岡県 | 0.6 | 41 | 熊本県 | 7.0 | 0.28% |
42 | 長崎県 | 0.6 | 42 | 島根県 | 5.5 | 0.22% |
43 | 大分県 | 0.5 | 43 | 大分県 | 5.5 | 0.22% |
44 | 鹿児島県 | 0.5 | 44 | 高知県 | 5.0 | 0.20% |
45 | 沖縄県 | 0.5 | 45 | 佐賀県 | 5.0 | 0.20% |
46 | 熊本県 | 0.4 | 46 | 鳥取県 | 4.5 | 0.18% |
47 | 宮崎県 | 0.3 | 47 | 宮崎県 | 3.5 | 0.14% |
|
|
| 総計 | 2483.5 | 100.00% |
北海道出身者の合格者数がどちらも1位になっていますが、これは単純には喜べません。
まず、高校3年生1,000人当たりの合格者数の1位についてですが、これは当然の結果でしょう。
地元の大学に地元の子供たちが多く行っていることを示しているだけです。
注目しなければならないのは、右の表の占有率です。
道内出身の北大合格者は、全体の3割強しかいないのです。
7割は道外出身者です。
5大都府県(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、京都府)の合計は、23.34%で、道内出身合格者の32.55%と9.21ポイント差しかありません。
東京都には、東大、一橋大、東工大、早慶上智があり、神奈川県には横浜国立大があり、愛知県には名古屋大があり、大阪府と京都府には大阪大、京大、関関同立があります。
5大都府県の高偏差値の受験生たちは、これらの名門大学にも行けるし、北大にも行ける状態にあります。
そのため、5大都府県の高偏差値の受験生たちが今後ますます、「北大ってよさそう」と思い始めたら、ますます北大を目指す道内受験生は不利になります。
道内受験生が、5大都府県の高偏差値の受験生たちと「北大合格」を競うには、やはり小中学校での基礎教育と高校での応用教育の充実が欠かせないでしょう。
まとめ~経済格差から脱却できるかも
教育の地域差について考えてきました。
教育力と学力は、経済力と密接不可分の関係にあります。
そして、都市部と地方部の差も、経済力と深く関わっています。
一部例外はありますが、大まかに次のことがいえます。
地方部、お金が少なく、教育力が低い
これは、当たり前のことのように感じるかもしれませんが、北海道民のように、地方に住む人は、当たり前のことと考えないほうがよいでしょう。
なぜなら、この2つの傾向は「固定する」可能性があるからです。
この2つの傾向が固定すると、こうなります。
地方部はずっとお金が少ない状態にあり、教育力も低いまま
とても深刻な事態といえます。
このようになってしまうのは、教育力や学力が高まると、「お金を稼ぐ力」も高くなるからです。
「地方だから教育力が低い」ことを、当たり前のことにしない、と決意したのが、福井県、秋田県、石川県、富山県です。
学力テストの結果をもう一度掲載します。
(再掲) 2019年度全国学力テスト(小学生) 正答率ランキング | (再掲) 2019年度全国学力テスト(中学生) 正答率ランキング | ||||
順位 | 都道府県名 | 正答率 | 順位 | 都道府県名 | 正答率 |
1 | 秋田県 | 72.00% | 1 | 福井県 | 67.33% |
1 | 石川県 | 72.00% | 2 | 秋田県 | 66.67% |
3 | 福井県 | 70.50% | 2 | 石川県 | 66.67% |
4 | 富山県 | 68.50% | 4 | 富山県 | 66.00% |
この4県は、県を挙げて小中学校教育に力を入れています。
その成果が、このようにくっきり現れているのです。
北海道の教育全体が、この4県としのぎを削るくらいのレベルになることを、切に願いたいものです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。