他の人より勉強しているのに成績が上がらないと「自分は頭が悪い」と落ち込んでしまうと思いますが、その気持ちは正しくありません。
勉強時間を多く確保していて、参考書をしっかり読み込んだり、問題集に果敢に取り組んだりしているのに学力が向上しないのは「勉強効率が悪い」からです。
勉強効率を高めれば、勉強した分だけテストの点数が上がります。
「本棚」を有効利用すると勉強効率が上がります。
学力がなかなか上がらない人は、本棚を見直してください。
ただこのとき注意しなければならないのは、本棚を「ただ整理しただけでは駄目」ということです。
過去には勉強効率の上がる文房具に関しても紹介していますので、こちらも合わせて御覧ください。
間違った整理をしない
本棚の整理には「正しい」整理と「間違った」整理があります。
このように解説すると「正しい整理を教えてほしい」と思うでしょう。
しかし、正しい整理を伝授することは簡単なことではありません。
なぜなら、本棚の整理の正解は、本棚を使っている人によって異なるからです。
一方で、本棚の間違った整理を指摘することは簡単です。
本棚整理のビギナーは、まずは「間違った整理をしない」ことを目標にしましょう。
そのためには、間違った整理方法を知る必要があります。
自宅学習の効率化を狙う子供にとって、駄目な本棚整理法は次のとおりです。
- 書店のような整理
- 図書館のような整理
- 見た目重視の整理
- ワンパターンな整理
なぜこれらの整理法が、学習効果を高めない整理なのでしょうか。
ひとつずつ解説します。
書店のような整理はなぜ駄目なのか
書店の本棚は戦略的に整理されているので、本の確認が容易です。
一見すると、自宅の本棚の見本になりそうです。
しかし書店の本棚の目的は、本を売ることです。
これは自宅の本棚の目的と合致しません。
書店は、買う本を決めずに、ふらりと立ち寄っただけの人に本を売ろうと考えています。
それで書店は、店主たちが売りたい本が目立つように並べます。
この本の並べ方は、勉強効率を高めるものではありません。
図書館のような整理はなぜ駄目なのか
図書館の本棚は、利用者が、莫大の量の本のなかから目的の一冊を、短時間で見つけられるように並べられています。
莫大な量の本を並べるときは、探しやすさを重視しなければなりません。
例えば、小説を並べるときは、作家の名前のアイウエオ順に並べていきます。
図書館方式はとても合理的ですが、自宅の学習用の本棚は、そこまで合理性を求めないほうがよいでしょう。
自宅の本棚でも、最低限の合理性は必要ですが、図書館のように合理性をとことん突き詰めてしまうと、使いづらくなってしまいます。
自宅の本棚の本の数はそれほど多くありません。
そして教科書、参考書、問題集といった勉強用の本はさらに少なくなるはずです。
自宅の本棚は、並べ方の合理性より、必要なときにすぐに本を取り出せることを重視したほうがよいでしょう。
図書館は公の機関なので、可能な限り、すべての本を平等に扱おうとしています。
しかし勉強で使う本である教科書、参考書、問題集を平等に扱うわけにはいきません。
なぜなら、勉強で使う本には、「使いやすい本と使いにくい本」「重要な本とそれほど重要でない本」が明確にわかれるからです。
自宅の学習用の本棚では、本を差別して並べる必要があります。
この点はとても重要なので、あとで詳しく解説します。
見た目重視の整理はなぜ駄目なのか
見た目重視の本棚整理とは、例えば本の高さをそろえるといった並べ方です。
また、教科ごとにかためて並べる、といった整理法です。
見た目重視の本棚は、「頭がよい人の本棚」のように見えますが、使いづらいという欠点があります。
それは、見た目のために、合理性も利便性も犠牲にしているからです。
本棚の見映えをよくしようと考えて本を並べると、重要な参考書の横に、ほとんど使わない問題集を置く、といったことが起きます。
勉強の本は究極の実用書なので、本棚を整理するときは「最短で本から情報を引き出す」ことを考えなければなりません。
ワンパターンな整理はなぜ駄目なのか
自宅の学習用の本棚は、定期的に整理し直してください。
ワンパターンな整理の仕方は、効率化を妨げます。
例えば、4月に理想の本棚ができあがったとします。
そのお陰で「英文法を勉強しよう」と思ったら、すぐに必要な本を取り出せるようになったとします。
しかし、その本の並びは、7月でも有効でしょうか。
4月と7月では、学力が違っているはずです。
学力が上がると、勉強内容が細分化されます。
4月の段階では「英文法を勉強しよう」と漠然と思っていたものが、7月になれば「英文法のなかの関係代名詞を集中的に学習しよう」とピンポイントで考えるようになるでしょう。
そうなると、7月の本棚は、関係代名詞について最もわかりやすく解説している参考書を簡単に取り出せるようにしておかなければなりません。
本棚と頭のなかをシンクロさせる
間違った本棚整理法を理解したところで、いよいよ「正しい」本棚整理を考えていきます。
本棚を正しく整理するコツは、本棚と頭のなかをシンクロ(同期)させることです。
例えば、次のような悩みがあったとします。
「どうも古文が理解できない。テストの点数も悪いままだ。このままでは古文が苦手科目になってしまい、入試の足かせになってしまう。今のうちに抜本的な対策に取り組まなければならない」
頭のなかでこのように考えていたら、本棚も「古文重視」にしましょう。
本棚の、最も手を伸ばしやすい場所に、古文関連の本を置くのです。
そして、古文を集中的に学習した結果、苦手意識を排除できたとします。
すると今度は、得意科目の数学の勉強を再開したいと思うでしょう。
そのタイミングで、本棚のなかの本を入れ替えます。
最も手を伸ばしやすい場所に置いていた古文関連の本を不便な場所に移動して、最も手を伸ばしやすい場所に数学の本を置いてください。
本棚を定期的に整理することで、頭のなかも整理されるはずです。
本棚と頭のなかをシンクロさせることは、「頭のなかの考えを本棚で表現する」ことでもあります。
本を「1軍」「2軍」「3軍」「引退」にわける
勉強高率を高めるための本棚整理のポイントは「勉強ありき」です。
「本ありき」の本棚整理ではなく、「どうやって勉強効率を上げようか」→「よし本棚を整理しよう」というふうに考えていく必要があります。
常に「どのように本を配置すれば勉高効率が高まるか」と考えながら整理していきましょう。
本棚を整理するには、本を整理しておく必要があります。
本を「1軍」「2軍」「3軍」「引退」にわけましょう。
重要なのは「3軍」と「引退」の境界線
教科書、参考書、問題集、ノート(読み返し用)など、勉強に関する本を、すべて「1軍」「2軍」「3軍」「引退」のいずれかに分類してください。
1軍の本は、今まさに使っている本です。
多くのことを教えてくれる本も1軍入りさせましょう。
2軍の本は、2種類あります。
「今はまだ書かれてある内容が難しすぎて理解できないけれど、しばらくしたら役に立つはずの本」と「かなり内容は理解したが、しばらくは読み返す必要がある本」です。
つまり2軍の本は、1軍の本と同じくらい重要な価値を持ちながら、1軍の本ほど緊急性がないものです。
1軍と2軍の本の選考はそれほど難しくありません。
問題は、3軍の本と引退させる本の選考です。
引退させる本は、捨ててもよい本です。
例えば、高校3年生が中1の問題集を持っている必要はないので捨ててもいいのですが、捨てるのは大学入試に合格してからでもよいので、一応、手元に置いておきましょう。
しかし学習用の本棚に入れておく必要はありません。
引退本専用の段ボールを用意して、そのなかに入れておきましょう。
3軍の本は、2軍でもないし、引退させることもできない本になります。
例えば、びっしり書き込みをした日本史の参考書などは、3軍として扱ってよいでしょう。
内容をほぼすべて覚えていれば引退させてもいいのですが、書き込みをながめると「このころはしっかり勉強したなあ」と再認識でき自信がわきます。
そのような愛着のある本が本棚にあることは、意味があります。
1軍、2軍、3軍の本は、本棚に並べます。
このうち、1軍と2軍の本は「ホットスポット」の近くに置いてください。
1軍と2軍をホットスポット近くに置く
ホットスポットとは、「局地的に価値が高い場所」という意味です。
本棚にもホットスポットがあります。
それは最も本を取りやすい場所です。
本棚のホットスポットに「今もっとも重要な本」を置けば、その本に接触する機会が増えるので、その本から多くの知識や情報を引き出すことができます。
本棚のホットスポットは、人によって異なります。
立って本棚を眺めたときの、目線の高さの棚がホットスポットの人もいるでしょう。
その一段下のほうが手が届きやすい人もいます。
机の前に座った状態で本棚を眺めたときの目線の高さがちょうどよい人もいます。
自分の本棚のホットスポットを決めて、そこに「今」重要な参考書や問題集を置くようにしましょう。
1軍の本をホットスポットに置き、2軍の本を、ホットスポット近くに配置してください。
「入れ替え」を忘れずに
スポーツ選手は、いつまでも1軍にいることはできず、いずれ成績が落ちれば2軍落ちします。
また、2軍の選手は、しっかり練習をすれば1軍に上がることができます。
そして、1軍選手と2軍選手の交代が頻繁に起きているチームほど競争力が働き、強くなります。
本の「1軍」「2軍」「3軍」「引退」も同じです。
本棚の整理をし直すとき、本の評価もし直してください。
1軍として活躍してきた参考書であっても、学力が上がるにつれて、内容が物足らなくなります。
その場合、一気に3軍に落としてもよいでしょう。
そして、新人選手の投入を忘れないでください。
そうです、より難しい内容の参考書を新たに購入して、1軍、または2軍に入れてください。
まとめ~本棚は「知識の仮の保管場所」
学校の試験勉強も大学入試の受験勉強も、やることは同じです。
授業の内容や本に書かれてある知識や情報を頭のなかに入れて、それを試験当日に吐き出すだけです。
しかし、人の脳のキャパシティ(容量)は限度があるので、一気に大量の知識や情報を頭のなかに入れることはできません。
そこで、知識や情報を集められるときに一気に集めておき、手元に置いておくのです。
知識や情報を集めることとは「本を買うこと」です。
手元に置くこととは「本を本棚に並べること」です。
本棚は、知識や情報の仮の保管場所です。
自分の本棚に並んでいる本を見て、「ここに書かれてある知識と情報をすべて頭のなかに入れたら、北大でも東大でも合格できるんだ」と思ってください。
そう思って本棚をながめると、「よし、こういうふうに整理してみよう」というアイデアがわいてくるでしょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。