今回は編入学と転学の違いと、そのメリットについてを解説しています。
短期大学に通われている方であれば馴染みの深い「編入学」ですが「転学」という言葉を知らない方は多いのではないでしょうか。
どちらも「現在通っている大学とは別の大学に入学する」という意味ですが、言葉が違えば意味も違います。
編入学と転学について
編入学と転学についてそれぞれ解説しています。
似たような意味を持っている言葉ですが、表現が違えば意味も当然違います。
意味を確認してから読み進めるようにしましょう。
編入学
奨学金でお馴染みの日本学生支援機構によると編入学は次のように定義されています。
1.退学または卒業後に引き続き同種の他の学校の修業年限の中途へ編入学すること
2.短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)を卒業または修了後、大学(学部)の2年次以上に入学する場合
両方に共通している事は「所属している学校を卒業(もしくは退学)したのち、他の学校へ入学する」という事です。
最も一般的なケースは、短期大学に在籍している学生が大学の三年次に入学するというものです。
本記事ではこのケースを中心に話を進めていきます。
編入学を選ぶ学生の理由としては短期大学では物足りなかった、入試で学力が足りず志望校の短期大学部にとりあえず入学した、将来やりたい事が決められなかったので編入を前提に短期大学へ入学したなどが挙げられます。
その他にも高等専門学校から大学への編入学を目指す方もおられます。
なお編入学についての規定は学校教育法という法律によって定義されており、根拠法が存在します。
短期大学生の編入学については学校教育法第108条、高等専門学校の学生の編入学については同法122条、専修学校生の編入については同法132条。
珍しいものだと高等学校の専攻科に在籍している学生に対しても学校教育法施行規則という法律の第100条によって定められています。
転学
転学についても日本学生支援機構の定義を参考にしてみます。
退学または卒業せずに同種の学校(例えばA大学学部⇒B大学学部、C短大⇒D短大)の相当学年へ異動すること
転学は学校を卒業(もしくは退学)せずに別の学校へ移る行為を指します。
小学校や中学校における転校と同じという認識でも良いでしょう。
学校教育法施行規則でも定義されており第67条に「転学」という文言が記されています。
また広義では同じ大学の異なる学部に移動する事を含むこともあります。
同法では「入学や転学に関する規定は各大学で定める事」としており、大学・短期大学によって転学の方法が違います。
そのため転学を考えている学生の皆さんは現在通っている大学と転入希望先の大学に問い合わせて、必要な資料や申請方法について調べておくことが必要になってきます。
ただし文部科学省のホームページでは一般的な転学の流れとして、手続きの流れを掲載しています。
以下に文科省のHPを参考に転学の方法を整理して掲載しています。
必要なものは転学願書、成績証明書、在学証明書、高等学校の卒業証明書、健康診断表である事が一般的です。
その他大学によって必要なものは異なる可能性があるので転学に関する規定は全て読むようにしておくと安心して手続きを進められます。
その後志願先の大学へ各種書類を提出し、入学審査が行われます。
試験が行われる大学もあれば審査のみで転学を認めてもらえる大学も有るようです。
審査が行われたのち転学が認められると既修得の単位を申請して転学先の大学に通い始めるという流れです。
違いについて
編入と転学の違いは「現在の大学を卒業(もしくは退学)するのか否か」です。
高等専門学校や短大生の方であれば、各学校を卒業したのちに四年制大学の3年次に編入する。
商業を学びたくて大学の商学部に入ったが、法学部の方が自分の進路に合っているので転学をする。
という風に使い分けると良いでしょう。
感覚的な話で例えると編入は進学、転入は転校という具合です。
編入を行う際には試験が行われます。
一度学校を卒業している状態なので入学試験と似たようなものだという認識で構いません。
試験が行われる日程は大学によって違うので、希望する大学のホームページを確認することは必須です。
また編入試験を行っていない大学も存在するので、編入を決めたら直ぐに確認するようにしましょう。
編入学のメリットについて
続いて編入学のメリットについて紹介します。
将来の夢が決まっている方であれば、大学を決める際に悩むことはあまり無いでしょう。
将来やりたい事が決まっていない方にとっては編入学という選択肢は積極的に選んでも良いものです。
キャリアについて考える期間を取ることが出来る
職業の多様化やグローバル化によって様々な職業の選択肢が出来ました。
現代では、職業に関連する知識を得られる事は大学の魅力の一つと言っても過言では無いほどです。
そのため短期大学に入学し様々な職業に関する知識を学びながら進路を決定することが出来ます。
そもそも短期大学に進学する学生の多くは「短大卒の肩書が欲しい、卒業後はすぐに就職する」という方と「四年制大学に進学したいが、専攻の希望がない。
もう少し学んで自分の興味を掘り下げたい」という方の2パターンに分かれます。
短大を卒業する事で職業の幅が大きく広がりますし、最低でも短大卒を条件にする企業も多いです。
また編入を行う事で、短期大学で学んだこととは一切関係のない分野について学ぶという大胆な進路変更も可能です。
将来が決まっておらず、どの四年制大学に進学するか決められないという方であれば、文理選択だけ行って短期大学に進学する価値は大いにあります。
ただし文系理系については短大進学時に決定しましょう。
違う分野の学び直しは相当苦難を強いられることが予想されます。
柔軟な進路変更が可能である
先述の通り短期大学から四年制大学へ編入学を行う事で進路の大幅な修正が可能です。
筆者の周りでは短期大学では外国語を専攻していたが、理系の四年制大学に進学し、数学の教師になったという話があります。
文系理系で移動することは相当大変だったと聞きましたが、自身の覚悟と選択次第ではより理想的なキャリアを形成する事が可能です。
また考え方によっては転職にも積極的になることが可能です。
同じ分野であるか否かを問わず、現在身を置いている環境が変わることは慣れていないうちは相当なストレスを伴います。
環境の変化を編入学によって体験しておくことで転職を行いたいと考えるときも多少は気が楽でしょう。
話し方によっては就活にも強くなる
信念を持って編入学を選択したのであれば、就活でも大きなアピールポイントとなります。
特に違う分野(文学から外国語、工学から生物学など)の大学・学部に編入したのであれば確固たる理念がそこにあるはずです。
なぜ学ぶ学問を変更したのか、得られる事はあったのか等しっかりと理論立てて伝える事が出来れば就活に苦労する事は無いでしょう。
「現役時代は手の届かなかった大学だが、諦めず粘り強く勉強を続けた」「短大在籍中に本気で取り組みたい事が見つかった」などのエピソードはむしろプラス要素です。
気迫が伝わるような熱弁を振るえば企業の採用担当者の方も信頼して仕事を任せられると感じるはずです、経験談ほど説得力のあるものは存在しません。
良いことばかりでは無い!編入のココに気をつけて
ここまで読み進めていただいた方は編入に対して良いイメージをお持ちの事かと思われます。
ですが意味もなくとりあえず編入を目指す事は控えたほうがよろしいでしょう。
あくまでも進路をじっくりと考える期間として考えていただければ幸いです。
お金が掛かる
短期大学を経て四年制大学に編入するにはお金が余分に発生します。
最も分かりやすいもので解説すると入学金です。
三年次編入にあたっては「二年分の学習が免除された入学」という形をとります。
そのため入学金を編入時に納めなければなりません。
平均額は公立か私立か、文系か理系かによって様々ですがおおよそ30万円ほどが余分に掛かる計算です。
学費と比べるとあまり意識しづらいですが、それでも相当な金額です。
可能であれば高校生のうちに進路をある程度決定して四年制大学へ進学することをお勧めします。
二年以内に進路を決められなかったら意味がない
短大を「自分の興味関心と向き合う期間」として過ごすのであれば、編入の出願時には自分の進路を決定しなければなりません。
そのため単に決定のリミットを先延ばしにしたというだけでは意味がありません。
短期大学や専門学校に在籍している期間で学びたい分野を確定する事、深く学びたいことを見つける事、就職を決める事が使命です。
授業やボランティア活動、アルバイトなどで職業に対する関心を深められるよう精力的に活動することが重要となります。
本来の志望校に手が届かなかった場合は話が変わってきますが、とりあえず短期大学に入学したという場合は注意する必要があります。
出来るだけ早く自分の就きたい仕事を見つけられるように様々な事にチャレンジしましょう。
まとめ:編入は計画的に
四年制大学への編入学を目指す方には様々な事情が有ることかと思われます。
本来の志望校に対して歯が立たなかった、自分が本気に取り組める仕事が見つからなかった、学びたいものが無かった等十人十色です。
編入学は活用すれば将来の選択肢が広がるなどメリットも沢山ありますが、一方でしっかりと考えなければ出願時に学びたい・進みたい分野がないという自体に陥りがちです。
もし短期大学や専門学校、高等専門学校から四年制大学への編入学を検討しているのであれば将来設計と並行して将来の事について深く考えてみて下さい。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。