中学校を卒業すると通常高校へ進学するという進路である場合が殆どです。
ですが中には【高等専門学校】へ進学する方も一定数おられます。
社会的認知度は低いものの高等専門学校では卒業後即戦力となることの出来る専門性の高い教育が受けられる事で知られています。
本記事では高等専門学校について、その魅力を記しています。
高等専門学校とは
高等専門学校は学校教育法第一条に記されている正真正銘の学校です。
法的に学歴が保証されている事が特徴です。
同法によると「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成する」という目標のもと教育が展開されています。
卒業すると準学士という称号を得ることが出来、短期大学を卒業した学生とほぼ同等の学歴を有します(短期大学の卒業生はかつて準学士の称号が与えられてきましたが現在は短期大学士という学位が設定されています。就職面での価値は同等だとみなされます)。
高等専門学校で学べること
高等専門学校の修業年数は5年。
商船に関する学科では5年と半年となっています。
この期間に専門性の高い教育を受けることになるのですが、その科目は主に「工学」「技術」「商船」の三種です。
電気や設計などの理系科目が多い印象を受けますが、実際に高等専門学校で開講されている学科の殆どが理系の学科です。
高等専門学校は卒業後に即戦力となる人材の育成を目標としているため、非常に高レベルな学問を修めることが可能です。
学科は機械工学科、電気工学科、情報工学科、物質工学科、建築学科、商船学科がメインです。
学歴はどうなるのか
先述の通り学歴は準学士という称号が与えられます。
かつては短期大学を卒業した学生にも与えられていた称号ですが、現在は短期大学卒の学生には短期大学士という学位が与えられます。
学位と称号については別のものとして扱われますが、社会では実質同等に扱われています。
そのため高等専門学校を卒業すると短大卒として就活を進める事になり、短大卒と同等の条件で働くことになります。
専門性が発揮される職種に就職する場合は高等専門学校が圧倒的に有利です。
例えば航海士(フェリー等の操縦士)の場合だと、それに必要な資格を得るためには高等専門学校の商船科か大学の海事系学部へ進むしか有りません。
高等専門学校では三級航海士(国家資格)の受験資格を得ることが可能。
三級航海士の受験資格を得る事のできる他の手段としては海事系の大学を卒業後、更に半年間は乗船実習を行わないといけない都合から高等専門学校が有利であると言えます。
高等専門学校卒の学生は在学中に三級航海士の受験資格を獲得することが可能で、更に大学卒の学生よりも早い段階から現場に出ることが可能です。
北海道の高等専門学校一覧
北海道には4つの高等専門学校があります。
どの学校も工業系の高等専門学校で専攻は主に機械系、電気系、化学系そして建築系です。
それぞれの詳細を以下に記してあるので参考までに御覧ください。
旭川工業高等専門学校
JR旭川駅から道北バスで30分程の場所に位置する高等専門学校です。
開講されている学科は「機械システム工学科」「電気情報工学科」「システム情報制御工学科」「物質科学工学科」と一般科目(人文系・理数系)です。
それぞれのカリキュラムに関しては学校のホームページから詳細を御覧ください。
※参考:旭川工業高等専門学校HP
所在地:北海道旭川市春光台2条2丁目1-6
苫小牧工業高等専門学校
JR苫小牧駅から道南バスで40分、もしくは一駅隣りの錦岡駅から徒歩30分の立地である高等専門学校で創造工学科のみの開講であることが特徴です。
創造工学科の特色は一年生では専門分野に関わらず学級編制が行われる事です。
二年生では「機械系」「都市・環境系」「応用化学・生物系」「電気電子系」「情報科学・工学系」の中から自分の興味がある分野を選択します。
先述のいずれかの分野に進みたいことは決定しているが、どの分野にするかまでは絞りきれていない。
そんな方にお勧めの高等専門学校です。
※参考:苫小牧工業高等専門学校HP
所在地:苫小牧市字錦岡443番地
釧路工業高等専門学校
北海道釧路市に位置する日本最東端の高等専門学校です。
JR釧路駅から帯広方面に一駅のJR大楽毛駅から徒歩15分とアクセスも比較的良好です。
苫小牧工業高等専門学校と同様に創造工学科が設けられていますが、二年生以降のコース選択は少し異なります。
「情報工学」「機械工学」「電気工学」「電子工学」「建築学」の5分野から選択が可能です。
建築学コースは苫小牧工業高等専門学校にはありませんので、建築分野を希望する学生であれば釧路工業高等専門学校に進学することになります。
※参考:釧路工業高等専門学校HP
所在地:北海道釧路市大楽毛西2丁目32番1号
函館工業高等専門学校
JR函館駅から函館バスで約35分、函館空港方面からもアクセスが可能な高等専門学校です。
「生産システム工学科(ITソフトウエア・設計加工系)」「物質環境工学科(材料物性・バイオ環境系)」「社会基盤工学科(都市デザイン・建築設計系)」の3学科が開講されております。
近年注目を浴びているIT系の専門知識を身に着けたい方にとっては函館工業高等専門学校はとても魅力的な選択肢ではないでしょうか。
他建築や都市デザイン系の分野が学べる学科も開講されていますので詳しく知りたい方は学校HPをご覧になって下さい。
※参考:函館工業高等専門学校HP
所在地:北海道函館市戸倉町14-1
大卒との違いについて
ここまで高等専門学校内で学べる事項について取り上げてきました。
これからは卒業後の進路について四年制大学卒と比較してみましょう。
就職での位置づけについて
就職では四年制大学は大卒として、高等専門学校は実質短大卒としてスタートすることになります。
なので就職に関してはどちらも高卒より有利な状況ですが、大卒と比べて専門職への就職率が高いのが高等専門学校の強みです。
釧路工業高等専門学校を参照してみると、電子工学科からは北海道電力、機械工学科からはJR北海道への輩出者が出ているなど専門的な知識を活かすことのできる業種へ就職している事が見て取れます。
大学よりも2年早く現場で活躍する事が出来るので自身のスキルを磨き上げるには高等専門学校が有利な状況にあります。
参考:釧路工業高等専門学校「平成30年度本科卒業生及び専攻科修了生就職先一覧」
社会的な位置づけについて
社会的な位置づけに関しては大卒の方が有利位置にあります。
高等専門学校はあくまでも短期大学と同等の扱いですのでどうしても不利になってしまいます。
詳しくは後述しますが、賃金も大卒の方が(同じ企業に務め続けるのであれば)有利です。
ただし入る業界によっては高等専門学校の方が専門知識を学ぶ・実習する機会が多いので社会からの期待は高くなります。
賃金の違いについて
賃金に関してはデータが出ているので紹介します。
厚生労働省の調査結果によると高等専門学校・短期大学を卒業した人の初任給は約18万3,000円、ユースフル労働統計の資料によると高等専門学校・短期大学を卒業した人の生涯賃金は約2億1,300万円です。
同調査結果によると大卒の初任給は約21万円、生涯賃金は約2億7,000万円です。
大学卒の方が初任給では約3万円、生涯賃金では約6,000万円違ってきます。
ただし本人の働き方にもよるのでキャリアアップを重ねていけば高等専門学校を卒業しても賃金面で大卒を追い抜くことは十分に可能です。
高等専門学校を卒業した後の進路
最後に高等専門学校を卒業した後の進路について簡単に掲載しています。
卒業後の進路も視野に入れて検討するようにしましょう。
就職
高等専門学校の就職率は殆ど100%を維持しています。
高等専門学校では特定の業界に関する専門的知識を身につける機関である性格上、その筋へ就職する方が多い様子です。
つまりは社会で通用する技能・知識を身につけられるという事です。
四年制大学への三年次編入
学校教育法第122条によって高等専門学校を卒業した学生は四年制大学への三年次編入が認められています。
専門的知識を身に着けた上で更に学問を深める・大卒賃金を獲得するという事が可能です。
専攻科への進学
あまり一般的なケースではありませんが、高等専門学校に設置されている専攻科へ進学することもあり得ます。
専攻科では高等専門学校で学習した事を更に深めるという教育を行っています。
専攻科を卒業すると学士を取得することができ、更に大学院への出願も可能となっています。
まとめ
高等専門学校についての記事でした。
高等専門学校は中学から進学することの出来る学校で修業年数は5年(商船系は更に6ヶ月が追加される)です。
順調に卒業すると20歳となり、社会的には短期大学を卒業した者と同等の地位を持つことが特徴です。
専門的な知識を身につけるための学校である性格上学科は理系に偏っていますが、その筋に就職を決めている場合は非常に魅力的な選択肢となりうるでしょう。
特に商船系や電気系の学科は評価が高く重宝されます。
進路に関しても四年制大学への編入や専攻科への進学、就職などバリエーションがあります。
現在社会で求められている「即戦力人材」の育成にはうってつけの学校です。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。