エンパワメントスクールがすごい!

エンパワメントスクールがすごい!【北海道にもあるの?】

北海道内の児童・生徒、保護者にとって残念なことですが、道内の子供たちの学力は高いとはいえません。

2019年度の全国学力テストで、北海道は小学生で40位、中学生で35位という結果でした。
47都道府県を上位グループと上位グループにわけると、北海道勢は下位グループの下のほうに位置します。

北大の入学者の7割は道外出身者です。

北大は道内最高峰の大学なので、道内の高校生は「北大に入りたい」と強く思っています。
その一方で、道外には東大や京大や早慶など「北大よりも入りたい」大学がたくさんあります。

それでも道内高校生は、北大受験の競争で、道外高校生に圧倒的に負けてしまっているのです。

学力を上げる方法はたくさんありますが、ここでは大阪府が積極的に取り組んでいるエンパワメントスクールを紹介します。

大阪府のエンパワメントスクールの概要

植物の矢印エンパワメント(Empowerment)とは「力を引き出す」という意味です。
エンパワメントスクールとは、子供が、現在属している学年に求められる学力を持っていない場合に、集中的に特別な教育を提供することで、学年相応の学力を身につけさせる取り組みのことです。

エンパワメントスクールの仕組みを高校に導入している、大阪府の取り組みを紹介します。

8校で導入

エンパワメントスクールの仕組みを導入しているのは、次の8つの府立高校です。

西成高校、長吉高校、箕面東高校、成城高校、岬高校、布施北高校、淀川清流高校、和泉総合高校

残念ながら、まだ北海道には存在していません…。

ですが、これから解説するエンパワメントスクールを知ると、「北海道にも早く設置してほしい!」と感じることでしょう。

「こんな学校は嫌だ」と言っている子供をエンパワメントする

大阪府はエンパワメントスクールのコンセプトを「『こんな学校は嫌だ』というあなたの声に本気で応える学校」と説明しています。

大阪府は、府内の一部の高校生が次のような声を挙げていることを問題視しました。

「わかってないのに、どんどん進むからついていかれへん!」

「先生がしゃべるばっかりで、黒板写すだけやからおもろない!」

「学校へ行く意味わかれへん!」

そこで大阪府は、エンパワメントスクールの仕組みを一部の高校に導入し、次のような対策を打つことにしました。

対策1

勉強をわかるところから始めて、教え方をわかりやすくする工夫する。

そのために、子供がつまずいたところから徹底的にやり直す。

オリジナル教材やオリジナル映像を使って、弱点を強みに変える授業をする。

対策2

社会への疑問について、生徒から意見を出してもらう。だから「ためになる」授業になる。

自主性と社会人基礎力の習得を目指す。

社会人基礎力とは、社会で活躍するのに必要なすべての力のこと。

対策3

体験や実習を重視した授業にする。就職や進学を意識した授業にする。

生徒たちの夢にフォーカスを当てる。

学習する科目は、進路に応じて選択できるようにする。

エンパワメントスクールでは「わかる授業」「おもしろい授業」「意見を出し合う授業」「本物に触れる授業」を行います。

3つの力を身につけさせる

3本の指エンパワメントスクールで学ぶ生徒は、基礎学力考える力生き抜く力を身につけることができます。

基礎学力とは、読み・書き・計算のことです。
進学に必要な学力の獲得を目指します。

考える力とは、自分の意見を持つことであり、異なる意見を尊重することです。

生き抜く力は、世の中の仕組みと世の中の仕事を知ること、進路を選択すること、社会に参加すること、で身につきます。

具体的にどのように教えているのか

エンパワメントスクールでは、具体的にどのように教えているのでしょうか。

国数英を集中的に学習

エンパワメントスクールでは、国語、数学、英語の3教科に力を入れています。
1年生は、毎日の1時限目と2時限目の計90分を使って、30分×3教科の授業を行います。

その30分×3教科の授業は、あえて教科書にとらわれない内容にして、学力の基礎を徹底的につくっていきます。

そのため、普通の高校1年生が学ぶ必履歴科目や選択科目を2年生以降に回します。

これは、国数英がつまずきやすい教科であり、国数につまずくと社会や理科にも悪影響を及ぼすからです。
英語は積み重ねが重要な教科なので、中学でつまずいた部分を放置すると、高校の授業についていくことはできません。

この「国数英の12時限集中授業」は、習熟度や希望によって2年生、3年生でも継続できます。

NHK高校講座も使う

パソコン教室エンパワメントスクールでは、NHKが制作している高校講座も使います。
「学校の先生ではない」ことで新鮮さが生まれて、生徒を飽きさせません。

また、タブレットや電子黒板も使います。

ドリル学習では、学習到達度を細かく判定し「今解ける問題」を出すようにします。
解ける体験をすることで学習意欲を高めます。 

グループ学習、参加体験学習

勉強が苦手な生徒は、実社会と学習のつながりがみえていないことがあります。
そこで、高校で学ぶことが実社会で役に立つことを実感してもらうために、地域の人や企業の人に聞き取りをする参加体験学習にも力を入れます。

また、グループ学習によってコミュニケーション力を高めていきます。

国立大すら目指す

エンパワメントスクールは、低い学力を普通の学力にすることを目指しつつ、さらに高い学力も目指します。

国立大への進学を目指す生徒もエンパワメントの対象になります。

そのためエンパワメントスクールでは、生徒の進路希望に対応した科目選択ができるようにしています。

問題行動を「絶対に」許さない

学校教育では滅多に「絶対」という言葉を使いませんが、大阪府のエンパワメントスクールの概要を説明した文章には「イジメ、問題行動を絶対に許さない」と明記されています(※)。

※参考:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/23751/00000000/01_gaiyo.pdf

そのためエンパワメントスクールでは、学校と家庭と関連機関が連携し、大人が子供を見守る体制をつくります。

またエンパワメントスクールにスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、進路支援コーディネーターを配置して、教師が持っていない専門スキルで生徒たちをサポートします。

管理教育や監視社会が否定的に語られることが多くなり、学校で管理や監視が甘くなっていることに不安を感じている保護者や子供は少なくないはずです。
イジメと問題行動を撲滅するには、やはり見守り体制の強化は欠かせないでしょう。

「数値目標」という学校側の覚悟

大阪府のエンパワメントスクールには数値目標があります。
公立の教育現場で数値目標が設定されるのは異例です。
数値目標を設定すると、その数値に達しなかったとき失敗とみなされるからです。

それにも関わらずあえて数値目標を設定し公開したのは、大阪府の本気度であり、高校側の覚悟であるととってよいでしょう。

その数値目標は次のとおりです。

  • 進路決定率を全国平均の94.4%を上回るようにする
  • 学校教育自己診断における生徒の学校生活満足度を80%以上にする(全国平均75.0%)

エンパワメントスクールに入るには

大阪府でエンパワメントスクールを実施している「西成高校、長吉高校、箕面東高校、成城高校、岬高校、布施北高校、淀川清流高校、和泉総合高校」の府立8校への入学方法を紹介します。

入学選抜は学力検査と面接

エンパワメントスクールの入試は、国語、数学、英語、社会、理科の5教科の学力検査と、51組の集団面接が課されます。

面接は特に重要で「学ぶ意欲」をみられます。
3の今は勉強が苦手でテストの点数が低くても「これからもっと勉強を頑張りたい」と思っていることが大切です。

求める生徒像

8校はそれぞれ、自校が求める生徒像「アドミッションポリシー」を設定しています。
それらを集約すると、以下のようにまとめることができます。

  • 基礎から学び直したい生徒
  • 国際交流やボランティアに興味がある生徒
  • 欠席、遅刻をせず、授業を大切にする生徒
  • 生活習慣が確立している、まじめ、コツコツタイプ
  • いじめを許さない指導に共感できる生徒
  • 社会にでて役に立ちたいと考えている生徒

エンパワメントスクールは、学力より「想い」を重視することが、ここからもわかります。

淀川清流高校でやっていること

大阪府の8校のエンパワメントスクールのなかから、府立淀川清流高校が「やっていること」を紹介します。

淀川清流高校では「情報・アート」「ビジネス・教養」「環境・健康」「数理・人文」の4つの系列を用意しています。

プログラミング情報・アート系列では、情報、デザイン、芸術の大学や専門学校への進学や就職を目指します。
プログラミング、情報演習、デザインワーク、アートワークなどを学びます。

ビジネス・教養系列では、社会人基礎力の習得を目指します。
時事社会、暮らしの数学、パソコンの仕事術といったユニークな授業を受けることができます。

環境・健康系列では清掃活動のボランティアをしたり、公害や地球温暖化問題について学んだりします。

数理・人文系列では基礎学力に加えて、大学進学に必要な学力の獲得を目指します。
国語発展演習、表現入門、数学発展演習、英語リーディングといった大学入試に必要な科目を学びます。

まとめ~当たり前のような感じもする

エンパワメントの意味は「力を引き出す」です。
だとすると、エンパワメントスクールの仕組みを導入している高校だけでなく、国内のすべての学校が子供たちをエンパワメントしなければならないはずです。

そして大阪府のエンパワメントスクールのコンセプトは、「『こんな学校は嫌だ』というあなたの声に本気で応える学校」でした。

これもエンパワメントスクールに限らず、子供たちから「こんな学校は嫌だ」といわれているすべての学校は、すぐに改善しなければならないはずです。

道内のすべての学校が、エンパワメントスクールになるといいですね。

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