国語は公立高校入試において非常に重要な科目です。
しかし、有効な対策方法が分からないという子がよくいます。
そこで今回は、国語の入試対策に焦点を当てて解説していきます。
まずは漢字から
国語の勉強においてまず基本となるのが、漢字です。
入試では漢字そのものの出題もありますし、長文読解では漢字を知らなければ前後から意味を推測するしかなく、そのために内容理解度が下がったり、読解スピードが遅くなったりします。
漢字はただ知っているかどうかの問題なので、やればやるだけ力がつきます。
実際の高校入試では、漢字は、配点が100点中8~20点程度です。
たとえば北海道の平成28年度入試でみてみると、漢字の問題が大問1の問1と問2で4つずつ(配点は各1点)、大問2の問1(配点は2点)で出題されています(※)。
国語の入試問題は漢字から始まる
北海道もそうですが、大抵の場合、漢字の読み書きの問題が最初に出ます。
ここでつまずくと、のっけからモチベーションが下がってしまいます。
勢いにのっていくためにも、漢字は確実に分かった、と思えて解答できるのが良いです。
漢字は正確な読み書きが必要
漢字は、なんとなく知っている程度ではダメです。
つまり、しっかりと読めて、書ける必要があります。
先の北海道の問題でみてみます。
読み
大問1問1は読みの問題です。
短文のなかで、傍線部の読みを答えさせます。
傍線部は、帰路、描写、反らす、催す、に引かれています。
どれも平易な問題です。
ただし、試験で緊張している場面だと、咄嗟に出てこないことがあります。
ど忘れしないようにするためには、普段からなんとなく読み流すのではなく、教科書に出てきた漢字は、しっかりと意識をして読めるようにします。
できれば、声を出しておくと良いです。
音でも憶えられるので、それこそ、あれ、なんだったっけ?とはなりにくくなります。
ちなみに答えは、順番に、帰路(きろ)、描写(びょうしゃ)、反らす(そらす)、催す(もよおす)です。
もしすぐに出てこなかった問題は、声に出して反復しましょう。
■過去問に出たらもう出ない?
どうせ過去問に出たものは出ないからいいや、という思考はいけません。
確かに一度出た問題と同じものが出る可能性はとても低いです。
しかし、今度は読みではなく書きの問題で出題されたり、長文のなかで入っていたりします。
このとき、分からないままにしておくと、違った形でしっぺ返しが来ます。
過去問に出された問題も、分からなかったり、誤答したものはちゃんとチェックしておくべきです。
書き
次に、大問1問2の書きの問題をみていきます。
こちらも短文中の、今度はひらがなに傍線が引かれています。
てっきょうを渡る、とうけいを取る、観光資源がゆたか、糸をたらす、といった具合です。
書きの問題のほうが、やはり苦手意識を持っている人が多いです。
読めるけど書くとなると難しいと感じます。
これは、単純に勉強不足だといえます。
書きの問題に対応するには、書いて勉強するのが一番の対策です。
■とにかく書いて憶える
教科書に出てきた分からない言葉は、必ず書いて憶えるようにします。
さらに、読めるけれど書くとなるとどうだろう、という問題も日頃から書くようにします。
慣れてくると、紙にペンで書かなくても、指で諳んじたり、頭のなかで書いたりして充分に学習効果を得られるようになります。
ここまでくると、漢字に慣れて、憶えることにも慣れた証拠です。
最初の頃は、頭で書くだけではすぐに忘れてしまいます。
慣れるまでは我慢をして何度も紙に書く、という作業が必要です。
■問題のレベルは易しい
ちなみに先の問2の答えは順番に、鉄橋、統計、豊か、垂らす、です。
どれも読み同様に極めて平凡で優しい問題です。
そんな漢字知らなくても問題ないでしょー、というようないかにも試験然としたものではなく、日常的に出会う漢字です。
これがすらすらと不安なく書けるぐらいでないと、長文読解の問題も怪しくなります。
公立高校入試では、このレベルの問題しか出ませんから、上記のように書く対策をしていれば、容易に対応できます。
■問題集を利用するのも手
教科書に出てきた漢字を書く、という工程が面倒だと感じる場合、問題集をひたすら解いて繰り返すのも手です。
塾で入手した問題でも良いですし、市販の問題集でも良いです。
市販のものでは、「高校入試 出る順中学漢字スタートアップ 受験漢字1900 」の評判が高いです。
これは、難度別に分かれていて、Cレベルでは難関私立にも対応しています。
問題の下に答えが赤字で書かれていて、赤シートで隠せます。
効率的に漢字の勉強をしたい人におすすめです。
文法
高校入試では文法問題も出題されます。
数は少ないですが、上位の高校に受かる子は落とさないので、ここで差をつけられるわけにはいきません。
文法は、極めて簡単なので、特別な対策はいりません。
普段から文を読む練習をしていれば、自然に身に付く程度のものです。
出題例
たとえば、北海道の平成28年度入試では大問1問4で、能動態、受動態の別が出題されています。
「兄は弟に夢を託した」「弟は兄に夢を○○」という趣旨の2文が与えられていて、同じ意味になるように、○○に言葉を挿入せよ、というものです。
答えは、「託された」になります。
このように、一般的な読解力を有していれば、なんなく答えられます。
大事なのは、問題の形式への慣れです。
反射的に答えられるように、演習を通して慣れておきましょう。
古文・漢文
古文・漢文については、視覚的に苦手意識を持つ子が多いです。
しかし、はっきりいって古文・漢文は見掛け倒しです。
高校入試については、厄介な古文単語や活用、古文法の知識が必須ではありません。
確かにそのような知識があれば解きやすいですが、なくても大丈夫です。
時間対効果を考えると、大学のセンター試験のように古文単語を覚えるよりは、漢字、長文読解の演習をしたほうが良いです。
古文や漢文の問題は、全体の文のおおまかな内容を答えさせたり、特定の動作の主語、あるいは、主語がした動作を答えさせるものです。
必要なスキルは一般的な読解力
詳細に文の構造を把握できなくても、文の大意が分かれば答えられます。
必要なスキルは古文の知識というより、一般的な読解力です。
えてして長文読解が得意な子は古文で失点しないのはそのためです。
漢文については、レ点、上下点、一二点などの返り点、ひらがなを使う場所といった書き下し文にする方法を知っておくことが必要です。
これについては、ものの数分あれば理解できます。
古文も漢文も、出る文章は大体決まっています。
問題演習を繰り返すことで、前に見た文章に再会する可能性があります。
過去問演習をたくさんしておけば、古文・漢文で点を落とさなくなります。
長文読解
国語の入試で半分以上の配点を占めるのが、長文読解です。
これを苦手とする子が多く、苦手なままだと当然、志望校合格が難しくなります。
長文が得意な子は読書量が多い
特に対策をしなくてもできてしまう子がいることから、長文読解はセンスだと言う人がいます。
実際のところ、生まれ持っての才能というよりは、これまでの読書経験がものをいっているケースがほとんどです。
夏休みには公民館や図書館へ行ってたくさん本を借りてきて読む子は、長文読解が得意であることが多いためです。
そういった子は初めから文を読むのが速く、内容把握能力が高かったわけではなく、度重なる読書経験のうちに、自然と培われています。
すなわち、長文読解が得意な子と苦手な子の差は、単に活字の読書量の差ともいえます。
幼少期からの積み重ねが物を言うので、受験の直前期では厳しいものがあります。
■とにかく長文を読むことが大事
ただし、伸びない力ではありません。
少しでも時間が空いたら、過去問など長文に触れるようにします。
問題集に限らず、休憩の時間などに自分が好きな小説を読むのでも良いでしょう。
ただし、ライトノベルなどの会話ばかりのものは学習効果が見込めません。
普通の小説であるような、地の文(会話以外の文章)がベースのものを選ぶようにしましょう。
それであれば、もちろん児童書でも大丈夫です。
スピード重視の演習
長文ではスピードが大事です。スラスラと読んで、問題でじっくり考えられると、正答率が上がります。
大問の長文なら15分以内を目指しましょう。
問題を先に読むのをおすすめしない理由
塾などでは、長文読解が苦手な子に対するテクニックとして、まずは問題を読もう、と指導することがあります。
しかし、これは実は長文読解が得意な子にこそ妥当するものです。
長文読解が得意な子だからできるパラドックス
先に問題を読ませる意図は、長文のなかでも解答に必要な部分だけをピックアップして、そこを重点的に読むことにより、効率を上げて時間を短縮させることにあります。
長文が苦手な子に、問題に対応した部分を抜き出し、いらない部分を流し読みするような効率さが、本当にあるでしょうか。
その能力があるのであれば、長文をスラスラと読み、大意を把握して、傍線部が引かれていることなどから、この辺りが聞かれそうだな、という勘を働かせることのほうが、遥かに容易です。
つまり、スピーディーに問題を読んで解答に辿り着ける能力があるからこそ、先に問題を読んで当たりをつけてより時間を短縮する、というトリッキーなことが可能になります。
先に読んだ問題の内容を忘れてしまう
さらに長文が苦手な子は、そもそも文を読むのが遅い傾向がありますから、問題を読んでも、長文を読んでいるうちに聞かれていたことを忘れてしまって、結局また同じ問題を読むことになり、余計に時間がかかる事態にもなります。
長文が苦手な子ほど、やはり王道の方法しかありません。
長文の過去問演習を繰り返して、とにかく文と問題形式に慣れることです。
記述式に慣れる
問題形式としては、本文に合致する内容を選ばせるものと、本文の内容を踏まえた記述式のものがあります。
前者は消去法が使えて、大意を把握していれば容易です。
後者も、読解力があれば、表現力は一般的なもので対応できます。
過去問を通して慣れておけば充分です。
具体的には、「線1『矛盾した感覚』とありますが、筆者の感じた矛盾した感覚はどのようなものですか、三十五字程度で書きなさい。」といった問題が出題されます(平成28年度 北海道 公立高校入試 問5(1))。
このように、線が引かれている語句に関連して、それを本文の内容や前後関係から説明させる問題が典型的です。
文の内容をしっかりと理解していれば解けます。
高校入試の国語対策についてまとめ
国語は、どのように対策したら良いのか分からないと悩む子が多い科目です。
重要なのは、学習の基本、王道をはずさないことです。
まずは漢字の学習から始まり、過去問を筆頭に問題演習を繰り返して慣れることです。
長文読解も同じです。
先に質問を読むなど小手先のテクニックよりも、とにかくスピーディーに本文を読んで内容を把握して、余裕を持って問に答える、これをマスターすることが大切です。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。