学資保険の知識を必要とするのは、子供が生まれたばかりの夫婦です。
もし「この子を将来、大学に通わせたい」と思ったら、学資保険に加入すれば教育資金を無理なくつくることができます。
しかも学資保険は、保険料として支払うお金より、手に入れることができる教育資金のほうが多くなり、さらに万が一の保障もついています。
もちろん学資保険は、子供が小学校や中学校に上がったタイミングで加入することもできます。
生徒や学生もこの機会に、学資保険について知っておいてください。
もし保護者が「あなたに」学資保険をかけていたら、あなたが幼いころから大学に入れてあげたいと思っていたことがわかります。
親への感謝の気持ちが強まるでしょう。
保護者にも子供にも知っておいてほしい学資保険について紹介します。
大手保険会社の学資保険をみてみよう
学資保険の仕組みは複雑なので、2段構えで解説します。
まずはイメージをつかみやすいように、大手保険会社の学資保険の内容を紹介します。
その後に、学資保険の基本的な構造や基礎的な用語を解説します。
説明が一部ダブりますが、そのほうが、理解が深まると思います。
月13,350円で教育資金300万円を得る
ニッセイ学資保険で、以下の条件で加入した場合、月13,350円の支払いで、教育資金300万円をつくることができます。
・契約者:30歳の親
・被保険者(子供):0歳
・保険料支払い期間:子供が0歳のときから学資年金開始まで(子供が18歳まで)
・毎月の保険料:13,350円
・学資年金の総額:300万円
・学資年金開始年齢:子供が18歳の時点
学資年金とは、契約者に支払われるお金のことで、教育資金に充当できるお金です。
30歳で子供を授かった親が、0歳の子供を被保険者として学資保険に加入しました。
この時点から子供が18歳になるまでの18年間、毎月13,350円の保険料を支払い続けます。
その支払い総額は2,883,600円(=13,350円×12カ月×18年)になります。
この子が18歳になった時点で、ニッセイは契約者である親に、第1回学資年金として100万円を支払います。
親はこのお金を入学金や授業料などに使うことができます。
そしてこの時点で、親はもう月々の保険料を支払う必要はありません。
そしてその後、19歳、20歳、21歳、22歳の4回にわけて、各50万円ずつ、計200万円が支払われます。
この時期は大学生の子供の授業料だけでなく生活費もかさんでくるので、この現金はとてもありがたい存在になるでしょう。
つまりこの学資保険のプランなら、親は総額2,883,600円をニッセイに支払い、ニッセイから計300万円を受け取ることができます。
親は116,400円(=300万円-2,883,600円)「得」することになります。
ニッセイはその分「損」するようにみえますが、ニッセイは親から受け取った2,883,600円で投資をして利益を挙げるので「損」以上の「得」を得ることができます。
万が一のときの保障
親の「得」は116,400円だけではありません。
保険料を支払っている期間に(つまり、子供が18歳にまるまでの間に)、契約者(親)が死亡してしまった場合、保険料を支払う必要がなくなったうえに、学資年金計300万円は通常通り支給されます。
つまり親も子も、生命保険と同じ効果が得られるわけです。
生命保険では、契約者が死亡したときに、月々の支払いが終了して家族に多額の保険金が入ります。
学資保険も死亡した時点で月々の支払いが終了して現金を入手できる権利が得られます。
北海道の学資保険
北海道民もニッセイの学資保険を使うことができます。
道内のニッセイの支店や営業所などに連絡すれば、無料で説明を受けることができます。
また、北洋銀行はアフラックや東京海上日動あんしん生命の学資保険を取り扱っています。
北海道銀行は2019年7月現在、学資保険の取り扱いを休止しています。
学資保険の基礎知識
実際の学資保険についてのイメージができたところで、専門用語の解説を含めながら基礎知識を身につけていきましょう。
なぜ普通の貯金ではなく学資保険なのか
まず、なぜ普通の貯金ではなく、学資保険という商品が存在するのか、について考えてみます。
先ほどのニッセイの学資保険では、親は保険料という形で毎月13,350円をニッセイに支払っています。
子供が18歳になったら戻ってくるのであれば、その13,350円を普通の預貯金に回せばいいはずです。
もちろんそれでも問題ありません。
しかし普通の預貯金は、すぐに降ろして使うことができてしまう性質があります。
人間はえてして、使うことができるお金があるために、お金を使うことを考えてしまうものです。
しかし保険会社に払い込む形にしておけば、それは相当の非常時以外には使うことができないお金になるので、その心配がありません。
返戻率(へんれいりつ)を考えよう
教育資金を学資保険でつくるメリットはまだあります。
先ほど紹介したニッセイの学資保険では、親は総額2,883,600円(=13,350円×12カ月×18年)を支払い、教育資金(学資年金、または満期保険金)として計300万円を得ることができます。
保険料の支払総額2,883,600円に占める学資年金300万円の割合のことを返戻率といい、この場合104%になります。
返戻率の計算式は以下のとおりです。
返戻率(%)=学資年金÷支払い総額×100
返戻率が100%を超えると親(契約者)は得することができます。
この場合も返戻率が104%と100%を大きく上回るので、116,400円得することができました。
親が得る4%(116,400円)は、親が保険会社に資金を貸し付け、保険会社から得る利子と考えることができます。
18年で4%の利子がつくということは、単純計算で1年間で0.22%の利子となります。
「わずか0.22%の利子」と感じるかもしれませんが、メガバンクなどの有名な銀行に普通の預金として預けた場合の利子は0.001%でしかありません。
例えばメガバンクの普通預金に2,883,600円を預けて18年後に引き出すと、2,884,148円にしかなりません。
548円しか増えません。
年利0.22%の「すごさ」をご理解いただけたでしょうか。
したがって学資保険を契約するときは、保険会社の営業担当者に、返戻率がどれくらいになるのか尋ねてください。
すべて私立なら2,500万円かかる
学資保険を使う最大のメリットは、お金をつくることです。
当然のこと、と思わないでください。
教育費については、「教育にはお金がかかる」と大雑把に考えるのではなく「いくらかかるのか」をしっかり把握しておきましょう。
文部科学省の「子供の学習費調査」などによると、幼稚園から大学まですべて私立に通うと約2,500万円かかります。
すべて国公立でも806万円かかります。
先ほどニッセイの学資保険のシミュレーションでは、18年間にわたり毎月13,350円の保険料を支払い続け、300万円の教育資金を得るプランを紹介しましたが、300万円では、「全私立」でも全学費の12%しか賄うことができません。
「全国公立」でも300万円は806万円の37%でしかありません。
返戻率104%で、18年後以降に教育資金総額900万円を得るには、月々の保険料を40,050円にしなければなりません。
これなら、18歳のときに300万円、以降、19歳、20歳、21歳、22歳のときにそれぞれ150万円ずつ支給されます。
「全国公立で大学まで進学させて、教育資金の心配をなくすには、子供が生まれたときから月4万円の学資保険に加入すればよい」ことがわかります。
中途解約すると「得」どころか「損」することもある
先ほど「教育資金は預貯金でつくるより学資保険でつくったほうが得」と紹介しましたが、学資保険のような金融商品には「『得』を得ようとするとリスクが高まる」という法則があります。
つまり、学資保険は預貯金より多くの「得」が得られるので、それだけリスクも大きくなるということです。
リスクとは損が発生する確率のことです。
学資保険のリスクは、中途解約すると返戻率が100%を下回ります。
学資保険の月々の保険料の支払いが家計的に厳しくなると、中途解約を選択することになるかもしれません。
その場合、保険会社は、これまで契約者(親)が支払った保険料の総額の一部を契約者に返金します。
その額は、支払った額の総額より少なくなります。
そして当然ですが、子供が18歳になったときの教育資金はもらえません。
親は、学資保険を加入するとき、将来必要な教育資金の金額だけでなく、自分たちの月々の返済能力についても検討しなければなりません。
加入は早めのほうがよい「出産前も可」「5年間も可」
学資保険の加入タイミングは、子供が小さければ小さいほどよいでしょう。
月々の支払いを抑えることができるからです。
保険会社によっては子供がまだお母さんのお腹のなかにいるときから加入できるようにしています。
また学資保険の加入期間は18年間に限らず、5年間や10年間という選択肢もあります。
したがって、高校を卒業して働く予定だった子供が急遽大学に行きたい、と進学方針を変えたときに学資保険に加入することもできます。
ちなみにニッセイでは、保険料の支払い期間が5年の場合、返戻率は108.5%にまで上昇します。
まとめ~期待に応えるために勉強しよう
もし受験生が、保護者が自分の大学進学のために学資保険をかけてくれていることを知ったら、勉強に一層力を入れてください。
勉強は苦しい作業なので、なかなか「自分のため」だけではモチベーションが高まりません。
そこに「保護者の期待に応えるため」を加えると、モチベーションが急上昇します。
保護者としては、「あなたの大学進学のために学資保険をかけている」とはなかなか打ち明けられないでしょう。
恩着せがましい感じになりますし、「保護者として当然のことをしているだけ」というプライドもあるでしょう。
そこで、「大学に行きたいのなら、学費の心配をする必要はない」と言ってあげてはいかがでしょうか。
それで子供に十分伝わるはずです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。