全寮制の学校で大丈夫?メリットとデメリットを紹介

全寮制の学校で大丈夫?メリットとデメリットを紹介

全寮制の学校とは、児童・生徒が親元から離れ、学校が用意した生活施設である「寮」に入居して、そこから学校に通う学校のことです。
寮に入らないことを選択することはできず、その学校の教育を受けるには寮に住んで学生生活を送ることになります。

全寮制というシステムを使った教育は歴史に裏打ちされた実績があり、子供たちの自立性と自律性を育みます
保護者が自分の子供を全寮制学校に通わせたいと思ったり、子供自身が行きたいと考えたりするのは当然です。

しかし一方で全寮制という仕組みは、子供の自由を著しく制限します
子供は学内でも学外でも学校から「監視」されています。

そして「歴史」は常に「古臭さ」と紙一重です。
保護者が子供を全寮制の学校に入れたくても、子供が嫌がるかもしれません。

そこで今回のコラムでは、全寮制学校に期待できることと不安に感じること、そしてメリットとデメリットを紹介していきます。

全寮制学校とは、寮とは

メリットとデメリットをみる前に、そもそも全寮制学校とはどのような存在なのか、また、寮とはどのような施設なのかについて考えてみます。

源流はイギリスの名門大学

ケンブリッジ大学の外観

世界最古級の学校のひとつに、イギリスのケンブリッジ大学があります。
設立は1209年で、800年以上の歴史を持ちます。

そしてケンブリッジ大学は、ノーベル賞受賞者を世界で最も多く輩出するなど、いまだに最高峰の大学に数えられています。
そのケンブリッジ大学は全寮制になっています。
すなわち、ケンブリッジ大学の優れた教育の秘密は、全寮制にあるかもしれないのです。

ケンブリッジ大学の入試に合格するとカレッジペアレンツ(大学の父母)から手紙が届きます。
ペアレンツ(父母)といっても、カレッジペアレンツは大学の先輩学生で、両人とも同姓です。

ケンブリッジ大の学生寮は原則、先輩学生2人のカレッジペアレンツと、新入生2人の計4人で暮らします。
手紙は、先輩として後輩を歓迎する意を伝えるために送ります。

カレッジペアレンツは、新入生と同じ専攻の先輩です。
例えば、法学と地理学のカレッジペアレンツであれば、法学と地理学の新入生を「子供」として迎え入れるのです。

カレッジペアレンツは、新入生に大学生活のことや勉強のことなどを教えます。
そのなかで、新入生たちは、ケンブリッジ・プライド(ケンブリッジ大生としての誇り)を学ぶのです。
つまり全寮制大学はエリートを養成するのに適した仕組みといえます。

目標に向かって最短距離で進むことができる

日本の寮のイメージ写真

日本の全寮制学校を運営している学校法人は、多かれ少なかれ、イギリスの名門大学の思想を踏襲しています。
それは全寮制の仕組みが、学校運営者たちの教育思想を子供たちに伝えるのに便利だからです。

そして学校を運営している学校法人が寮の運営も行うことで、学校のルールと学校外のルールを統一させることができるので、子供たちに一貫した教育としつけを与えることができます。

また全寮制は、同じ目的を持った人たちの集団を形成することができるので、児童・生徒たちは目標に向かって最短距離で進むことができます。

これが、今も昔も変わらない全寮制の姿です。

全寮制のメリット

全寮制のメリットには、少なくとも次の4つがあります。

  • 一生の友をつくることができる
  • 自立でき、自律できる
  • 社会性を学べる
  • 受験やスポーツに集中できる

ひとつずつ詳しくみていきましょう。

一生の友をつくることができる

全寮制の学校の児童・生徒たちは、学校でも寮でも顔を合わせることになります。

級友のよいところと悪いところは、保護者よりも教師よりも知ることができます。
そのなかで、価値観ものの考え方善悪の基準が同じ友達に出会えれば、一生の友になるでしょう。

また、全寮制の学校では友達付き合いが濃厚になるので、ときに衝突することがあります。
しかし友達どうしの衝突は、それを乗り越えたときに強力な「接着剤」になります。

信頼できる仲間のイメージ写真

衝突するときに本音をさらけ出すので、相手の本性がみえます。
人は、相手の本性を知ったうえでその人のことを好きになると、心から信頼できるようになります。

つまり寮でつくった一生の友とは、単に長年にわたって付き合う間柄にとどまらず、信頼し合えるようになります。
友との結束は、親子関係より夫婦関係より強くなることは珍しくありません。

自立でき、自律できる

「しっかりした人」の定義は簡単ではありませんが、少なくとも自立も自律もしていない人は、しっかりした人になることはできません。
全寮制学校では自立と自律を身につけることができます。

自立・自律した女学生のイメージ

自立とは、自分の考え持ち、正しいと思ったことを行うことです。
医者になりたい、弁護士になりたい、国家公務員になりたい、政治家になりたい、起業家になりたい、自動車のエンジンをつくりたい、人工知能を開発したい――こうした大きな夢を持ち、その仕事に就くために必要な努力を惜しまない人は、自立した人といえるでしょう。

自律した人とは、自己抑制ができる人のことです。
勉強したくないときに勉強をして、遊びたいときに我慢をすることができるのは、自律心があるからです。

また、自分の主張をあえて封印しほうがチームを前進させられることがありますが、それにも自律心が必要です。

全寮制学校では

  1. 自分の考えを持つこと
  2. 正しいと思ったことに取り組む勇気
  3. ときに自分を抑えること

この3つを徹底的に仕込まれます。

社会性を学べる

社会を連想させる写真

全寮制学校の寮内は、社会の縮図です。
寮を運営する大人の責任者がいて、寮生活を支えてくれる働く人たちがいて、先輩がいて、同級生がいて、後輩がいます。

したがって全寮制学校では、社会性を身につけることができます。

大人にどう接すべきか、上の者をどう敬うべきか、下の者をどう育成するか、これを一気に学ぶことができます。

受験やスポーツに集中できる

勉強とスポーツのイメージ写真

受験に特化した全寮制学校があります。

その学校と寮では「トップ大学学部」に入ることに向かって突き進みます。

また、エリート養成や帝王学といった、一般の学校では教わることができないことを学ぶことができます。

スポーツに特化した全寮制学校もあります。
学校、部活、寮で一緒に過ごすことで、団体競技に欠かせないチームワークを養うことができます。個人競技でも専属のコーチやトレーナーがつくので、スキルを向上させやすくなります。

勉強またはスポーツに青春のすべてを捧げてもよいと考えている人は、全寮制学校に向いているかもしれません。

全寮制のデメリット

全寮制はその特殊性ゆえにデメリットもあります。
800年前に開発された教育システムのため、今の時代にマッチしないところがあるのです。

最も自由を必要とする時期に自由が制限される

10代といえば、人生で最も自由を必要とする時期です。
全寮制学校はその自由を著しく制限します。

ゲーム禁止のイメージ写真

例えば、全寮制学校の寮のなかには、マンガもゲームも禁止にしているところがあります。
寮で禁止されているので、当然学校でも禁止です。
たまに実家に帰ったときしかマンガにもゲームにも接することができないのです。

そのようなルールを設けることで、学業に専念させようとしているのでしょう。
しかしマンガは今や、日本の重要産業になっており、漫画家は小説家と並んで「先生」と呼ばれる存在です。

そしてゲームにいたっては、eスポーツと呼ばれ、囲碁と同じようにスポーツとみなされています。(プロのゲーマーもいます。)

つまり、マンガの才能やゲームの才能がある子供がその全寮制学校に入ってしまったら、その才能は花開かないことになります。

10代の子供はいつ可能性を爆発させるか予測できないところがあります。
可能性がみえづらい状態の子供も珍しくありません。

全寮制学校の画一的な教育が可能性の芽を摘んでしまうことになりかねません。

親元を離れるので寂しい

離れた場所にある寮のイメージ写真

全寮制学校に入ると、保護者の愛情保護者のしつけを受ける機会が激減します。
これは10代の子供にとって大きな損失です。

また保護者にとっても、自分の子供が成長する様子をリアルタイムで見ることができません。
子供が大きくなって、自分に影響を与えた人物を考えたとき、真っ先に教師や友達や寮の職員の顔が思い浮かび、保護者の顔が後回しになることは、親子のあるべき姿として正しいのかを問う声は少なくありません。

この辺りは考え方の違いもありますので、子供を全寮制の学校に入れるかどうかの判断材料の1つとなるでしょう。

上下関係のストレス

ストレスに頭を抱える女学生

大人の社会では、パワハラ(パワーハラスメント)が大きな問題になっています。
そして、上の者が下の者に対して頭ごなしに指導・教育することは「よくないこと」とみなされています。
ましてや、暴力的に言うことを聞かせることは、犯罪に近い行為として非難されます。

全寮制学校の寮内の厳しい上下関係を、そのパワハラに近いものと感じる人はいるでしょう。
パワハラや厳しすぎる上下関係が「よくないこと」と認定されるのは、ストレスを生むからです。

過度なストレスは、心の病を引き起こしたり、メンタルヘルスを悪化させることがわかっています。
厳格な上下関係に慣れていない子供が突然寮に入れられると、メンタルに支障が出るかもしれません。

もちろん、ストレスや心の病の対策を講じている全寮制学校もあります。
全寮制学校への入学を考えるときは、子供自身も保護者も学校の考えをしっかり確認しておいたほうがよいでしょう。

お金がかかる

お金がかかるイメージ写真

全寮制学校の授業料や寮費などは、決して安いものではありません。
全寮制は、手間とコストをかけた教育方法だからです。

愛知県の中高一貫で全寮制の海陽中等教育学校は、年277万円かかります。
その他に入学時に入学金40万円と入寮費20万円と制服代10万円が必要です。
年277万円ということは、月23万円になります()。

参考:学校法人海陽学園 海陽中等教育学校 よくある質問 より抜粋

また、年277万円ということは、6年間に1,662万円必要になります。

ついていけない

授業についていけない女学生

全寮制学校の最大のデメリットは、いろいろな意味で「ついていけない」可能性があることです。
勉強やスポーツに特化している全寮制学校では、勉強やスポーツについていけないと即座に落ちこぼれになってしまいます。

また、校内・寮での人間関係についていけない子供も現れるでしょう。
もちろん学校側もそれなりのフォローはしますが、少なくとも公立学校のように「下の人に合わせる教育」は望めないでしょう。

まとめ~チャレンジする価値は人それぞれ

全寮制学校は、メリットが大きく、デメリットも大きい教育システムといえるでしょう。
したがって、メリットに共感できた子供や保護者はデメリットがあまり気にならず、子供が全寮制学校を卒業したときに「最高の選択をした」と思えるでしょう。

しかし、デメリットの被害を受けることになるとそのダメージは小さくありません。
全寮制学校にチャレンジする価値があるかどうかは、人それぞれです。

学校説明会に参加するなどして、しっかりメリットとデメリットを把握してから決断してください。

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