大学入試に挑む道内受験生は、模試と過去問をどのように活用しているでしょうか。
今の実力を測定するために使っているでしょうか。
模試と過去問は本番の試験と酷似しているので、それを解くことで「今日が入試だったら合格できるのか」がわかります。
しかし模試と過去問を、実力測定ツールとして使うだけでは50%しか有効活用できていません。
模試も過去問も、最強の復習ツールだからです。
模試と過去問は、解いたあとの復習が重要です。
実力測定ツールと復習ツールと積上げツール
模試と過去問を使った復習方法を紹介する前に、先ほど言及した実力測定ツールと復習ツールの違いを解説します。
そして受験ツールにはもうひとつ、積上げツールがあります。
北大クラス以上の大学を目指している道内受験生は、この3つのツールを使いわけないと、入試に太刀打ちできないでしょう。
もちろん、小樽商科大・帯広畜産大クラスや、その他の道内国公立クラス、道内私大クラスでも、3つのツールを使ったほうが勉強はスムーズに進みます。
3ツールは、次のように使います。
積上げツール | ← | 復習ツール |
↓ |
| ↑ |
実力測定ツール | 実力測定ツール | |
↓ | ↑ | |
復習ツール | → | 積上げツール |
積上げツールからスタートして、この順番でループを描くように繰り返し使用していきます。
積上げツールは、教科書や参考書や問題集、さらに塾や予備校で配布される教材になります。
これらを地道に1項目ごと理解し、1問ごと問いていくことで実力をつけていきます。
入試に太刀打ちできる巨大な学力をつけていくには、小さな実力というブロックを1つずつ積み上げていくしかありません。
しかし闇雲にブロックを積んでいくとどうなるでしょうか。
少しずつ曲がってきて、いつか倒れてしまいます。
それで積上げツールを一定期間使ったら、補正しなければなりません。
補正は実力測定ツールで行います。
実力測定ツールは、模試や過去問です。
高3生の4月に模試を受けると、多くの受験生は愕然とするでしょう。
赤本を買って過去問をながめても、やはり驚愕するでしょう。
「難しすぎる」「まったく歯が立たない」と思うはずです。
そのショックこそが実力測定の結果です。
これをどれだけ重く受け止められるかで、これからの11カ月の過ごし方が決まります。
ショックを受けたということは、今の自分の実力と志望大学のレベルのギャップを認識できた証拠です。
そのショックを勉強モチベーションに変換しましょう。
模試と過去問を解いたあとの振り返り作業が、復習ツールを使った復習です。
模試と過去問を、解説文を読みながらもう一度解くことで、自分の強みと弱点が明確になります。
あとは再び積上げツールを使って、強みを伸ばして弱点を克服するだけです。
模試を使った復習方法
模試と過去問には、実力測定ツールと復習ツールの2通りの使用方法がありますが、この記事では主に復習ツールとしての使い方を紹介します。
まずは、模試を使った復習方法を解説します。
頭がホットなうちに復習をする
模試とは、代々木ゼミナールや河合塾、駿台などの予備校が実施する、本物の入試問題を模した試験のことです。
模試では本番の入試のように受験者には受験番号が与えられ、特設会場で制限時間を設けて行います。
模擬ではあっても、本番さながらの緊張感が得られるでしょう。
模試が終わると、後日、予備校から成績が届きます。
模試を受ける前に志望大学学部を申告すると、その大学学部の合格率を算出してくれます。
模試を終えると、回答と解説が配布されます。
模試の問題も持ち帰ることができます。
模試は4、5時間行うこともありますし、2日間にわたって行われる模試もあります。
そのため模試とはいえ、終えると頭も体もくたくたになるはずです。
それでもその日のうちに復習をしましょう。
頭がホットになっている状態で復習することで、鮮明に記憶することができるからです。
弱点把握の部と知識獲得の部にわけて復習する
模試を使った復習は、弱点把握の部と知識獲得の部の2部構成で進めます。
模試では、学習したところが出題されたのに解答できなかったという経験をするでしょう。
重要でないと思ってわざと学習しなかったところが出題されることもあります。
これはいずれも「甘い勉強」のせいです。
受験勉強では、自分を厳しく管理することも、自分を甘やかすこともできます。
しかし甘い勉強をいくら続けても得点に結びつきません。
模試で正答できなかった問題は、すべて自分の弱点です。
参考書を目で追ったけど理解していない、一度理解したけど復習しなかったので記憶に残っていない、そもそも勉強していない、こうした弱点はすべて模試で浮き彫りになります。
模試会場から自宅に戻ったら問題と解答・解説集を開き、こうした弱点をひとつずつ丁寧にすくい取っていきます。
弱点が見える化すると、改善する意欲がわきます。
例えば「明日からの勉強では、わからないことがあったらあきらめず理解できるまで何時間でも粘ろう」と決意できれば、弱点把握の部は成功です。
続いて、模試の復習方法の知識獲得の部を紹介します。
模試をつくっているのは予備校の講師たちです。
彼らは入試問題を研究するだけでなく、大学教授並みに教科や科目のことを分析しています。
そして予備校のなかには、大学から入試問題の作成を依頼されているところもあります。
模試のクオリティは、本物の入試の同等以上といっていいでしょう。
模試で問われた知識は重要事項ですので、模試をそのまま暗記するぐらいの気持ちで、模試の解説集を参考書のようにして知識を吸収しましょう。
満点を取れるまで繰り返す
模試を弱点把握の部と知識獲得の部にわけで復習しても、まだ足りません。
模試はまだまだ使うことができます。
模試は1回5,000~6,000円ぐらいします。
お金をかけた分は、確実に知識にしていきましょう。
復習を終えたら、もう一度模試の問題を解いてみてください。
それで満点が取れなければ、弱点把握の部と知識獲得の部の勉強の仕方が甘かったことになります。
「模試をすべて飲み込む」くらいの決意を持って、もう一度、弱点把握の部と知識獲得の部にわけて復習し直してください。
知識を自分のものにするには、これくらいの苦労が必要になります。
過去問を使った復習方法
過去問とは、大学が過去に出題した入試のことです。
教学社という出版社が、主な大学の過去問を一冊にした「赤本」シリーズを出版しています。
志望大学が確定したら、赤本を手に入れましょう。
過去問で出題傾向をつかむ
「過去問はすでに出題してしまったものだから、大学側がもう二度と同じ問題を入試に出すことはないのではないか。ならば過去問を解くのは無意味ではないか」と思う人もいるかもしれません。
その考え方は正しくありません。
それぞれの大学入試には出題傾向があり、ある大学の出題傾向は、他の大学の出題傾向とまったく異なります。
過去問を解くことで、志望大学や滑り止め大学の出題傾向をつかむことができます。
赤本を2巡すると、その大学の出題者の「癖」がみえてきます。
「この大学はこういう切り口で出題する」「この大学はこういう尋ね方をする」とわかれば、勉強の仕方も変わってくるはずです。
志望大学の出題傾向に合わせた学習こそが、効率的な受験勉強です。
過去問から出題傾向をどうつかむか
「過去問を解いて、その大学の出題傾向をつかもう」とアドバイスしましたが、それは簡単なことではありません。
出題傾向は、予備校のプロたちが入試問題を極限まで細分化して分析して割り出すものだからです。
受験生が1人で過去問から出題傾向をつかもうとするときは、相当意識的に問題に向き合わないとなりません。
以下に紹介するのはセンター試験の出題傾向です。
このような視点を持って、過去問と対峙(たいじ)しましょう。
・特定の分野に偏らない
・全範囲から出題される
・基礎的な問題は意外に少ない
・意外に細かい知識が問われる
・問題数が多くボリューミー
・時間内に解けない受験生も多い
・問題の構成はほぼ変わらない
・選択肢が似ていて正誤判断が難しい
・「間違っていない選択肢」と「確実に正しい選択肢」があり後者が正答になる
この出題傾向は全体的なものですので、受験生は自分が受験する科目ごとに独自に分析していく必要があります。
緊張感を持って解く
自宅で赤本を使って過去問に挑戦するときは、制限時間を守り、途中で参考書を見るなどの「ずる」はせず、解いていきましょう。
自宅学習では、本番の入試はいうまでもなく、模試の緊張感ですら再現することは難しいかもしれません。
しかし「今が入試本番だったら」と思い、極力緊張して臨んでください。
過去問を使った復習方法
過去問を解き終わった後も、模試と同じ復習をしましょう。
弱点把握の部と知識獲得の部を意識して解説文を読んでいきます。
過去問は実際に出題されたものなので、過去問の難易度は、そのまま自分が受ける入試の難易度になります。
弱点把握の部では、日々の勉強でどこまで深掘りしなければならないかを探ってください。
大学によって、知識そのものを問う出題が多かったり、知識を使って解く問題が重視されたりします。
知識獲得の部では、暗記するだけでなく応用力を養うようにしてください。
まとめ~コンクリートのようなもの
受験勉強とは、知識のブロックを積み重ねていく作業です。
ブロックが一定の高さに達すれば合格し、到達できなければ不合格になります。
しかしブロックを積み重ねていくだけでは、いつか崩れます。
つまり記憶できなくなります。
記憶していない知識は入試で使えません。
模試と過去問を解いたあとでしっかり復習する作業は、ブロックを固定するコンクリートのようなものです。
模試と過去問を使った復習は地道な作業です。
新しいことを覚えていくのとは異なり、復習は退屈ですぐに飽きてしまいます。
しかしこの作業で手を抜いてしまうと、北大以上の入試では歯が立ちません。
そしてコンクリートで土台を固めておけば、ブロックはいくらでも高く積み上げることができます。
地道な勉強こそ偏差値を急激に高める唯一の道です。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。