今回は、今では全体の半分以上の学生が利用する推薦入試について、その種類(指定校推薦・公募推薦)や応募条件、メリットとデメリットなどについて解説していきます。
半分以上の学生が推薦で入学
文部科学省の公表する平成30年度のデータによると、公募推薦、指定校推薦、AO入試といった一般入試以外の方法で入っている生徒の割合が5割以上だということが分かります(※)。
予備校に通って高額の費用を払い、たくさんの時間をかけて受験勉強をしなくても、大学に入れる時代です。
※参考:文部科学省 平成30年度国公私立大学入学者選抜実施状況
指定校推薦
推薦入試とひとえにいっても、指定校推薦と公募推薦があります。
指定校推薦は、特に聞いたことがあるという方が多いはずです。
高校に入ると、この指定校というワードがよく聞かれ、これを狙って定期試験の勉強を頑張る人がいます。
偏差値の高い高校は枠が多い
指定校推薦は、高校が特定の生徒を保証するものです。
すなわち、大学に進学後も、しっかりと単位を取って優秀な生活態度で日々の生活を送ることを確約します。
指定校とは、大学が高校を指定するという意味です。
たとえば、学区内のトップ校のほうが、一般に指定校推薦の枠が広かったり、早稲田や慶應などの私立でも上位校があったりしやすいです。
一方で、偏差値の低い高校だと、あまり偏差値の高い大学の枠を持っていません。
また、比較的に歴史の古い高校のほうが、大学との信頼関係も密になり、より多くの枠を持ち、偏差値の高い大学と提携している傾向にあります。
私立の大学しか指定校推薦で行けない
指定校推薦の特徴として、あくまで私立の大学のみ希望できることがあります。
どれだけ優秀な学生でも、東大や京大、一橋といった国立大学に指定校でいけることはありません。
そのため、真に優秀な学生は、指定校推薦は利用しません。
東大の枠を持っている高校は存在しないからです。
指定校推薦を得るのに必要なこと
定期試験(学業成績)
指定校推薦を取るには、定期試験が大事です。
内申点が他の生徒より優れている必要があるからです。
特に早稲田や慶應といった人気の大学は、校内で争いが厳しくなります。
生活態度
もちろん、素行も重要なポイントです。
定期試験ができても、授業態度が悪かったり、無断欠席などが多かったりする生徒だと、推薦してくれません。
学校行事に積極的に参加して、態度が極めて良くなくても問題のない生徒でなければなりません。
部活も帰宅部ではなく、また幽霊部員でもなく、積極的に取り組んでいることが望ましいです。
自分の実力以上の大学へいける
指定校推薦で決める生徒は、えてして自身の偏差値より高い大学に行くことが多いです。
定期試験は確かにできる必要がありますが、それと大学入試とは別物です。
定期試験は、基本的に範囲が狭く特定されているので、大学入試より格段に点を取りやすいです。
多くの科目は1週間程度前から勉強すれば充分に対策できます。
そのため、たとえば指定校で慶應を決めた生徒に、慶應の一般入試を受けさせたら落ちてしまうのが実際のところです。
もちろん例外はありますが、担保されているのはあくまで定期試験の成績や生活態度なので、偏差値的には日本大学に行ければ御の字、という生徒も指定校で早慶に行くことは充分にありえます。
実際、指定校で難関大学に入った後に、授業についていくことができず、留年になったり、退学になったりという生徒が存在します。
指定校のメリット
早く決まる
指定校推薦のメリットとして、3年の12月に決まることが挙げられます。
周りが一番受験勉強で佳境に入っているときに、自分は安穏として過ごせるわけです。
このとき、特に偏差値の高い高校では、周りからの風当たりが強くなることがあります。
前述したように、指定校の場合、最高でも早慶が限界だからです。
■メリットがデメリットにもなりえる
東大を第一志望として頑張っている生徒が多い高校や特進系のクラスだと、早い段階で早慶で手を打っている生徒を見て、周りからは妥協して逃げたやつ、と評価されことがあります。
早い段階で進学先を決められたり、自身の偏差値よりも高い大学に行けたりするのは確かにメリットですが、受験先の最高が早慶という限界が、デメリットにもなります。
特に周囲のレベルが高い高校である場合には、そのデメリットが顕著に現れます。
落ちることはまずない
指定校推薦は、一度推薦が決まれば、もう合格したも同然です。
確かに油断は禁物ですが、落ちることはまずありません。
99%受かると考えて大丈夫です。
感覚としては、高校受験の併願確約に近いです。
公立高校を第一志望として、内申から指定の私立高校を併願確約で受けた場合、当該私立に落ちることはまずありません。
試験は書類+面接が基本
指定校推薦の試験内容は、書類審査と面接のみであることが大半です。
筆記が全くないと聞くだけで、いかに簡単な試験かが分かります。
稀に小論文を課すところもあります。
しかし、この場合も、その出来不出来が合否を左右することはまずありません。
学部ごとに1枠が基本
指定校推薦枠は、基本的に学部ごとに1枠ずつ割り振られます。
特にその大学の学部への入学者を毎年たくさん出している高校に、信頼の証として枠が与えられるのが通例です。
原則として1学部1枠なので、例外的に1つの学部で2名以上の枠が振られることもあります。
山手学院高校(横浜)の例
たとえば、横浜の私立高校、山手学院(偏差値70)を例に取ります。
この高校は、毎年、早慶に200名以上の合格者を出していて、指定校の選択肢が多いことで知られています。
2018年度の指定校枠は、早稲田大学が法学部・商学部・文学部・文化構想学部・教育学部・先進理工学部・基幹理工学部・人間科学部 各1名で、創造理工学部 3名でした(※)。
慶應大学が、法学部・商学部・薬学部 各1名、理工学部 2名でした。
このように、理系の枠は数名になることが他の高校でもよくあります。
※参考:山手学院高校 進路実績
1枠に入れる絶対的な基準はない
指定校を取るには、学業成績と生活態度が大事だと既に指摘しました。
しかし、これだけの評点が取れれば必ず指定校を取れる、という基準はありません。
というのも、上記の通り絶対的な枠が決まっているからです。
たとえば、同じ山手学院高校に、早稲田の法学部に指定校で行きたい生徒が2人いたとします。
極端な例ですが、1人がオール5で、もう1人がオール5ではなく1つだけ4があったとします。
例年であれば、早稲田の法学部に行くには1つくらい4があっても全く問題なかったとしても、自分より優秀な生徒がその枠を希望していたら、当然、選ばれません。
1つの枠を取り合う恰好になるからです。
■公募推薦との違い
この点が、後述する公募推薦との決定的な違いの1つです。
公募推薦では、大学側の条件を満たしていれば、基本的には同じ高校から何人でも志願可能です。
しかし、指定校推薦は、あくまで与えられた人数しか行けません。
そのため、これだけの成績を取っていれば大丈夫、とは断言できないのが難しいところです。
優秀な生徒がみんな東大を目指すような学年であった場合、評定が極めて平均的で、平凡な学力の生徒であっても、早稲田や慶應の偏差値の高い学部の指定校を取れることもあるわけです。
ただし、そのような高校の場合、えてして早稲田や慶應が受験成功者とは考えられない傾向があります。
先にも述べた通り、早々にリタイアして妥協した人、と思われます。
公募推薦
公募推薦は、一般にいうところの通常の推薦入試です。
高校(学校長)からの推薦を得て、大学を受験します。
大学側から評定などの出願条件が出されているのが普通です。
国立大学も志願できるのがメリット
この公募推薦の良いところは、国立大学も対象となることです。
そして、一般入試では当該国立大学に受かる偏差値を持っていなくても、公募推薦だからこそ受かった、というケースがありえます。
東京大学の例
東大も推薦入試を行っています。
指定校推薦は、基本的に書類審査と面接で簡単なのが特徴でした。
しかし、公募推薦の場合には、センター試験の受験が必須であったり、外国語の能力証明資料が必要であったり、面接も単なる個人形式ではなくグループディスカッション、プレゼンテーションであったりします。
東大の例でみてみます。
東大は、学部ごとに異なる定員を設けて、選考方法もまた異なります。
ただし、センター試験受験や英語能力をみられるのは、概ね共通しています。
■法学部
法学部では、10名の生徒を募集しています(※)。
センター試験はもちろんのこと、TOEFLなどの外国語能力証明書が必要です。
成績要件は、3年1学期の評点が、全科目で上位5%以内とされています。
平成31年度の志願者は22名、10名が最終合格しています。
■医学部医学科
医学部医学科をみてみます。
医学科では、センター試験の受験はもちろん必須で、780点以上を基準点としています。
さらにTOEFL iBT 100点以上に相当する語学力が必要です。
面接ではプレゼンテーションが課せられます。
平成31年度の志願者は5名、4名が最終合格しています。
■推薦で志願するハードルが高い
このように、東大の公募推薦は志願者自体が少なく、それほど高倍率になるわけではありません。
推薦で受けること自体が、評点要件などハードルが高く設定されているためです。
落ちる確率も相当にあるのがデメリット
一般的には、公募推薦は指定校とは異なり、受けても落ちる確率がかなりあります。
指定校推薦の場合は、そこを受けておいて、一般入試でより上位の、具体的には国立のトップ校を目指すということはできません。
しかし、公募推薦は受けても受からないことがありえるので、推薦を受けてダメだったから一般入試でリベンジ、ということもありえます。
公募推薦(特別推薦)
公募推薦には、特別推薦もあります。
これは、文化活動や部活で極めて優秀な成績を収めた人が応募できます。
主にはスポーツ推薦のことを指しています。
他に、芸能人が受けることもあるのが、この方式です。
いわゆる一芸推薦です。
スポーツ推薦に力を入れる大学は多い
スポーツ推薦というと、東海大学や青山学院大学、専修大学、駒澤大学のようにスポーツに力を入れている私立大学が多いイメージがあります。
筑波大学の例
しかし、国立にもポピュラーな大学あります。
筑波大学は、昔からスポーツ推薦で行く人が多い国立大学です。
たとえば、元プロサッカー選手のゴン中山や井原正巳、現役プロバスケ選手の馬場雄大、元プロバレー選手の加藤陽一など、数多くのスポーツ選手を輩出し、みなスポーツ推薦で入っています。
筑波大学の体育学群(スポーツ推薦で入った人が所属する)の定員は240名です。
そのうち88名がスポーツ推薦で入ります(※)。
スポーツや文化活動で秀でた実績を残している生徒で、大学入学後もその道を極めたいのであれば、特別推薦入試を検討する価値があります。
推薦受験についてまとめ
今回は、特に保護者からの関心が高い推薦入試に焦点を当てて解説してきました。
指定校推薦は、早い時期に決まったり、受験費用を節約できたりする点でメリットがあります。
しかし、私大しか選択肢がなく、それがために戦いから逃げたやつ、と評価されることもあるのがデメリットです。
公募推薦は国立も選べます。
しかし、出願要件が厳しかったり、落ちる確率が相当にあったりする点がデメリットです。
自身の志望校や属性に照らして、慎重に判断することが大切です。
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この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。