「グローバル(global)」を日本語にすると「世界的な規模であるさま」となりますが、そのまま使うことのほうが一般的です。
「グローバル企業」「グローバルに活躍する」「グローバルな人間になる」といったように使います。
北海道の中学生、高校生、大学生はぜひ、将来グローバルに働いてみてください。
日本経済は今、アメリカと中国に大きく水をあけられている状態です。
再び強い日本経済にするには、海外で闘える人材が必要で、それに立候補してください。
そして外国で仕事をすれば、必ず人生が深まります。
ただ道民は「日本のなかの北海道のなかにいる」状態にあるので、道内の子供たちが世界に羽ばたくには北海道の殻と日本の殻の2つの殻を破らなければなりません。
そして覚悟も必要です。2、3年の準備で「なんとかなる」ものではありません。
10年規模の計画が必要なります。
ものすごい量の勉強と仕事もこなさなければならないでしょう。
しかしその苦労に見合った「果実」は必ず得られます。
海外就職の仕方と、海外で働くための準備を紹介します。
どうすれば海外就職できるのか
海外就職するには海外の企業に雇われなければなりません。
海外就職には「そもそもレベルが高い」「枠が少ない」「法律の規制」という3つの大きなハードルがあります。
そもそもレベルが高い
最初のハードルは、海外就職する会社のレベルが高いことです。
レベルが低い企業は、わざわざ日本人を採用しません。
レベルが高い会社に入るには、自分自身がレベルの高い人間にならなければなりません。
レベルの高い会社とは、これは日本でも海外でも同じですが、最先端なことをしていたり、これまでになかったものを生み出していたり、世界で必要になるものをつくっていたり、最高級のサービスを提供していたりする会社のことです。
大企業のほとんどはレベルが高い会社ですが、中小企業にもレベルが高い会社がたくさんあります。
最初からグーグルやアップルといった、世界最高峰の会社に入ることは、ほぼ不可能でしょう。
小さくてもキラリと光る会社を探して、まずはそこに入社して、そこで経験を積んでスキルを身につけて、さらに高いレベルの会社に転職していくことになります。
また、学校教育や塾などの教育事情も日本とは異なります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
枠が少ない
日本のプロ野球球団には、外国人枠というものがあり、1球団で採用できる外国人選手が決まっています。
外国人枠をつくるのは、自国民(日本人)の選手を優先させたいからです。
同じことを海外企業もしています。
アメリカ企業なら、可能な限りアメリカ人を雇いたいと考えます。
言葉の壁があり、意思疎通が難しそうで、実力が未知数の外国人(日本人)を積極的に雇いたいとは考えません。
海外就職は、地元の人でも入ることが難しいレベルの高い会社に、厳しく審査されて入社することでしか実現できません。
海外の企業から「外国人であっても採用したい」と思わせる必要があります。
そのためには綿密かつ濃密な準備が必要になります。
準備の内容については、後段の「海外就職の準備」の章で詳しく解説します。
法律の規制
「可能な限り自国民に就職してもらいたい」と考えるのは海外企業だけではなく、海外の政府もそのように考えています。
それで、日本やアメリカを含む多くの国は「簡単には」外国人に働かせないように、法律で厳しく規制しています。
ただ外国の政府としても、優秀で善良な日本人であれば、積極的に自国に来て働いてほしいと考えます。
それで厳格な審査を行って、自国に招いています。
例えば日本人がアメリカで働く場合、日本国内にあるアメリカ大使館やアメリカ領事館で、「就労ビザ」というアメリカで働く資格を取得することになります。
道内には札幌市中央区に「在札幌米国総領事館」があり、ここで就労ビザを取得することができます。
申請書類を英語で書き、それを在札幌米国総領事館に郵送し、書類審査をパスしたら面接を受けることになります。
申請書類には、アメリカで雇用する会社を記入しなければなりません。
つまり、アメリカ企業での就職が決まってから、就労ビザを取得することになります。
海外で働くための就労ビザを取得するのに、すでに就職を決めていなければならないのは「矛盾」していると感じるかもしれません。
この点も次の「海外就職の準備」の章で解説します。
海外就職の準備
海外のビジネスシーンでは、転職を繰り返しながら、ステップアップしたり、スキルアップしたり、給料を上げたりしていきます。
最初は中小企業や新興企業に就職して、徐々に「上の」会社に転職していきます。
また、正式に就職する前に、その企業で無給(給料ゼロ)で、またはわずかな賃金で、見習い社員のような形で働くことも普通に行われています。
これをインターンシップといいます。
海外就職ではこの、ステップアップ方式転職やインターンシップがスタート地点になります。
ステップアップ方式転職もインターンシップも、海外企業のホームページで情報を集めます。
海外企業には定期採用がないので、空きが出たら、ホームページで募集します。
働き手を募集している企業があったら、ホームページには企業のメールアドレスが記されているので、そのアドレスに「働きたい」という内容のメールを送ります。
このメールが最初の就活アクションになるので、文面には自己PRをしっかり盛り込みます。
先方がそのメールに興味を示せば、「履歴書を送ってほしい」と返信してきます。
履歴書にはこれまでの業務内容や志望動機、持っているスキルなどを記入します。
職歴がなくインターンシップを希望する人は、志望動機や持っているスキルや自己PRをしっかり書き込み、自分をインターンシップに受け入れるとその企業に「どのような得があるか」をアピールします。
これらの作業はすべて英語で行います。
そして、例えば海外の企業からインターンシップの確約が取れたら、インターンシップ用のビザを取得します。
インターンシップ用のビザで海外の企業のなかに入り、正式採用されたら就労ビザを取得する、という流れになります。
最も重要な準備は実力をつけること
海外就職の準備は、就労ビザの取得や履歴書の作成など、手続き面も大切ですが、それよりも何倍も重要なのが次の3つです。
- 自分を磨く、スキルを磨く
- 最先端を知る、最高のものを知っている
- 競争心を持つ、自己アピールできる
日本で就職できないから海外に活路を見出す、という人は成功しないでしょう。
レベルが高い日本企業がほしがるような人材にならなければなりません。
日本にいるうちに「仕事ができる人」になっておく必要があります。
最新かつ最高の情報を入手する
そして常に「最新のもの」と「最高のもの」の情報を入手しておきましょう。
レベルの高い海外の企業の業務内容は、海外メディアのサイトで紹介されています。
世界のニュースも押さえておく必要があります。
例えば、トランプ政権や中国の動向やイギリスのEU離脱、中東情勢といった世界経済に大きな影響を与えるニュースは「毎日」英文メディアでチェックする習慣を身につけておきましょう。
メンタルを鍛える
メンタル(気持ち)も大切です。
海外企業にもパワハラやセクハラがあります。
そのうえ人種差別もあります。
それらを実力で跳ね除けたり抑えつけたりする行動力と実行力とメンタルが必要です。
なぜ海外で働いたほうがよいのか
若い人は将来、海外で働いたほうがよいでしょう。
それは日本が今、危機に瀕しているからです。
北海道ではのんびりした日常を送ることができるので、日本の危機を感じにくいかもしれません。
また、首都東京を見渡しても大きなビルが次々建てられて、好調にみえます。
もちろん日本はまだ、世界3位の経済大国です。
世界の人からうらやましがられている存在です。
しかしこの「すごい日本」は「昭和の人」たちが築き上げたものです。
残念ながら「平成の人」たちは、日本の地位を維持することはできませんでした。
日本は平成の時代に、経済世界2位の座を中国に明け渡し、しかも中国に突き放されてしまいました。
アメリカは中国の先を行っています。
日本の現状についてこのような指摘をする人もいます。
日本経済はアメリカと中国の好景気に多大なる恩恵を受けているので、その悪影響がもっとも及び、経済成長率が主要先進国のなかでいちばん落ち込むと考えられる。
実際、リーマン・ショック翌年の2009年の日本経済の成長率はマイナス6.0%にまで落ち込み、主要先進国のなかで突出して下落率が大きかったのです。
加えて、2020年前後にはAI(人工知能)技術の発展、人口減少の進展などといった難題が本格的に降りかかり、日本の会社や雇用、給料は大きな変化にさらされることになる。
まさに日本がこれから国難を迎える時期に突入しようとするなか、楽観などしている場合ではないのです。
中原圭介氏:経済アナリスト。著書は「日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業」(講談社現代新書)など。
さらに、ソフトバンクの孫さんも、このように危機感を募らせています。
日本はAI後進国、早くキャッチアップを=ソフトバンクG社長
2019年7月18日、ロイター
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は18日、都内で開いた法人向けイベントで、日本は人工知能(AI)後進国になってしまったとして、早く目を覚ましてキャッチアップする必要があると危機感をあらわにした。
孫社長は「ついこの間まで日本は技術の世界最先端、最も進んだ国だったが、AI分野ではいつの間にか後進国なってしまった」と指摘。「今でも手遅れではないかもしれないが、かなりやばい状況になっている」として、「1日も早く目を覚ましてキャッチアップしないといけない」と強調した。
道内の生徒、学生は、
- 「危機に瀕している日本を救う」
- 「世界の強豪と競争したい」
- 「弱い日本のなかで勝負したくない」
そのような気概を持って、海外就職に挑戦してみてください。
北海道はいい意味でも悪い意味でも「ぬるま湯」
北海道は恐らく、世界有数の住みやすい街でしょう。
自然が豊かで食べ物がおいしいのに、不便を感じることなく生活できます。
良質の温泉もたくさんあります。
それだけに、北海道の子供たちはあまり「東京で活躍したい」「グルーバルな人間になりたい」とは考えないようです。
確かにこの「ぬるま湯」は快適なので、道内の学校を出て道内で就職することは、悪くない選択です。
しかし少しでも「なんか違う」「これではいけない」と思ったら、外に目を向けて、そして実行してみてください。
北海道の大地は温かいので、東京や海外でバリバリ働いて疲れたら、いつでも迎え入れてくれます。
例えば50代まで海外で働いて、60歳ぐらいになったら北海道に戻ってきて北海道のための仕事をする、といった人生も悪くありません。
大卒と英語は必須
海外就職を目指すなら、大学を出ることは必須条件になるでしょう。
高卒でも無理ではありませんが、遠い道のりになってしまいます。
そして道内の大学であれば、北大は出ておきたいところです。
東京や関西の、北大より「上」の大学はさらによいでしょう。
小樽商大でも世界経済を学べるので、よいかもしれません。
だからといって、道内のその他の大学に通っている学生にも、チャンスは十分あります。
まずは海外のニュースサイトと企業の自社サイトを「すらすら」読みこなせるくらいの、英語長文読解力を身につけましょう。
また、英語の映画を字幕なしで理解できるくらいのヒアリング力を身につけてください。
そこまでの英語力は、北大生もほとんど持っていません。
そしてそこまでの英語力があれば、あとは行動力で海外就活を乗り切ることができるはずです。
もし中学生が「海外就職したい」と考え始めたら、とにかく英語に集中しましょう。
高校生が海外就職を考えたら、「北大以上」を目指す受験勉強に取り掛かりましょう。
日本企業に入って海外に出る方法もある
海外就職にハードルの高さを感じたら、グローバルに活躍している日本企業に入って、その海外部署に配属される、という方法があります。
それでもグローバルな仕事ができます。
そして日本企業の海外拠点で働けば、地元の就活情報をダイレクトに入手することができます。
日本企業を経由して海外企業に入社することも「したたかな手法」といえます。
まとめ~「できるか」はなく「する」
海外就職について「自分にできるだろうか」と考えることは、あまり意味がありません。
海外就職した人に「自分にできるでしょうか」と質問したら、きっと「それでは難しいでしょう」と答えると思います。
海外就職を実現するには、「できるか」ではなく「する」ことが大切です。
そして「なんでもする」ことはもっと重要です。
そして「あきらめずに、ずっとする」ことは、さらに大切です。
繰り返しになりますが、海外就職には10年はかかるでしょう。
「海外での就業経験」だけなら、2、3年で実現できるかもしれませんが、「海外で活躍している日本人」になるにはそれなりの修業が必要です。
頑張ってください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。