家庭の事情で大学進学をあきらめなければならない、と感じたとき、もしその事情が「お金のこと」であれば、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の利用を検討してみてください。
この奨学金を獲得できると、大学生や短大生や専修学校専門課程の学生に、月2万~12万円が支給されます。
経済状況や学業の成績などによって月額は変わってきます。
そして浪人しようとしている人も、浪人している人も安心してください。
日本学生支援機構の奨学金は、浪人していても利用することができます。
ただ、浪人すると現役で合格した人よりは少し不利になるので注意してください。
日本学生支援機構の制度を中心に奨学金について解説します。
浪人すると少し不利になる
日本学生支援機構の奨学金の詳しいルールを紹介する前に、先に浪人の人の取り扱いについてみていきましょう。
日本学生支援機構は、高校3年生でも、大学・短大・専修学校専門課程(以下、大学など)に進学した後でも、大学などで必要になるお金を支給します。
そして、浪人の人でも利用することができます。
ただし、浪人は2浪までとなっています。
3浪の人は日本学生支援機構の奨学金を利用することはできません。
また日本学生支援機構の奨学金には予約申し込みという仕組みがあります。
高校3年生の段階で奨学金を申し込むことができます。
つまり、まだ大学などに合格していなくても、奨学金を得る権利を確定させることができます。
ところが大学などに不合格になると、奨学金を得る権利が取り消されます。
ただ、2浪までであれば再度、予約申請をすることができます。
それでは日本学生支援機構の奨学金について詳しくみていきましょう。
日本学生支援機構とは
そもそも奨学金とは、金銭的な理由で学業を継続できない人にお金を給付して、学業を継続してもらう仕組みです。
そのお金はどこから出ているのかというと、「いろいろ」です。
例えば、企業が奨学金制度を独自に設立して、学生を選考して奨学金を給付することもありますが、この場合は企業がお金を負担しています。
慈善団体による奨学金は、寄付金などで財源を確保しています。
そして日本学生支援機構の奨学金は、国の制度です。
日本学生支援機構は独立行政法人といい「行政機関に近い組織」です。
国の奨学金制度
日本学生支援機構は、以前は日本育英会と呼ばれていました。
その他の公的な奨学金団体と統合して2004年に誕生しました。
日本学生支援機構の財源は、国庫補助金になります。
つまり税金が奨学金になり、学生にお金が渡るわけです。
日本学生支援機構は留学生支援や学生生活支援なども行っていますが、この記事では奨学金事業についてのみ解説します。
日本学生支援機構の奨学金制度の目的は、経済的に極めて困難な状況にある低所得世帯の生徒に対し、大学などへの進学を後押しすることです。
返還不要の給付奨学金と返還が必要な貸与奨学金
日本学生支援機構の奨学金は、返還が不要の給付奨学金と返還が必要な貸与奨学金があります。
「返還」とは「返済」とほぼ同じ意味です。
つまり返還が不要とは「奨学金をもらえる」仕組みであり、返還が必要とは「支給された奨学金を返す」仕組みです。
2017年度に給付奨学金を利用した人は2,492人で、給付された奨学金の総額は約13億円でした。
貸与奨学金を利用した人は約129万人で、総額は約1兆円でした。
圧倒的に貸与のほうが多く「日本学生支援機構の奨学金といえば貸与」と思っていただいて間違いないでしょう。
給付奨学金と貸与奨学金の金額や利用するための資格について紹介する前に、大学などの進学コストをみておきましょう。
必要な金額がわかると、奨学金の貴重性を実感できるはずです。
大学などに進学するにはお金がかかる
生徒本人も保護者も、積極的に日本学生支援機構の奨学金を利用しましょう。
大学などに進学すると、職業や人生の可能性が広がります。
もちろん、中学や高校を卒業してすぐに働き始めても可能性を広げることは不可能ではありませんが、苦労するでしょう。
大学などに進学すると就職できる企業が増えますし、就くことができる仕事の種類も格段に増えます。
したがって、お金に困っているから、という理由で進学をあきらめたり、あきらめさせたりするのは「もったいない」といえます。
しかし進学にはお金がかかります。
日本学生支援機構によると、大学などに進学1年目にかかる費用は以下のとおりです。
・国立大:82万円
・私立大・文系:116万円
・私立大・理系:154万円
・私立短大:112万円
・東京都内私立専修学校専門課程:97万円
最も「安い」国立大の進学でも、最初の1年間だけで82万円かかります。
12カ月で割ると月6.8万円になります。
これは1年目の金額なので入学金が含まれているので、2年目からはもう少し必要額が減りますが、それでも大きなお金です。
そしてこの金額には生活費などは含まれていません。
日本学生支援機構は学生生活のシミュレーションもしていますので紹介します。
・支出:188万円
内訳:学費など大学などに関わる費用119万円、生活費など69万円
・収入:197万円
内訳:家庭からの給付118万円、奨学金39万円、アルバイト36万円、その他4万円
このシミュレーションは年39万円(月3.3万円)の奨学金を含めています。
収入197万円から年39万円を差し引くと158万円になり、支出の188万円より30万円足りません。
つまり、年30万円の「赤字」になってしまいます。
これでは進学できたとしても、学業を途中であきらめて就職することになるかもしれません。
そうならないように、日本学生支援機構の奨学金を利用できる人は、利用しておきましょう。
給付奨学金の概要
日本学生支援機構の奨学金のうち、返還(返済)が要らない給付奨学金について解説します。
給付奨学金は誰でも利用できるわけではなく、次のような条件があります。
利用条件
給付奨学金を利用できる条件は次のとおりです。
- 保護者の収入の制限:住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の人
- 保護者の資産の制限:本人および生計維持者(保護者など)の預貯金や有価証券などの資産の合計額が、生計維持者が1人の場合は1,250万円、2人の場合は2,000万円以下
- 学力基準:申込時までの成績が5段階評価で平均3.5以上。ただし学力基準に達しないときは、レポート提出や学校における面談により、学習意欲や進学目的が認められることもあります。
奨学金の額
給付奨学金の額は次のとおりです。
自宅通学は年約35万円(月2.9万円)、自宅外通学は年約80万円(月6.7万円)
自宅通学は年約46万円(月3.8万円)、自宅外通学は年約91万円(月7.6万円)
月額が学生本人の口座に毎月振り込まれます。
さらに、進学後も定期的に成績が確認され、一定以下の成績にとどまった場合は支援が打ち切られることもあります。
貸与奨学金の概要
日本学生支援機構の奨学金のうち、返還が必要な貸与奨学金について解説します。
貸与奨学金には、無利子の第1種と、有利子の第2種があります。
利用条件
貸与奨学金を利用するための条件は次のとおりです。
- これまで大学、短大、専修学校専門課程に入学したことがない
- 高校の卒業見込みの人
- 高校卒業から2年以内の人(2浪まで)
- 高等学校卒業過程認定試験の合格者
- 機構が認める基準に該当する科目合格者
- 高等学校卒業程度認定試験の出願者
- 貸与奨学金の家計基準をクリアしている(※1)
- 学力基準をクリアしている(※2)
・第1種:保護者の年収が日本学生支援機構の定めた基準額以下、または住民税非課税(市区町村民税所得割が0円)の世帯の人、または生活保護受給世帯の人、または社会的養護を必要とする人
・第2種:保護者の年収が日本学生支援機構の定めた基準額以下
・併用:保護者の年収が第1種、第1種併用貸与の基準額以下
・第1種:申込時までの成績が5段階評価で平均3.5以上(住民税非課税世帯の人、生活保護受給世帯の人、社会的養護を必要とする人は、3.5未満であっても推薦を受けられる場合がある
・第2種:申込時までの成績が、学校の平均水準以上であること
奨学金の額
貸与奨学金の額は次のとおりです。
■第1種の奨学金の額
| 大学 | 短大・専修学校専門課程 | ||||||
| 国公立 | 私立 | 国公立 | 私立 | ||||
| 自宅通学 | 自宅外通学 | 自宅通学 | 自宅外通学 | 自宅通学 | 自宅外通学 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
最高月額 | 4.5万円 | 5.1万円 | 5.4万円 | 6.4万円 | 4.5万円 | 5.1万円 | 5.3万円 | 6万円 |
それ以外の月額 | 3万円 ・ 2万円 | 4万円 ~ 2万円 | 4万円 ~ 2万円 | 5万円 ~ 2万円 | 3万円 ・ 2万円 | 4万円 ~ 2万円 | 4万円 ~ 2万円 | 5万円 ~ 2万円 |
第1種は無利子なので、卒業後に返す金額は奨学金の額と同額になります。
■第2種の奨学金の額
| 大学 | 短大・専修学校専門課程 | ||||||
| 国公立 | 私立 | 国公立 | 私立 | ||||
| 自宅通学 | 自宅外通学 | 自宅通学 | 自宅外通学 | 自宅通学 | 自宅外通学 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
月額 | 2万~12万円 |
第2種は有利子なので、卒業後に返す金額は「奨学金の額+利子」となります。
利子の利率は利用した年や返還方法によって異なりますが、最大でも2%ほどで、0.01%が採用されることもあります。
これから奨学金を利用する人の利率は0.001~0.3%ほどで、「とても低い」といえます。
その他の奨学金
大学に進学する場合、日本学生支援機構以外の組織・団体の奨学金を受けることができます。
その一部を紹介します。
奨学金と教育ローンの違い
奨学金だけでは足りない場合でも、銀行などの教育ローンを使う方法があります。
ただ教育ローンは「純粋な借金」になります。
日本学生支援機構の貸与奨学金も返還(返済)義務があるので「借金のようなもの」ではありますが、教育ローンとは次のような違いがあります。
■奨学金と教育ローンの違い(日本学生支援機構調べ)
| 日本学生支援機構の貸与奨学金 | 一般的な教育ローン |
誰が借りる? | 学生本人 | 保護者など |
基準は? | 保護者の収入が一定以下 | 保護者の収入が一定以上 |
借り方は? | 在学中、月々 | 契約成立次第、一括で |
いつ返す? | 卒業後 | 借りた翌月から |
利息は付く? | 無利息と利息付(在学中は無利息) | 貸付けと同時に利息発生 |
このように日本学生支援機構貸与奨学金のほうが「有利」です。
したがって、奨学金でお金が足りない場合に、足りない金額を教育ローンでまかなうようにしてはいかがでしょうか。
以下の記事で、教育ローンについて更に詳しく紹介しています。
合わせて読んでみてください。
まとめ~あきらめないで、道はある
簡単に「お金がないから進学できない、進学させられない」とあきらめないでください。
それは、何かしらの道があるからです。
日本は世界3位の経済大国なので、真剣に教育を必要としている子供を経済的に救済する手立ては豊富に用意されています。
ただし、奨学金を使うことができるのは、真剣に進学を希望していて、きちんと学業を修めている人に限られます。
まずは日々の勉強で手を抜かず、学力・成績・偏差値を上げるようにしてください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。